ボストン コンサルティング グループ(BCG)はDXや新規事業の創出など企業の将来を左右する経営課題について、戦略策定から変革の実現までの支援を担っている。
その強みの源泉の一つが多様な人材の活躍だ。現職はもちろん、BCGで培った経験と能力を武器に次のキャリアでも実績を上げる人材は少なくない。今回はデジタル領域で活躍する現役社員とアラムナイ(卒業生)、2人のキャリアに焦点を当て、その背景を探っていこう。
BCGからスタートアップ経営を経て、上場ベンチャーのマネジメントへ
大野紗和子氏は新卒入社したBCGでグローバルの金融・ヘルスケア案件を含む複数のプロジェクトを担当した後、Google のインダストリーアナリストやフィンテック領域のスタートアップベンチャー共同CEOを経て、AIソリューションを提供するPKSHA Technology(パークシャ テクノロジー)グループのPKSHA Communication(パークシャ コミュニケーション)で新規事業責任者を務めている。
大野紗和子(おおの・さわこ)氏/PKSHA Communication 執行役員新規ビジネス開発部長。BCG、Googleを経て、決済・ブロックチェーンサービスを提供するフィンテックベンチャーAnyPayの立ち上げに参画し、COO、共同CEOを務める。その後、アート来歴管理のブロックチェーンソリューションで日本をリードするStartbahnにCOOとして参画し、事業開発・推進に従事。ファンド投資先企業の経営を経て、2021年PKSHA Technologyに参画。経営企画としてグループ横断施策に携わった後、2022年4月1日より現職。
「PKSHA CommunicationはPKSHAグループの子会社と買収した事業を統合した会社で、AI SaaS製品の開発、販売を行っています。私は当初PKSHAグループ全体の経営企画として参画し、PMIに関わった後、新規事業開発を強化するために現職に就任しました」(大野氏)
PKSHAグループに入社したきっかけは、前職が一区切りついたタイミングでBCG出身の上野山勝也代表取締役から誘いがあったこと。そして同社の技術アセットを組み合わせ、新規事業を立ち上げるチャレンジができると考えたからである。
「私のモチベーションはデジタルを絡めて新規事業を立ち上げユーザーに価値を提供する軸と、組織全体を最適化し人や技術を活かす軸の2軸にあります。2021年にPKSHAグループにジョインしたのは、前職のスタートアップとは異なるステージのベンチャーという、アセットが豊富にある環境で新しい事業を立ち上げていくことに魅力を感じたからです」(大野氏)
多様なデジタル人材がBCGで活躍
大野氏がBCGに新卒入社したのに対し、現在BCGでプロジェクトリーダーを務める鎌田珠里氏は総合コンサルティングファームから転職した。前職では新設されたばかりのデジタル部門でブランディングやマーケティング費用の効率化等、デジタルを中心としたマーケティング戦略・実行に関する プロジェクトに従事していた。
鎌田珠里(かまだ・じゅり)氏/ボストン コンサルティング グループ プロジェクトリーダー。McGill 大学環境科学部卒。デロイトデジタルを経て、現在に至る。保険・エネルギー会社向けのDX、新規事業プロジェクトや、広告会社向けデジタルマーケティングに関するプロジェクトに従事。
「デジタル部門にはデザイナーや広告代理店出身者などユニークなバックグラウンドの方が多く、面白そうだと思い自分から希望して移りました。その後、お客様のレイヤーを経営層に上げてよりインパクトを出したいと考え始めたとき、BCGの知人から『BCGがデジタル専門組織を拡充する』という話を聞いたのが転職のきっかけでした」(鎌田氏)
BCGはこの10年、デジタルと経営戦略を掛け合わせた領域で圧倒的なケイパビリティを培ってきた。デジタル領域に高い専門性をもつメンバーが集うデジタル組織とBCGの戦略コンサルタントが協業し、クライアントの経営課題の解決を通じて社会にインパクトを起こしている。
BCGのデジタル組織は、IT・デジタルの全社戦略を立案するBCG Technology Advantage(以下TA)、ディスラプティブ(破壊的)でイノベーティブ(革新的) な新規事業の創出に特化したBCG Digital Ventures(以下BCGDV)、データサイエンスのエキスパートであるBCG GAMMA、デザインやアーキテクチャ、エンジニアリングのエキスパートであるBCG Platinionの4つの組織で構成されている。
BCGではクライアントのニーズに合わせ組織横断的に得意分野を持つ人材を集めてプロジェクトチームを組成する。鎌田氏も現在はTAを軸としながら、BCGDVと共に金融機関のサービスモデル構築と実装に取り組んでいる。
「私が入社した後、多くのエンジニアやデザイナー、データ分析アナリストなどコンサルタント以外のエキスパートがBCGのデジタル組織にジョインしました。当初はどう協働するべきか、という戸惑いがありましたが、いろいろな課題を共に乗り越えるなかで、現在はお互いの強みを理解し合い、チームとしての価値を最大化することができています」(鎌田氏)
時代の潮流に合わせBCGがデジタルに関するケイパビリティを急速に強化していくなかで、さまざまな課題をクリアする場面に立ち会えたのは幸運だったと鎌田氏は振り返る。
「相手の靴を履いて考える」文化はあるか?
