新型コロナウイルスの感染拡大を受け、長きにわたって品不足が続いているものが多くありますが、中でもマスクはその代表的存在といえるでしょう。そうした影響を受けてか、ここ最近IT業界でもマスクに関するさまざまな動きが起きているようです。
中でも大きな話題となったのは、シャープがマスクの生産を開始したことではないでしょうか。シャープは政府からの要請を受ける形で、2020年2月28日よりマスクの生産を決定。その後1ヵ月で生産に向けた準備を整え、2020年3月24日にはマスクの生産を開始しており、異業種からの参入としては異例の速さといえるでしょう。
▲シャープは政府の要請を受け2020年3月よりマスクの生産を開始。異業種からの参入で大きな話題となった
シャープは当初1日15万枚のマスクを生産し、政府へ優先的にマスクを納入するとしていましたが、納入にある程度目途が立ったためなのか、同社は2020年4月20日に、個人向けにも子会社のSHARP COCORO LIFEが運営するECサイトを通じて、1箱50枚のマスクを3万セット販売することを明らかにしました。
そして翌4月21日にはマスクの販売を開始しましたが、かねてよりマスク不足が叫ばれている中だけあって多数の購入者がECサイトに殺到。その結果、ファイアーウォールが接続を絞ってしまい、長時間ECサイトにアクセスできない状況が続くなど大きな混乱が発生してしまったのです。
そこで同社は販売方法を抽選方式に変更、4月27日に抽選販売への応募を受け付けましたが、やはりマスクを求める応募者が殺到して1日中ウェブサイトへのアクセスが集中。「502 bad gateway」のエラーメッセージが多発して応募を完了できない人も少なからずいたようです。
ちなみにSHARP COCORO LIFEの発表によると、応募者の総数は470万6385人に達した、応募者多数のため販売数を4万箱に増やしたとのこと。
応募しようとしたもののエラーで応募ができなかった人を含めれば、総数をはるかに超える人からのアクセスがあったと考えられ、いかに現在のマスク需要が大きいかをうかがい知ることができるでしょう。
▲SHARP COCORO LIFEのマスク販売サイトより。第1回の抽選販売に応募できた人は470万を超えているが、応募できなかった人を含めればより多くの人がアクセスしていたものと考えられる
需要の爆発的な高まりを受け、マスク生産を打ち出した企業はシャープだけではありません。パナソニックも外販はしないものの、外部からの調達を減らし市場のマスク供給を安定化させるべく、自社向けのマスクを生産することを発表しています。
また最近では家電製品も多数手がけている生活用品メーカーのアイリスオーヤマも、これまで中国のみで生産していたマスクの国内生産開始を打ち出し話題となりました。
また、個人向けのマスクではありませんが、フェイスシールドなど新型コロナウイルスの現場に携わる医療機関で利用する機器や部品を、3Dプリンターで製造することを支援する動きも広まっているようです。
実際、米HPはパートナー企業と協業し、3Dプリンターで生産した医療機器や部品の供給をしているほか、製造用の造形データを無償で提供。日本法人の日本HPでも、SOLIZE Productsという企業と共同で医療機関向けの支援を進めているとしています。
そしてDMM.makeの3Dプリント事業を持つDMM.comも、そのHPの3Dプリンターソリューションを活用し、生産したフェイスシールなどを医療機関に無償提供する取り組みを4月より実施していると発表しています。こうした取り組みはまさにIT技術の進化ゆえといえるでしょう。
▲DMM.comは自社の3Dプリンター設備を活用し、医療機関向けのフェイスシールドなどを生産。横浜市の病院などへの無償提供を開始しているという
一方、自らマスクを生産する訳ではないものの、異業種からの販売を打ち出したのがスマートフォンの周辺機器などを手掛けるトリニティです。同社はマスクを1枚39円の原価で販売する「原価マスク」の提供を2020年4月27日に発表し、話題となりました。
▲トリニティが販売を開始した「原価マスク」。付き合いのある中国企業の協力を得てマスクを原価で販売するのが特徴で、高額転売防止のため価格を明記するなどの策が取られている
同社は中国のいくつかの工場に製造を委託して製品を生産しており、そのうち携帯電話を製造している会社がマスクを生産していたことから、その会社の協力を得てマスクの販売にこぎつけたとのこと。
そもそも同社がマスク販売を手掛けるに至ったのは、日本でマスクが高額で転売されたり、ECサイトで不当に高い価格で販売されたりしている状況を打破したい狙いがあるそうで、あえて利益を取らずに原価で販売し、なおかつ箱に販売価格を印刷することで高額転売を防ぐ仕組みが設けられているというのが大きな特徴となっているようです。
マスクを提供する企業の参入が増えることで、市場に流通するマスクは今後増えていくものと考えられ、それがいずれマスク不足の解消につながることを期待したいところです。しかしながら、現在はあまりにもマスクに対する消費者の需要が大きすぎることから、参入した事業者に少なからず混乱も与えているようです。
特にECサイトでのマスク販売に関してはシャープだけでなく、トリニティの原価マスクも早々に想定を上回る注文がなされたとのことで、販売を開始して間もないうちに受注を停止、同社のウェブサイトも全体的にアクセスしづらい状況がしばらく続いていました。
また、マスクの国内生産を発表したアイリスオーヤマの公式通販サイト「アイリスプラザ」も、マスク販売のため連日アクセスが殺到しているようで、時間帯によってなかなかアクセスできない状況が続いているようです。
さらにシャープのケースでは、販売開始直後からアクセスが集中した4月21日、ECサイトの影響が同社の「AIoT家電」と呼ばれるスマート家電機器にも及んでしまったことでも話題になりました。
AIoT家電はクラウドサービスと連携し、スマートフォンアプリを通じて便利な機能が利用できることが特徴ですが、マスクの販売でECサイトに接続しづらい状況が発生したのと時を同じくして、AIoT家電を操作するスマートフォンアプリが使えなくなったという報告が急増したのです。
これはECサイトと家電を操作するスマートフォンアプリとが、共に同じ会員基盤である「COCORO MEMBERS」を用いており、どちらも同じ認証サーバーを用いていたことから、ECサイトの影響でスマートフォンアプリの認証もしづらくなったことが原因のようです。
それゆえ4月27日の抽選販売では、応募時点でのCOCORO MEMBERSへの登録を不要にし、抽選者がマスクを購入する時だけCOCORO MEMBERSに登録してもらうようにすることで、同様のトラブルが発生することを回避したようです。
▲シャープはスマートホームサービスの「COCORO HOME」等を通じてスマートフォンアプリからAIoT家電を操作する仕組みを提供しているが、マスク販売サイトにその会員基盤「COCOR MEMBERS」を用いたことで、ECサイトでのトラブルが家電にも及んでしまった
マスクのように社会的に需要がひっ迫している製品を、異業種の企業などが協力して迅速に提供する体制が整えられつつあることは、非常に大きな意味があると感じます。しかしながらそのことで既存のサービスに問題が起きてしまっては、意義も大きく失われてしまうでしょう。
一連の出来事からは、他のサービスに影響を与えることなく、社会的意義のある取り組みを実践することの難しさが浮き彫りになったともいえるでしょう。そうした課題を解消するための術が、IT業界全体には求められているといえそうです。
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May 01, 2020 at 02:05PM
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