ROBOT PAYMENTが主催し7月29日に開催された「バックオフィスカンファレンス2020」では、「2020年の電子帳簿保存法改正で経理はこれからどう変わるのか」をテーマにオンラインでパネルディスカッションが開催された。本記事では、その内容を紹介する。
同ディスカッションではROBOT PAYMENTの執行役員でフィナンシャルクラウド事業部長の藤田豪人氏が司会を務めた。藤田氏以外の、パネリストは2人だ。
1人目は、ウイングアーク1stの執行役員/CFOである藤本泰輔氏。藤本氏は、今回新型コロナウイルス(COVID-19)拡大の中で、CFO自らテレワーク化や業務の改善、デジタル化を推進しているという。事業としても、帳票事業や電子データをBIなどで使用し、経営をさらに変えていこうといったことをしているという。
2人目は、マネーフォワードのクラウド経費本部・本部長である今井義人氏。今井氏は領収書の受け取りサービスなどを実際に事業として担当しており、電帳法の中心となる部分だという。また、クラウド経費本部という事業側のポジションにあり、実際に世の中のトレンドや各社の注意事項、中心にいるからこそ感じている内容を語った。
同ディスカッションは、3つの議題に沿って行われた。1つ目は、「2020年10月の電子帳簿保存法改正で 社会(世の中)はどう変わるのか?」というものだ。
藤田氏は、プロジェクト推進という立ち位置で、経理担当者から多様な意見を聞いたという。現在の機運は、現場も含めて電子化への期待があり、経理担当者の90%くらいは「電子化を進めてたい」と声を上げているとのこと。
一方で、電帳法の改正は1996年からスキャン改正や緩和など多様な内容を実施しているが、システム導入の側面から見ると、バックオフィス、特に経理周りでは、3年間で23%の企業しかシステムを導入していないという。
「言い換えれば、77%の企業が入れていないっていうことなんです」と、機運があるにも関わらずシステム化が進まないと藤田氏は現状を語った。
また藤田氏の感触では、経理部門が請求書の電子化を進めたい意向があっても、7割くらいが社内で意見を上げられないでいるという。こうした現状から、「電子化を進め、企業自体も変わる意識を持って進んでいかないと変わらないのではないか」と藤田氏は述べた。
今井氏は、スマートフォンで電子化できるようになった時に電帳法の制度自体の認知度も上がり、現在もその時と同じかそれを上回るほど、制度に光が当たっているタイミングだと感じているという。
同氏は「前回の制度の改訂では期待値と実態とのギャップがかなりあり、実際に運用を検討してみると難しいところがありました」と、電子化が浸透しなかった原因を説明。そのため、電帳法に対して当初はネガティブな印象を持っているユーザー企業がかなりあったという。
ただ、2020年10月にまた制度が変わり、メリットを説く記事も多く出ているため、期待値は上がっているという。
「電帳法はあくまでも制度であり、使い方だ。正しいことを伝えていく必要性を感じつつ、『どう変わるか』に加えて、われわれとして『どう変えていくか』というところが重要なポイントだと思っています」(今井氏)
期待と実態とのギャップについて、今回の改正でもネガティブな意見が多いのかとの藤田氏からの問いかけに対して今井氏は、「前回のスマートフォンによる電子化では、写真を撮って原本は簡単に捨てられるというのが期待値だったが、実際には社内で処理した後に廃棄可能となる制度だったため、それを知っている人には懐疑的な見方が多かった」と指摘。
これについて藤田氏は、「正しいことを知って運用をどう考えるかが大事ですね」と語った。
同じテーマについて問われた藤本氏は、自社も電帳法への対応は5~6年前の緩和からずっと対応しており、改正はあったものの細かいところでハードルがあったと振り返る。
今回の改正は、紙のやり取りよりも電子取引、取引自体の電子化を推奨するものだと捉えているという。
これを受けて、取引の電子化がさらに進むと見ており、それに応じる形で経理や管理部門の業務のあり方も変化し、システムの手当ても必要になってくるかもしれないと藤本氏は語った。
以前と環境が違う点として藤本氏は、クラウドでサービスを提供する企業の増加を挙げ、システム導入もしやすくなっていることも追い風になっているのではないかと見ているという。
「私自身、こういった改正には非常に期待しているところではあります」(藤本氏)
