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終戦から75年 戦後世代こそが担う平和 - 西日本新聞

 世界が新型コロナウイルスとの闘いで混乱、迷走する姿は、こんな言葉を想起させます。

 「歴史は繰り返す」。過去の教訓は歳月の流れとともに忘れ去られ、人類は幾度となく同じような運命にさらされる-。古代ギリシャの時代から歴史家たちが発してきた警句です。

 終戦からきょうで75年。戦禍の記憶はいよいよ細りつつあります。歴史の戒めをいま一度、胸に刻み、不戦の決意を新たにしなければなりません。

■記憶を紡いで次代へ

 「戦争体験の風化に拍車がかかっている」。今年の列島は悲痛な声に包まれています。九州をはじめ全国の戦争資料館などは、コロナ禍で長期の休館を余儀なくされました。再開後も語り部活動の休止、見学者数の制限など厳しい対応を迫られています。戦没者追悼行事の相次ぐ縮小も例年にない光景です。

 しかし、記憶の糸を丹念に紡ぐ地道な営みも続いています。 「高倉健の想いがつないだ人々の証言『私の八月十五日』」(今人舎刊)。先月出版されたこの本も、その一つです。福岡県出身の俳優で6年前に他界した高倉さんと縁があった戦争体験者ら24人の証言集です。高倉さんの養女小田貴月(たか)さん(56)=東京在住=が、昨秋から九州を含め各地を訪ねて話を聞き取るなどして編み上げました。

 ロケ先で知り合った飲食店関係者など、市井の人々が中心です。肉親の戦死、勤労奉仕、疎開、特攻など戦時の過酷な境遇や、その時代を必死で生き抜いた記憶が平易な文章でつづられています。83歳で亡くなった高倉さんも晩年、勤労動員中に機銃掃射を受けた記憶などを語り、体験を後世に伝える責任を感じていた、といいます。

 出版はその遺志を受け継ごうと小田さんが企画し、漢字に振り仮名を入れるなど児童でも読める内容になっています。小田さんは「戦時とコロナ禍に共時性のようなものも感じた。多くの子どもたちが歴史を学び、今後の生き方を考えるきっかけになれば」と話します。

■憲法の大いなる力を

 新刊の一方で復刊や重版が続く書物もあります。「アフガニスタンの診療所から」(筑摩書房、1993年刊)をはじめとした福岡県出身の医師、故中村哲さんの著作です。昨年末、73歳で中村さんが命を絶たれたアフガンでの悲劇はいまだに信じ難く、悔しくてなりません。

 戦乱と干ばつが続く大地で、用水路建設の大事業などを進め多くの命を救った姿は詳述するまでもないでしょう。「平和憲法を持つ日本だからこそ現地で受け入れられた」という中村さんの足跡は、その死によって無に帰したわけではありません。 むしろ、尊い犠牲の上に生まれた現行憲法の価値やそれに基づく人道支援がいかに大きな力を持つか。改めて多くの人が思いをはせました。著作が読み継がれる理由もそこにあります。

 新冷戦-。いま国際社会は緊張の度を増しています。米国と中国の対立の先鋭化はかつての東西関係になぞらえられ、冒頭の警句にもつながります。感染症は「人類共通の敵」であるのに、世界は協調どころか敵対や分断の様相を帯びています。

 日本と近隣国との関係も冷え込み、朝鮮半島にはきな臭さが漂います。そうした中、日本ではミサイル防衛策として「敵基地攻撃能力」が議論されています。いかにも拙速で専守防衛を逸脱する懸念を禁じ得ません。

 戦後生まれは既に1億人を超え、総人口の8割を大きく上回りました。忘却にあらがい、平和を守り抜く覚悟を持つべきは、戦後世代にほかなりません。

 戦後75年の節目に当たり、私たちはその使命を深く見据え、国内外の不穏な情勢にも目を凝らす必要があります。この国が歴史のわなにはまり、過ちを繰り返すことがないように。

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August 15, 2020 at 08:43AM
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