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「五輪開催を前提にチャレンジしようというのが僕の立場です」──ローレウス・アンバサダー、為末大に訊く - GQ JAPAN

2005年世界陸上男子400mハードルに出場した為末。2001年エドモントン大会に続いて2回目のメダル獲得の快挙を成し遂げた。写真:ロイター/アフロ

© CHARLES PLATIAU

──コロナ禍がアスリートたちに大きな影響をおよぼしています。為末さんは、この状況下、どのようにお過ごしでしょうか。

為末 運動をするようになりましたね(笑)。現役を引退してから7年くらい、まともに身体を動かしていなかったのが、完全に復活しました。子どもが9時ぐらいに寝るんですけど、一緒に寝て、4時か5時に起きて自転車を漕いだりしました。あとは調理器具を買い込んで料理をしてみたり、と、かなり生活が変わりました。

──ローレウスは、アスリートたちのセカンドキャリアの可能性を広げる場でもあるとGQは考えます。為末さんは上手に第2の人生をスタートしたように思いますが、現役時代、セカンドキャリアをどう考えていたのでしょうか。

為末 まったく考えていませんでした。なにをやっていいのかわからず、いろんなことに手を出したので、結果として活発に動いているように見えたかもしれませんね。セカンドキャリアとひと言で言っても、指導者としてのそれだったり、あるいはお金の心配から解放されたトップ・オブ・トップとしてのそれだったり、と、さまざまなレベルがあります。ひとつ確かなのは、セカンドキャリアを模索している側が感じている難しさは、なかなか周囲には理解されにくいということでしょうか。

──ではご自身の経験から、セカンドキャリアを考えるにあたってどんな準備をするべきか、現役選手にアドバイスするとしたらどんなことでしょう。

為末 ひとつは選手同士でコミュニケーションをとって、情報をシェアすることですね。ただ、選手は競技のことしか考えられないような状況に置かれていますから、ものごとを深く考えるのに不向きな環境で過ごしているわけです。それに十分な説明がない状態で情報だけ与えられても、本来フォーカスしていたはずのことがブレてしまいかねません。少なくとも僕はそうでした。

そこで役に立つのが、距離が近い人の意見を聞いたり、あるいは多様性を知ること。欲を言えば、ほかの世界で生きている友だちが多ければ多いほどいいと思います。あと、アスリートって夢中になれることがないと耐えられない人種なので、競技以外に好きなことを見つけておくことが大事でしょうね。

──ローレウスは、スポーツの力でダイバーシティ(多様性)を進めることも理念のひとつにあげています。為末さんは世界選手権などの大きな舞台の決勝レースを走る、数少ないアジア人でした。国籍や人種の壁を感じたことはありますか?

為末 スポーツ全般がそうだと思うんですが、陸上競技の場合、偉い人は速い人なんです。だからすごくわかりやすくて差別がないんですよ。差別をしようとしても速い人が偉いので。

スポーツ全般の歴史を見ると酷い人種差別のある競技もあったし、いまでも人種の偏りがある競技があります。ただし、人種差別のある競技でもあくまで重視されるのは競技力。差別される側だったり、少数派であったりしても、強くなればあっという間に地位が約束されます。これほどわかりやすくダイバーシティを実現している分野はないと思うし、スポーツの力でダイバーシティを進めるというローレウスの理念にもつながっていると思います。

たとえば昨年のラグビーのワールドカップで多国籍軍の日本代表が活躍して、いろいろな人種の選手たちが協力して結果を残すというモデルが理解されました。陸上でもいろいろなルーツをもつ選手が活躍することによって、新しい価値観を提示できていると思っています。

2005年世界陸上男子400mハードル決勝。2度目の銅メダルを獲得した為末大。写真:築田純/アフロスポーツ

© Jun Tsukida

いっぽうで、日本の現状を見ると多くの競技団体の理事の男女の比率がかなりいびつで、これが女性アスリートの置かれている立場と相関関係にあると思います。日本においてはスポーツ界がまず男女の理事の比率を是正して、社会をリードできればいいと考えています。いまのところ、スポーツ界がリードされている感じがするので、逆転したいところですね。

──2021年に延期が決まった東京オリンピック・パラリンピックの開催についてはどのようにお考えですか?

為末 僕の立場は明確です。できない可能性も高いだろうけれど、できるとできないとの間に、無観客、競技数を減らす──出場国の数をコントロールするとそれはオリンピックなのかという議論が出てくるけれど──、といった具合に段階を踏んだ議論ができると思うんです。

たとえば、選手は選手村から一歩も出ないようにする、ってことも考えられるんですね。そこまでやっても開催できないかもしれないんですけれど、開催と中止の両極で議論している現状を懸念しています。IOCがどこまで妥協してくれるかわかりませんが、開催する前提でチャレンジしてみましょうという感じです。

ローレウスとは?
“Sport for Good”(スポーツを良きことのために)という理念のもとに設立されたローレウス・スポーツ・フォー・グッド(ローレウス)は、スポーツの力で差別や偏見、暴力といった社会問題に立ち向かう慈善団体だ。2000年にリシュモンとダイムラーAGによって設立され、現在は世界40カ国以上で200を超えるスポーツベースのコミュニティ・プログラムを支援。年に一度、スポーツの各分野で活躍した個人と団体にローレウス・ワールド・スポーツ・アワードを授け、その功績を称えている。

PROFILE
為末 大
1978年、広島県生まれ。2001年と2005年、世界陸上男子400mハードルで、2大会連続となる銅メダルを獲得した。オリンピックを含めた世界大会における短距離種目でのメダル獲得は日本人初だった。400mハードルの日本記録は、いまも為末が2001年に記録した47秒89である。2012年に現役を引退。現在は人間理解のためのプラットフォーム為末大学(Tamesue Academy)の学長、アジアのアスリートを育成・支援する一般社団法人アスリートソサエティの代表理事を務める。

文・サトータケシ
写真・淺田 創@Secession

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August 15, 2020 at 07:05AM
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