藤田氏は今回の改正を表すキーワードとして、「電子取引をベースにする、推奨するという考え方ですね」と1つ目のテーマを締めくくった。
「電子帳簿保存法対応のために 現場(実務レベル)で何をすべきか?」
2つ目の議題は、「電子帳簿保存法対応のために 現場(実務レベル)で何をすべきか?」。
現場で何をしなければならないかの前提としては、今の電帳法だけではなく、データtoデータの取引も視野に入れたシステムの導入を考えていくのが最も良いのではないかと強く感じていると、藤田氏は語る。
また、取引における相互間の書類では、双方が電子化しないとなかなか進まないという問題が起きるため、電子化は、自分たちが出す書類も進めていくべきだとのこと。
さらに、現場がそういう声を上げること、システム推進は現場からの声を待つのではなく、中間層やマネジメント層が声を出して変えていってほしいと、藤田氏は述べた。
システムの導入に関してユーザー企業と話す機会が多いという今井氏は、コロナウイルス感染症拡大では、第2波など今後何が起こるかわからないため、その備えとしてテレワークできる環境を整えておくことが経営上の課題に来ていると語る。
そのため、トップダウンで指示が降りてくるケースが多く、逆にボトムアップで声を上げた場合も耳は傾けてもらえるタイミングであり、外部環境としては非常に電子化がやりやすい時だなと思っているという。
トップダウンで降りてくる場合、例えば電帳法改正では、経営層は「これをやると全部良くなる」という期待値で考えていることが多いと今井氏は語る。ここでも期待と実態のギャップが関わってくるが、「『実態としてはこういうもので、この部分が良くなります』『全部良くなるわけではないですが、この部分は確実に良くなります』といった、正しい情報を持った上で社内の検討を進めていくことが大事だと思います」と今井氏は語った。
これを受け藤田氏は、どのようなシステムを入れるべきかについて、情報収集をきちんと行って、やりたいことをどうフローにしていくかが重要だと指摘した。
藤本氏は、藤田氏が挙げたシステム導入済みの企業が23%という数値について、非常に低いと感じたという。その背景には、「『業務が動いていればそれでよし』みたいなところがある」(藤本氏)という。
法律改正を契機に次を見据えることや、変えることで何が起こるかを見せることが重要と指摘する藤本氏は、電子取引によって業務の生産性が格段に上がると見ており、元々紙ベースものを電子化すると、データの流通が起こり、データ自体を次の経営に生かすことができるとした。
「それが、システム導入のモチベーションに繋がり、未来を指し示し、導入部門にとっても会社にとっても非常にプラスになる、といった働きかけを現場やマネジメントレベルがやっていくことが重要だと思っています」(藤本氏)
ウイングアークでは、紙ベースの書類をデータ化し、それを、経営分析や未来の打つ手に分析して使うといったところに繋げることを、今まさにやろうとしているという。
「経理(バックオフィス)の働き方は どう変わっていくのか?」
3つ目のテーマは、「経理(バックオフィス)の働き方は どう変わっていくのか?」だ。
藤田氏は、99%が中小企業の日本で経理業務の従事者は労働生産人口のおよそ2%だと言われており、従業員100人の企業でも経理担当者は2人、50人の企業では1人といった状態だと指摘。そのほとんどが紙ベースの現状では、紙をデータにして処理するルーチンワークで忙殺されている部分が大きいと語る。
そのため、勉強する時間がなく、結果的に毎日毎日ひたすら業務に追われてスキルアップができない状況になっていると指摘する。
一方、テレワークができなかった経理担当者について調査したところ、20代・30代の3割ほどが転職を考えたという。ただ、業務を覚えて辞めてもまたルーチンワークを覚えることの繰り返しになり、キャリアという意味では無駄になってしまうと藤田氏は危惧する。
今井は、自社であるマネーフォワードの経理業務について、基本的には東京で経理の業務に従事しているが、地方に転居した人もいるという。しかも、部署の異動や拠点の変更ではなく、同じ経理部に所属し同じ仕事に携わりながらの転居が実際に可能だったと今井氏は語る。
さらに今井氏は、地方在住者を採用可能になった点をメリットとして挙げる。
