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ホテルマンから農家、居酒屋からスーパーの店員… 従業員シェア拡大中 安全対策が課題 - 東京新聞

 新型コロナウイルスの流行を機に営業の自粛・縮小で社員の働く場が減っている企業と、逆に忙しくなった企業との間で、従業員をシェアリング(共有)する取り組みが広がっている。送り出す側は社員の当面の働き口を確保できるため雇用を維持しやすく、受け入れる側は人手不足を解消できる利点がある。ただ、労働者を保護する責任の所在があいまいになりかねない問題点もある。 (生島章弘)

スーパーで商品の陳列をする居酒屋店員の大瀬成美さん=東京都大田区で(松崎浩一撮影)

スーパーで商品の陳列をする居酒屋店員の大瀬成美さん=東京都大田区で(松崎浩一撮影)

 「いらっしゃいませ」。東京都大田区のスーパー「まいばすけっと西蒲田五丁目店」に大瀬成美さん(24)の声が響いた。居酒屋「塚田農場」などを展開するエー・ピーカンパニーの正社員だが、勤務先の店舗が休業になり、会社の紹介で四月下旬からアルバイトとして働き始めた。

 エー社は正社員らをスーパーなど十三社に送り出す。社員は休業の扱いで、エー社から平均賃金の六割分の休業手当を受け取り、減収分をアルバイト代などで補う。大瀬さんは「最初は迷惑をかけるのでは、と心配したが、働けて良かった。マニュアル化の徹底など学ぶことも多い」と話す。

農家に雇用され、キャベツ畑に肥料を散布する成田裕紀さん=群馬県嬬恋村で(嬬恋キャベツ振興事業協同組合提供)

農家に雇用され、キャベツ畑に肥料を散布する成田裕紀さん=群馬県嬬恋村で(嬬恋キャベツ振興事業協同組合提供)

 群馬県嬬恋(つまごい)村のキャベツ農家では、新型コロナの影響で中国などからの二百人を超える外国人技能実習生が入国できず、生産組合の仲介で、代わりに周辺のホテルマンや自動車工場の期間従業員らを雇っている。地元ホテルのレストランで接客を担当していた成田裕紀さん(45)は本業を十月まで休み、週五日の農作業で収入を補う。「農業は初めてだが、群馬の特産品づくりにも携われ、良い勉強になる」と語る。

 従業員シェアは飲食チェーンのワタミがスーパー運営のロピア(川崎市)に正社員を出向させたり、デリバリーの出前館が仕事が減った飲食店員らをアルバイトで雇ったりするなど拡大中だ。営業自粛は全国で緩和方向だが、観光業や飲食店の稼働は低迷しており、今後も続きそうだ。

◆パワハラ、残業リスク懸念も

 ただ、働く側からすると不慣れな仕事に従事させられる場合もあり、けがや事故のリスクは大きくなる。全国労働組合総連合の伊藤圭一常任幹事は「準備期間が短ければ事故に遭う確率も高くなる」として、安全管理と社員への指導徹底が不可欠とみる。

 受け入れ先の企業が、パワハラや残業がまん延するブラック企業ということもあり得る。労働問題に詳しい弁護士らは、会社の就業規則できちんとしたルールを作ることが望ましいと指摘。日本総研の山田久氏も「企業が待遇や事故時の対応などを十分説明した上で、社員の理解を得ることが欠かせない」と強調した。

<従業員シェアリング> 人手が過剰になった産業と不足する産業の間で一定期間に限って従業員を貸し借りし、雇用維持と人材確保を両立する仕組み。出向や副業などの形態があり、働く人は両方の会社と労働契約を結ぶケースが多い。野村総合研究所の李智慧(り・ちえ)氏によると、2月に中国のIT大手アリババ傘下のスーパーがカラオケ店や飲食店の従業員を受け入れ、パソコン製造のレノボなども追随したのが始まり。米国や欧州でも同様の動きが広がっている。

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June 23, 2020 at 05:53AM
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