多くの企業にとって喫緊の課題であるDXや新規事業の創出には、ビジネスやテクノロジー、デザイン等さまざまな要素を横断的に結合する必要がある。従って各分野の専門性を持つ多様な人材が必要になる一方、縦割りのバラバラな組織やチームでは機能しない難しさがある。
「とくにデジタル領域は課題の複雑性が増しているので、さまざまなケイパビリティを持つ人たちがお互いに向き合わなければいけません。そこで大切なのはイマジネーションとリスペクトです。英語に『相手の靴を履いて考える』という表現があるように、自分も含めた全員が偏りを持っていることを認識した上で話し合い、協働できるスタンスを持てるかが大切です。同時にマネージャーは、なぜ世の中にこのプロジェクトが必要なのか、ベースのWhyを大事にして徹底的にメンバーへ浸透させる必要があります」(大野氏)
BCGには大野氏が在籍していた当時からそうしたカルチャーがあり、外部の立場から見ても、時代の変化に合わせてさらに進化させているようだという。
実際、鎌田氏は次のように語る。
「BCGがデジタルにさらに力を入れていくと決めてから実行に移すまでのスピードは物凄かったのですが、それは自分たち側の理由ではなく、デジタル領域でもクライアントに早くバリューを提供したいという想いが強く共有されていたからだと思います」(鎌田氏)
社内外で活かされるBCGのカルチャーとスキル
BCGで働く醍醐味について2人に共通する答えは、クライアントである一流企業のCxOが次々に直面する新たな経営課題の解決に向け、社会にもクライアントにもインパクトの大きいプロジェクトに「インテグリティ(プロフェッショナルとしての倫理)」を持ったメンバーと取り組める点にある。また、カルチャーとして「多様性からの連帯」を掲げており、さまざまな人材が、それぞれのバックグラウンドや強みを活かし、互いに助け合いながら、難しい課題へのチャレンジを通じて、自身の成長をも大切にする点が挙がった。
大野氏はこうした環境で培われた考え方やスキルが、ベンチャー企業でマネジメントを行う上で役立っていると語る。
「新しいチャレンジをする際に未知の対象を構造化してとらえ仮説ベースで取り組んでいくところや、多様なステークホルダーが存在する複雑な課題を解決する際の物事の進め方には、BCGで学んだことが生きています。そうしたスキルが身に付いたからこそ、自分で事業を生み出したい、事業を動かしたいという気持ちが生まれてきたのだと思います」(大野氏)
進化する働き方・キャリア支援の新しい形
BCGは、こうした伝統的なコンサルタントの能力開発に加えて、デジタルシフトが進むなかで、個人の多様なキャリア形成の支援に注力している。
たとえば社内のデジタル組織へのキャリアチェンジや海外オフィスへのトランスファー、クライアント企業への1年間の出向や、大学の研究室や海外MBA、デザインスクールへの通学をサポートする制度がある。またグローバル共通で、プロジェクト内容や知見を共有する場や新しい領域にもキャッチアップできるオンラインプログラムの開催等、学ぶ意欲のある人のための機会を数多く提供している。
個人がサステナブルに働ける環境の構築も進めており、鎌田氏は入社3年目に産休・育休制度を活用しながら段階的に復帰した。
「BCGには フレックスキャパシティというグローバル共通のコンサルタント職向けの時短制度があり、育休明け、私は60%から復帰し3か月かけて100%に戻しました。そうした制度に加え、BCGにはお互いの価値観を理解し合った上で、仕事の分担を決めていく文化があります。プロジェクトの最初にプロジェクトリーダーや他のメンバーと『この時間帯は育児のため絶対に押さえたい』などと希望をすり合わせて、それぞれメンバーが大切にしたい時間を確保していくんです。いまは子供が小さく体調を崩しがちなのですが、シニアチーム、メンバーの理解に助けられています」(鎌田氏)
2人が抱く今後の展望
デジタル領域で活躍する数少ない女性のトップランナーである2人は今後、どんなキャリアを考えているのだろうか。
大野氏はAIソリューション・AI SaaSを活用しながら新規事業を生み出していくことに加え、それを実現するためにも、皆が働きやすい仕組み作りに取り組みたいという。
「自分だけではどうにもならない複雑性の高い課題に対し、周囲の人が強みを発揮しやすい、働きやすい仕組み作りに取り組んでいきます。とくに日本のデジタル領域では女性が少なく、自信を持ちづらい側面があります。女性も含め多様な人たちが活躍できるように、まずは自社から第一歩を踏み出し、やがて世の中に貢献できるようにしたい」(大野氏)
鎌田氏も多様な分野のエキスパートと協業し、その力を引き出す能力を磨くとともに、仕事と育児、家庭の両立問題でキャリアの危機に直面しがちな女性を応援していきたいと語る。
「精力的に働きながら出産、育児もしたい女性にとって、100点満点の会社はいまの日本にはないでしょう。ただ、BCGは100点満点ではない事実を認識し、当事者の声を聞きながら、100点満点に近づけるよう改善する姿勢が強い会社です。そこで自分がロールモデルになって、他の女性コンサルタントがキャリアを諦めずにすむよう応援したいと思っています」(鎌田氏)
BCGでのキャリア/採用の詳細についてはこちら
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