安倍首相辞任表明市民から批判、評価「世間の声聞かず」「経済で豊かさ」 - 東京新聞

２０１９年参院選で、候補者だった古川俊治さん（右）の応援に駆けつけた安倍晋三首相＝ＪＲ川口駅前で

　安倍晋三首相が二十八日、辞任を表明したことについて、県内でも驚きをもって受け止められた。新型コロナウイルス対応や手付かずとなった憲法改正など、連続在任期間が歴代最長の七年八カ月に及ぶ長期政権に、県内政界や市民からは労をねぎらう声や批判が聞かれた。　（飯田樹与、前田朋子、加藤木信夫、渡部穣、寺本康弘、近藤統義）

　所沢市の主婦原洋子さん（７８）は「最近は側近の意見ばかりを重用して、世間の声に耳を傾けなくなっていた。長期政権の弊害であり、やめてほしかった」と手厳しい。ただ、突然の辞任表明には「急すぎる。次の人が困ってしまう。中韓との外交問題など、山積みの課題をきちんと引き継いでから退くべきだった」と首をひねった。次期衆院選については「自民党に政権を託し続けていいのか。国民の意見を反映させる場が必要。来年十月の任期を待たずに実施してほしい」と述べた。

　杉戸町の建築士武田隆さん（７２）は「健康を害しての辞任なので仕方ないが、国民にとっては損失」と残念がった。憲法改正について「初志貫徹してほしかった」とする一方で、「歴代最長の政権は国民の信任を受けたからこそ。国際社会での存在感や経済面での豊かさを築いてくれた」と評価した。

　川口市で中小企業を営む男性（３９）は、アベノミクスなどの経済政策による株価上昇に一定の評価をしつつ、「新型コロナで景気がさらに底冷えする前に投げ出した印象だ。首相の交代が経済に悪影響を与えないか心配。早急にバトンタッチしてほしい」。森友・加計学園や桜を見る会の問題がくすぶり続けたことについては「早く片付けて、もっと政策論争を期待していたのに…」と語った。

　四歳と二歳の息子がいるさいたま市緑区の主婦加藤優さん（３６）は、早期の解散総選挙を求め「（選挙を経ず禅譲などで）何となく就いた首相はまたバッシングされる。皆で投票した上で選んだ方がいい」と指摘。次期政権には幼保無償化など子育て支援の継続を望み、「お金の支援だけでなく、母親が働きやすい環境づくりを」と注文を付けた。

　熊谷市でベーグル店を営む臼杵（うすき）健さん（４４）は「身近な自分の街がどうなるかの方が関心が高く、国政は遠く感じている」と冷静に受け止める。憲法改正については「戦争ができる国になるという話もあり、やめてほしいと思っていた。手つかずで良かった」と述べた。一方、新型コロナの影響で売り上げが激減する中、国の持続化給付金などの支援策は評価。次期政権には「コロナ対策と経済対策を優先してほしい」と望んだ。