Katherine Masters
[ニューヨーク 20日 ロイター] - ニューヨークで商品マーケティングの仕事に就いているローレン・マギネスさん(31)は、スポーツアパレルメーカー、ルルレモンの製品を愛用している。だが最近マギネスさんは、ルルレモンの代わりに、アマゾンで見つけた低価格のブランド類似品のスポーツウエアを買うことが増えている。
お気に入りの1つが、CRZヨガの販売するハイウエストのヨガパンツ(32ドル)。ルルレモンのレギンス「アライン」(98ドル)にそっくりだ。マギネスさんがCRZを知ったのは、ルルレモンの元社員を自称するインフルエンサーが投稿した「TikTok(ティックトック)」の動画だ。
年末商戦が近づく中で、ルルレモン、アバクロンビー・アンド・フィッチ、ビルケンシュトック、エスティローダー傘下の香水ブランドであるトム・フォードなどの人気商品が、マギネスさんのような買い手の視線を惹きつけようと競い合う。問題は 、ティックトックで話題を呼ぶ「デュープ」、つまり高額商品に十分に似ている商品に対する人気が上昇していることだ。
CRZヨガのビジネスは好調だ。電子商取引の分析を提供するジャングルスカウトのデータによれば、CRZは月平均8万8623着のレギンスを販売し、月平均の収益は約284万ドル(約4億2400万円)に達する。CRZのウェブサイトによれば、オーナーは香港の商社とされる。CRZはコメントの要請に応じなかった。
類似商品に対する需要の高まりが、インフレに伴う支出の引き締めと重なったことで、流行の先端を走る有名ブランド商品でも売り上げに影響が出ている。デュープは若い消費者の間できわめて広く受け入れられており、マギネスさんは、友人へのプレゼントは「ルルレモンっぽい」スポーツウエアのセットでいいのではないかと考えている。「何といっても、デュープなら予算に余裕ができるから」
ティックトック上では、アンダーウエアの「スキムズ」やデッカーズのブーツブランド「アグ」といった有名ブランドのデュープについて、何百万件ものハッシュタグ検索が見られる。インフルエンサーたちはウォルマートやターゲット、オンライン香水販売のドシエといった格安小売企業が販売する類似の代替品を紹介し、歩合報酬を受け取っている。
先週、安売り情報のブログとして売上高に応じた手数料を得ている「パッショネート・ペニー・ピンチャー」はフォロワー対象のメールマガジンの中で、クリスマスギフトとしてディアフォームが「アグのデュープ」として29.99ドルで販売する羊皮製スリッパを紹介した。百貨店チェーンのノードストローム が「みんなのギフト品リスト」で宣伝する本物の「アグ」ブランドのスリッパは115ドルだ。
これだけ広範囲にわたる売り手からデュープを購入できるようになると、専門家としても、この年末商戦でデュープがオリジナル商品からどれほどの市場シェアを奪うのかを数値化するのは難しいという。小売コンサルティング会社ドネガー・トーブのレスリー・ギーズ上級副社長は、シェアを奪われるリスクが最も高いのは、有名ブランドの香水や化粧品、中間価格帯の衣料品や靴、特に複製しやすい「コモディティー」商品だと語る。
データ会社サーカナが3429人を対象としたアンケート調査でホリデーシーズンのプレゼント候補を尋ねたところ、米国の消費者のうち、28%が香水などの美容製品、55%が衣料品や靴、アクセサリーを挙げたという。
第2四半期決算で前年比18%の増益となったルルレモンは、5月にロサンゼルスで2日間にわたり、類似品を購入した人が本物の「アライン」と交換できる「デュープスワップ」という販促イベントを行った。ルルレモンにコメントを求めたが、回答は得られなかった。同社のカルビン・マクドナルド最高経営責任者(CEO)は6月、投資家に対し、「デュープスワップ」に参加した買い物客の約半数は30歳未満で、ルルレモンにとっては新規顧客だったと説明した。
<ファストファッションからオンラインショッピングへ>
専門家は、最近のデュープブームの発端となったのはファストファッションの登場だと指摘する。インディテックス傘下のザラが1号店をオープンし、高級ブランドによく似たデザインを出すビジネスを始めたのは1975年。ウェイク・フォレスト大学のイアン・テープリン教授によれば、製品サイクルを短縮したことで、より多くのスタイルを迅速に市場に投入できるようになり、「頻繁に買い物する習慣」に火をつけたという。
アマゾン、イーベイ、ショピファイ、エッツィといったオンラインショッピングサイトも、類似商品との価格比較を容易にしたことで、デュープの売り上げ加速を後押しした。「グーグルレンズ」アプリなどの新たな技術により、好みのアイテムの写真を撮影して、類似商品が売っていないか検索することも可能になった。
これからデュープの販売をめざすのであれば、中国の電子商取引大手アリババを使えば、製造業者を検索し提携するのも簡単だ。電子商取引分析会社マーケットプレイス・パルスの創業者ジュオザス・カツィウケナス氏は、有名ブランドと同じ素材や生地を使用する製造業者もあると指摘する。
また別の例では、デュープ販売業者が利益の最大化を狙い、低価格の素材を使いつつ、オリジナルの高価格製品の見た目を模倣するという作戦をとっている。
いずれにせよ、アマゾンなどのショッピングサイトで販売する場合は、実店舗を持つ小売企業と同レベルの経費を必要としないのが普通であり、低価格で商品を提供できる。カツィウケナス氏は「(デュープは)まったく同一というわけにはいかないが、大幅に安い」と言う。
消費者レビューサイト「トラストパイロット」が、米国、英国、イタリアで、ミレニアル世代及びZ世代の消費者3000人を対象に実施したアンケート調査によると、購入者の30-49%が、オンラインで購入したデュープに失望した経験があると答えている。
アマゾンの広報担当者マリア・ボスチェッティ氏は、販売者がアマゾンのサイト上での商品説明で、ブランド名に関連付けて「デュープ」「フェイク」「模造」といった言葉を使用することは許されないと語る。だが、ジャングルスカウトで中小ビジネス担当責任者を務めるマイク・シュシュク氏によれば、アマゾンが必ずしもルール違反の出品者を把握できているわけではないという。
16日の時点で、アマゾンにはこうしたポリシーに違反していると見られる製品が数多く出回っている。ビルケンシュトックの人気商品のデュープとして、本物より100ドル以上安い価格をつけたサンダルもあった。
ビルケンシュトックの広報担当者によると、同社は「ブランドおよび製品の海賊版問題を非常に深刻に受け止めており」、自社の知的財産権を守るために「厳しい措置」を取っているという。だが専門家によれば、デュープ販売業者らは、既存の特許や著作権の侵害に当たるブランドロゴなどデザイン上の特徴を巧みに回避する技をますます磨いているという。
(翻訳:エァクレーレン)
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