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新型コロナウイルスの感染拡大による外出制限措置により、食料品や医薬品などの配送に対する需要が急激に高まった。その結果、米国では自動運転車による「コンタクトレス」配送サービスが本格化してきた。その動きは、空にも及ぶ。無人の航空機(ドローン)で荷物を運ぶ動きも活発化し始めているのだ。商品を注文すれば、すぐさまドローンが自宅まで届けてくれる。そんな光景が、米国で当たり前になる日が近づいている。
大きな期待が寄せられつつも、規制緩和の遅れやルール作りの難航、社会受容性の未成熟などに阻まれてなかなか浮上しないドローン物流。だが、新型コロナ禍を機に米国で広がる兆しを見せている。シリコンバレーの新興企業を中心に、ドローンによるコンタクトレス配送の取り組みが盛んになっているのだ。
ドローンは目的地に向かって自律飛行し、配送できることから、人件費の観点で配送コストの削減につながる可能性が高い。1回の飛行に必要なバッテリーの電気代は微々たるものだ。配送ポイントから目的地までほぼ直線で到達するので、配送効率も高い。
世界のドローンによる輸送・物流(Transportation and Logistics)市場について、各調査会社の調査結果は、2025年におよそ2000億~3000億円と予測している。ただこれらの数字は、コロナ禍以前に推計したもので、その影響は考慮されていない。非接触でモノを運ぶという喫緊の課題を解決するため、この予測を超えて市場が大きく成長する可能性がある。
今なお、多くの新型コロナの感染者が存在し、第2、第3の感染拡大の恐れもある米国では、マスクや手袋といった防護用品や医薬品などをドローンで配送する環境づくりが急ピッチで進む。ドローンであれば、直線距離で素早く医療物資を届けられる上、人との接触の機会を減らせるという利点がある。庭やプールなど十分なオープンスペースが確保できる米国の家庭に向く配送手段である。
ドローンを利用した医療物資の物流分野で先頭を走るのが、米カリフォルニア州のシリコンバレーに本社を構える2014年創業のスタートアップのジップライン(Zipline)だ。同社はこれまで、アフリカのガーナやルワンダで、輸血用血液パックなど緊急性が高い医療物資をドローンでオンデマンドに配送してきた。2020年5月時点で、累計で4万回ほどのフライトを実施し、総飛行距離は180万マイルを超えた。配送した医療物資は延べ11万個超に上るという。この実績を武器に、米国でも同種のドローン配送を2020年5月から始めた。
700近い医療施設などを運営する非営利団体の米Novant Healthと共同で実施している。ノースカロライナ州シャーロットで働く医療従事者に対して防護用品のほか、急を要する医薬品をドローンで配送する。今後、新型コロナの感染者に用いる新たな試験キットや治験薬、ワクチンが登場すれば、それらも配送する予定だ。もともとジップラインは、2020年秋をめどに米国で配送サービスを開始する予定だった。コロナ禍を機に、それを前倒しした格好である。
Novant Healthとの取り組みは、ノースカロライナ州運輸省(NCDOT)が手掛けるドローンの試験プログラム(IPP:Integration Pilot Program)の一環として位置付けられている。新型コロナの感染拡大に対応するために、米連邦航空局(FAA)がNovant Healthに対してドローン物流を認可した。これに基づいて、ジップラインがドローンによる物流業務を担う。
ノースカロライナ州カナポリスにあるNovant Healthの配送センターに隣接した場所にドローンの物流拠点を設ける。まずは、ノースカロライナ州ハンタースヴィルにあるNovant Health Huntersville Medical Centerに向けた配送から始める。往復で約20~30マイル(約32km~48km)の距離を飛行するという。
FAAから認可を受け次第、順次配送エリアを広げていく予定だ。数十kmにも及ぶ長い距離をドローンで飛行して荷物を運搬する許可をFAAから得たのは、ジップラインが初だという。ジップラインのドローンであれば往復100マイル(約161km)の飛行が可能なので、FAAからほかのルートを飛行する認可を得られれば、配送範囲をNovant Healthが運営する医療施設のうち、30カ所以上まで広げられるという。
今回のような緊急措置的な運営から始めるが、今後2年間でFAAから認可をもらい、通常の商業運営に移行したい考え。商業化の際は、医療施設だけでなく、患者の自宅に直接運送することも視野に入れている。
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June 02, 2020 at 03:00AM
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