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「ギャップ」が今秋冬から全商品を3~4割値下げ セール常態化を変革へ - WWD JAPAN.com

 「ギャップ(GAP)」は今秋冬物から、日本の商品価格を全体的に3~4割下げる。看板商品のジーンズの中心価格は、従来の6990~7990円から3990~4990円となる。セールが常態化して価格が分かりづらくなっていたことを受けて、「フェアな価格を打ち出し、日本のお客さまにいつでも安心して購入してもらえるようにする」とマシュー・コリン(Matthew Corin)ギャップジャパン社長。19年11月に現職に就き、今年1月から日本に住んでいるというコリン社長に聞いた。

WWD:価格改定は、今秋冬からのアジア向けキャンペーン“Comfortable together 心地よさから、はじめよう”の一環だ。そもそも同キャンペーンの意図は何か。

マシュー・コリン ギャップジャパン社長(以下、コリン):「ギャップ」として、もう一度日本やアジアのお客さまにコミットし直すという意思表明だ。「ギャップ」には50年以上の歴史があるが、創業当時から人の多様性や包括性を尊重してきた。今回のキャンペーンで掲げているコンフォータブル(心地よい)とは、単に服の着心地がよいということだけではなく、個人のあり方としても心地よさを追求するという意味。コロナ禍で行動が制限されている今だからこそ、「ギャップ」の核にあるこうした考え方を改めて伝えていく。店でもデジタルでも心地よさを感じてもらえて、着心地もよく、さらにそれをフェアな価格で提供する。

WWD:セールが常態化していたことで、これまでは商品購入後に商品がすぐに値引きされているという、「フェアではない」と感じるケースもあった。

コリン:そうした事態はもう起こらない。値引きのプロモーションは今後は縮小する。今日も明日も同じ価格だ。お客さまには新しい価格になじんでもらって、値引きを心配することなくいつでも安心して商品を購入していただきたい。もちろん、シーズン末や大型連休などにはセールは行うが、これまでより縮小し、値引き幅も従来よりも狭める。広告も、値引きのパーセンテージを打ち出すのではなく、商品そのものについて語るものが中心になる。

価格改定に向けて売り上げデータも分析したし、お客さまの声も聞いた。実際のところはこれまでも適正価格は明確であり、それは競合ブランドの販売価格ともほぼ同じだった。しかし、以前はその価格がセールでの値引き後の価格だった。今後は最初からその価格を打ち出す。アイテムやカテゴリーによって値下げ幅は異なるが、全体的におおよそ3~4割値下げする。ジーンズの中心価格は、従来の6990~7990円から3990~4990円となる。実際にこれまでお客さまが払っていた価格に近いので、(売上高に)大きな違いはない。今回のキャンペーンはアジア向けであり、中国でも同様に価格は変えていく。

WWD:同キャンペーンでは価格改定のほかに、品質やコミュニケーション手法にも焦点を当てている。

コリン:品質面として、たとえば防水などの機能性はこれからも伝えていくが、それを単に機能として羅列するのではなく、エモーショナルに伝えていくことが重要だ。「ギャップ」はエモーショナルにブランドや商品を好きでいてくれるファンが多い。そうではないブランドは機能性だけを打ち出して勝負をするのかもしれないが、われわれは機能性とエモーショナルであることのバランスをとって伝えていきたい。

WWD:コロナ禍でデジタルでの表現の重要性が増している。

コリン:われわれには日本全国に約5000人の販売員がいるが、4~5月に実店舗を休業していた期間中、各販売員がSNSを通して自分たちの声でブランドを伝えてくれた。グローバルなキャンペーンと、こうしたローカルな活動とをつなげていきたいし、既にコロナ禍で一定の成果が出ている。日本のお客さまの中には、「『ギャップ』は自分のスタイルには合わない。だから店舗にも行かない」という人が多いかもしれないが、SNSでスタイリングを発信していけば、「ギャップ」にはそういう方にも合うスタイルがあると知っていただける。“モダン・アメリカン・オプティミスティック”は今までもこれからも変わらない「ギャップ」のキャラクターだが、日本のお客さまにより親しみやすいスタイリングでそれを表現したい。日本の販売員の着こなしをSNSで目にすれば、自分のスタイルにも合う服があると知ってもらえるはずだ。

WWD:今回のキャンペーンはコロナ禍を受けて計画したのか。

コリン:私のキャリアの中でギャップで働くのは今回で2度目。2019年11月にギャップに再入社し、20年1月から日本に住んでいる。その時から、今秋からこうした変革を行おうと思って計画してきた。ギャップジャパンで働く多くの人が「やっと改革ができる」と歓迎してくれたし、われわれが出店する日本のデベロッパーからも賛同を得ている。「ギャップ」が変わっていくことを広く伝えていきいからこそ、こうしてメディアのインタビューも受けている。お客さまには是非店にきてほしいし、オンラインも見てほしい。改めて「ギャップ」を知っていただけば、いかに日本の皆さんに沿ったブランドであるかが分かっていただけるはずだ。

