
過重労働で脳や心臓の病気になった人の労災認定基準について、厚生労働省の専門検討会(座長=磯博康・大阪大教授)が見直しを求める報告書をまとめた。発症前1か月の残業が100時間に上った場合などに適用している現行の「過労死ライン」は妥当とした上で、労働時間以外の負荷も考慮することが適切と指摘した。
報告書を受け、同省は約20年ぶりに労災認定基準を見直し、今秋までに全国の労働局に通達する方針。
脳出血や心筋
今回、検討会は、過労死ラインなどの現行基準について、「医学的知見に照らして是認できる」とした上で、労働時間以外にも、働き手にとって負荷となりうる要因はあると指摘した。
報告書では、たとえば、▽終業から次の始業まで一定の時間をあける「勤務間インターバル」が11時間未満の勤務▽休日のない連続勤務▽身体的負荷を伴う業務――などは発症との関連性が強いとしている。仮に月単位の労働時間の合計が過労死ラインを超えない場合でも、こうした「労働時間以外の負荷要因」を考慮して労災の認定作業にあたることが適切とした。
さらに、多くの研究で心理的負荷が高いほど脳・心臓疾患の発症リスクが高いと認められてきたことから、報告書では、パワハラやセクハラなどの心理的負荷も広く労災認定の判断材料とするよう明示した。
岐阜県で建築関係の仕事をしていた50歳代の男性は2017年の初夏、脳出血で倒れた。男性は当時、複数の現場を掛け持ちして管理する立場で、平日は早朝から日付が変わる直前まで書類の作成や現場調査などに従事していた。後遺症によって職場に復帰できず、退職。労災を申請したが不認定となり、現在は再審査請求中だ。
男性が労働基準監督署から認定された発症前1か月間の残業時間は「過労死ライン」に満たない約87時間。代理人の大辻美玲弁護士は「男性の場合、精神的な緊張や労働環境などが適切に考慮されれば、労災にあたると思う」と話す。
その上で、大辻弁護士は「たとえば、休日のない連続勤務がどれだけ続けば労災になるのかなど、労働時間以外の負荷要因をもっと具体的に示してほしい」と求める。
過労死問題に詳しい日本労働弁護団の笠置裕亮弁護士は「コロナ禍によるテレワークの浸透や企業秘密の保護などでデータを残さないケースが増えており、パソコンのログだけでは労働時間を見極められないなどの問題もある。そもそも労働時間をどう認定するかも含めて、丁寧に例示してほしい」と話している。
▽残業時間を〈1〉発症前1か月でおおむね100時間〈2〉発症2~6か月前の月平均でおおむね80時間超――とする基準は適切
▽〈1〉と〈2〉の水準に達しなくても、これに近い残業があり、「勤務間インターバル」が短いなど労働時間以外の負荷も考慮
労災認定の「過労死ライン」は妥当、労働時間以外の負荷も考慮を…厚労省専門検討会 - 読売新聞
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