「別に転職を考えなくても、地方に引っ越しても、今の業務はそのまま続けられるなど、選択肢がしてどんどん出てきていると思います。そうした働き方の豊かさや自由度も、テレワークや電子化に取り組んでいく延長線上にあると思っています」と見通しを語った。
藤本氏は今井氏や藤田氏の話を肯定しつつ、働く場所や時間の制限を受けないことで、いろいろ可能性が出てくると語る。
「これまでは仕事を諦めていた介護や子育てをしている方が、どういった場所でも仕事ができるのは、すごく大きな変化だと思います」(藤本氏)
さらに同氏は、電子化により日々のオペレーションに割く時間が大きく減少するとの見通しを示した。
「デジタル化された取引から生み出されるデータを活用して、経営のスピードを上げることに繋がるような働き方や業務ができ、そういう面では今の環境には非常に期待しているところです」(藤本氏)
そして、同ディスカッションの締めくくりとして藤田氏は、まず、情報収集しながら自社がどう進めるか、期待値ではなく現実的なところでどうやるべきなのかということも考えることの重要性を語った。
また、未来も見ながらいろいろ変えていくことで、働き方が最終的に変わっていき、経理やバックオフィスが、働きやすさやキャリアの作りすい環境を作っていけるという。そうすることで、経営に近い位置で、バックオフィスの本来の意味での価値を見出せるのではないかと指摘した。
パネリストそれぞれのまとめでは、今井氏は期待値とのギャップについて補足した。
スキャナ保存と電子取引の2つの局面があるが、スキャナ保存については国税側には進めようという気配はあまり感じられないと今井氏は語り、今回の改正においても、これについては期待値とギャップが生じてしまうのではと指摘する。
今井氏によれば、今回の改正で注目すべきポイントは電子取引だという。
同社の実務において請求書の8割以上は電子化されており、領収書でもかなりの割合がそうだという。
電子で受け取ることで業務の効率化ができるという今井氏は、「そこを捉えて検討いただくのが良いスタンスではないかなと思います」と提言した。
視聴者からの質問
対談後に、視聴者からの質問2つへの回答があった。
1つ目の質問は、「電子取引について、クラウド連携の場合は領収書がいらないと読み取れるが、タイムスタンプ無しで写真を付けた場合、結局原本は必要なのでしょうか?」というもの。
これについては今井氏が、3通りを選べるというのが正しい理解だと回答した。タイムスタンプの付与や電子取引用の社内規程を設ける方法でも良く、さらに2020年10月からは改変できないクラウドサービスの利用でも可能になるため、選択肢が増えるのだと解説した。
2つ目の質問は、「経費精算システムで電子帳簿保存法の届出を検討。国税への報告書の提出が必要で、原本保存が1年、原本回収の実際の運用についてご教示いただけますか?」というもの。
これについても、サービサーとなるマネーフォワードの今井氏が回答した。税務署への申請書提出にあたっては記載例などがあり、それに沿って提出すれば問題無いだろうという。
質問にある「原本保存が1年間必要」とは、実際には運用によると今井氏は説明する。実際には、確認処理後の定期検査を定めた規程が、少なくとも1年以内というのが従来の要件だったが、2019年の改正で5年間に1回でもよいと拡張されているのだという。つまり、会社の運用によっては、例えば四半期に1回とか毎月とかでも良いので、1年間必ず取っておかなければならないということではないとした。
原本回収の実際の運用方法は、マネーフォワード社内でも電帳法のスキャナ保存の運用をしているが、月に1回の締めのサイクルがあるとのこと。月末頃に、例えば今井氏の1カ月分の経費の精算は、紙ベースの領収書等はクリアファイルに入れて提出しているという。そのうち捨てる物なので、糊付けしたり台紙に貼るといったことはせず、「けっこう雑に提出していたりします」(今井氏)とのことだ。
今井氏は、「電子取引を使うことで、そもそも紙が出ないですということが、けっこうな割合で出てきたりするので、実際に紙が出るということはあまり無かったりします」と実状を語った。
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August 06, 2020 at 07:17AM
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