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逃げ場がないパンデミックには従来型BCPのアップデートが必要…ローランド・ベルガーパートナー 貝瀬斉氏[インタビュー] - レスポンス

ポストコロナを見据えた今後は、どの業界、誰でも気になるところである。このうちモビリティ産業について、大局的な俯瞰から企業活動への影響、モビリティ事業への影響、特にサプライチェーンでのリスクマネジメントの新しい考え方を議論するオンラインセミナーが5月26日に開催される。

「モビリティ産業におけるポストコロナの世界観を見据えた事業のあり方・つくり方」セミナーの開催に先立ち登壇者の2名に話を聞いた。

インタビューの第2弾は、「求められる協調型リスクマネジメント」と題するセッションを担当するローランド・ベルガー パートナーの貝瀬斉氏。自動車業界のサプライチェーンにおけるリスクマネジメントの視点でポストコロナ時代を読み解くという。

―ポストコロナ時代を考える上で、対策や対応には短期的なものと長期的なものがあるかと思います。リスクマネジメントの視点では、企業はどのように新型コロナウイルスというリスクに対処すべきでしょうか。

貝瀬氏(以下同):短期的には、現在の状況をどうリカバリするかという問題に集約されると思います。長期的には、業務や社会のしくみが変わったときの新しいリスクの評価、対策・対応をどう新たに構築するかの問題になります。強調しておきたいのは、今回のパンデミックのように、これからのリスクマネジメントは、リスクの多様化に備えたものになるということです。毛色が異なるリスクも含めてどう包括的に対応できるものかが重要になってくるでしょう。

日本の大企業のBCP対策は年々広がっています。内閣府の調査では、東日本大震災の2011年には前年から倍近く対策を導入した企業が増えています。2017年にBCP対策を策定済み・策定中を合わせると大企業の80%以上にのぼります。

BCP注目の背景には、地震や台風などの自然災害があったわけですが、自然災害は、被害や影響を受ける部分が局所的のため、被害の場所や時期をずらして設備や人などの再配置でリカバリを考えることが可能です。

しかし、(世界的な感染拡大である)パンデミックの場合、国内にも海外にも逃げ場がなくなります。影響範囲も広がるのでカバレッジも広範になります。そもそも、対策の前提条件が異なるのです。

―大企業では、BCP対策の中にインフルエンザや伝染病のパンデミックに対する方策を組み込んでいたところもあると思います。それでは不十分だったということでしょうか。

不十分というより「手触り感」の違いでしょうか。リスクが多様化しているのは、社会や技術の多様化も進んでいるからです。以前なら、新型コロナウイルスのようなパンデミックが発生したら、それこそできることは少なかったかもしれません。現在は、通勤ができなくてもリモートワークでカバーできることが増えています。テクノロジーとインフラが発達したおかげで、以前ならお手上げだった状況もなんらかの対応ができるようになってきています。

それらをリスク対応やリカバリに組み込むことが可能になったので、古い対策はアップデートする必要があります。

―長期的な視点のリスクマネジメントでもアップデートは必要でしょうか。

長期的リスクマネジメントでは、リスクの考え方やその管理、制御がそもそもどうあるべきか、とゼロベースで考える必要があります。今回、各論的な手法や対策はこれから知見が集まり新しい対策や対応、マネジメント手法が作られると思います。長期視点で我々が提案しているのが、協調型リスクマネジメントです。

協調型リスクマネジメントとは、今回のようなパンデミックに対して、BCPやリスクマネジメントを個社ごとに対応することが果たして良い事なのかという疑問から生まれたものです。個々の対応策は、企業の規模の違いやマーケットの違い、戦略の違いから違いもあるでしょう。ただ、リスクマネジメントのベースとなる部分は協調領域になるのではないかと考えています。

自動車業界は、OEMを頂点としたTier1、Tier2からTier4や5といったサプライチェーンがあり、それらを繋げた垂直型でリスクマネジメントを考えてきました。それを、業界内で大きなリスクマネジメントのコンセプトや役割を描き、競合同士で役割分担しながら、効率的に対応していくというのが、基本的な考え方です。

―日本の製造業や自動車メーカーの場合、そのような連携は難しいということはないですか。

確かに、末端の中小企業まで含めると日本のサプライチェーンは複雑です。ただ、上流のOEMから見ると自社のサプライチェーンでも、下流の工場はトヨタからも日産からも注文を請けていることもあります。そのようなサプライヤーに対して、それぞれのOEMが同じ情報の提供を個別依頼するのではなく、OEM1社が得た情報を他のOEMと共有することで、現場の負担や混乱を抑えることができます。協調型はハードルが高いですが、リスクマネジメント工程について情報の収集や共有、指示やモニタリングといった項目を、モジュール的な機能分割を行い、その粒度や頻度を調整すれば、協調領域として共通化できる部分はあると思っています。

ポイントは、イニシアティブはOEMがとりつつも、サプライチェーン上の企業・事業者の状況に合わせたモジュール分割を考えることです。OEMや上流の都合の押し付けではなくコンソーシアムのように合意できるところ、可能なところから協調領域として取り組み、それ以外のところは従来通り個社対応すればよいのです。

具体的な事例はセミナーでお話する予定ですが、協調型リスクマネジメントで重要なのは、各社のBCPをブレさせない形の共通化です。小規模な企業ほどハードルは高いかもしれませんが、対策技術や対応手法がある程度共通化できると、小規模な程メリットも得やすい面があります。

―協調型リスクマネジメントでは、OEMのサプライチェーン上だけでなく業界横断での協調や分業もあり得るのですか。

はい。先ほど述べたように、サプライチェーン上の企業はひとつのOEMだけと取引しているわけではないので、業界横断で協調する場合、やはりバランスが重要です。そのためには、各社の都合や慣習よりも合理的な判断を基準とします。パンデミック時に調達先の稼働状況などの情報共有や対応体制のためのリソースを融通し合うなどの取組みは意味があります。

―現実でも、旅客が減少したタクシーやバスが食材や貨物輸送に利用されるなどの動きがでています。普段は協調領域になりえない部分も、非常時の例外的な連携の枠組みですね。

5月26日開催「モビリティ産業におけるポストコロナの世界観を見据えた事業のあり方・つくり方」オンラインセミナーはこちら。

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May 13, 2020 at 09:15AM
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