WWD:そもそも、なぜ長年改革ができなかったのか。

コリン:いい質問だ。好調だった時はそういった変革の必要性はなかったし、この10年で考えても競合状況も世の中のプロモーション手法もかなり変わっている。そうした変化に、やっとわれわれは追い付いたのではないか。これから学ぶことは多い。日本市場にそったやり方に変えていくことで、かつての顧客にも戻ってきてほしいし、新しい顧客も獲得したい。ブランド自体の認知度は非常に高く、日本の90%の消費者が「ギャップ」を知っていると調査で出ている。しかしその人たちはお客さまではない。彼らをいかに取り込んでいくかが重要だ。

WWD:ECのあり方はどう変えて行くのか。

コリン:ECを強化していくために、将来的に新しいプラットフォームも考えていきたい。日本はアジアの一部であり、中国はデジタルコマースが非常に進んでいるので、中国の事例から学び、店舗に来ずともブランドを経験してもらえるようにしていく。たとえば中国のECモールの「Tモール」では、静止画ではなく動画やライブでの商品訴求が主になっている。デジタルも実店舗も、常にアップデートして今に追い付いていくことが私達のめざすところだ。

WWD:実店舗のあり方についてはどうか。

コリン:どこに店を持つかが変わっていく。コロナ禍で人が都心に外出しなくなっている。たとえば二子玉川に住んでいたら、わざわざ都心に出る必要はない。消費者が住み、活動しているところにわれわれも存在していなければならない。6カ月前とは実店舗でもECでも買い方は全く変わっている。休業期間を含むこの数カ月間で、「ギャップ」をECで初めて買ったという人は大幅に増えた。食料品さえオンラインで買うようになり、ECの利便性に多くの人が気付いたはず。消費行動が変わっているなら、当然実店舗のあるべき場所や役割は変わってくる。一方で、ブランドスピリットを表現できる都心の旗艦店も諦める気はない。デジタルでも実店舗でも、また、実店舗で立地に関わらず、どこでも一貫性のある接客を提供し、お客さまには心地よい経験をしてもらいたい。

休業中、EC売り上げは非常に好調だった。いくつかの実店舗は物流拠点代わりにし、店舗からEC購入分を配送していた。現在もEC売り上げの4割を実店舗から配送している。そういった点から言っても、実店舗とECを別では考えていない。お客さまにとっては商品がどのようなルートで届こうが関係ない。消費者との接点はこの数カ月間でかなり変えている。SNSもその一つだ。(世界で初めてカフェを導入した新宿フラッグス店のように)実店舗の一部をSNS撮影のためのステーションに変えたら、実店舗がデジタルに直結し、デジタル上でブランドをどう表現していけるかを現場が考えていくようになる。今というこの移行期をできるだけ心地よく進めていきたい。

WWD:20年1月期の決算発表時点では、21年度1月期にグローバルで170店の閉鎖を発表していた。日本ではどの程度閉めるのか。

コリン:日本にはもともと「ギャップ」は約150店舗しかない。(閉店して)ECに置き換えるべきか、それともふさわしい場所に移転するべきかは、グローバルでも日本でも常に分析している。ニュースではセンセーショナルに「ギャップが大量閉店」などと報道するが、閉店ではなく移転というケースもある。お客さまに来ていただくためには、実店舗はお客さまの生活圏に近いところに出すべき。たとえば食料品なども売っているホームセンターのような施設の中で、キッズとベビーだけを扱う小型店があってもいい。全商品カテゴリーをそろえた2万平方メートルの店舗だけにしようとは思っていない。店舗数を縮小し、1店あたりを大型化するという考えではなく、市場に合わせて柔軟に取り組んでいく。

WWD:「ギャップ」はアメリカでの売り上げ比率が全売り上げの大部分を占める。アジア売り上げ(全体の7%)を、今回のキャンペーンでどれくらいまで高める考えか。

コリン:グローバルの売り上げの中で、いかに日本やアジアのシェアを高めるかという考え方はしていない。日本のファッション市場でわれわれのシェアは1%だ。それをいかに拡大するか。現在、われわれのCRM会員数は約600万人だが、日本の人口は約1億2500万人。日本市場だけでも、まだまだ無尽蔵といえるほどに新規開拓のチャンスがあるはずだ。

WWD:アメリカ本国では、日本から撤退した「オールドネイビー(OLD NAVY)」や「アスリータ(ATHLETA)」といった同じグループのブランド群が「ギャップ」に比べて好調だ。これらのブランドの日本展開の予定はあるか。

コリン:「ギャップ」の中でも、(インナーやルームウエア中心の)“ラブ バイ ギャップ(LOVE BY GAP)”など、日本でまだしっかり表現しきれていない商品がある。「ギャップ」の中でもまだまだ伝えられるものがあるので、「オールドネイビー」など他ブランドよりも、まずは「ギャップ」を強化していく。

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August 27, 2020 at 01:45PM
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