オーストラリア西岸、シャーク湾のハンドウイルカは、貝殻を使って上手に魚を狩ることがある。
イルカはこの手法を、親からでなく、同世代の仲間から学んでいるらしいことが最新の研究で明らかになった。同世代における技術の伝達は、これまで人間と類人猿でしか確認されておらず、イルカでは初めて。論文は6月25日付の学術誌「Current Biology」に発表された。
研究者らが注目したのは、彼らが「シェリング(shelling)」と呼ぶ狩りの手法。イルカはまず、海底に落ちている大きな巻貝の殻に魚を追い込む。次にこの貝殻を海面まで持ち上げ、鼻で揺らして流れ落ちる魚を捕まえる。(参考記事:「【動画】驚き! イルカが魚を空に蹴り上げて捕食」)
イルカの場合、狩りの方法を教えるのは通常、母親だ。例えば、シャーク湾の母イルカは、子に「スポンジング(sponging)」という別の道具の使い方を教える。岩場で餌を探し回る際に、口先にカイメンを付けて保護する方法だ。
「シェリングが母子間ではなく、仲間内で伝わるという発見は画期的です。縦のつながりと横のつながりの双方から採食行動を学習するという意味で、霊長類との類似性を浮き彫りにしています」と、論文の共著者であるスイス、チューリッヒ大学の人類学者マイケル・クリューツェン氏はプレス発表で述べた。
イルカと類人猿では、進化の歴史や生息地が大きく異なる。だが、どちらも長生きで大きな脳を持つ哺乳類であり、イノベーションや文化を生み出す能力があると、同氏は言う。
米フランクリン・マーシャル大学の心理学者で、シャーク湾のイルカとタンザニアのチンパンジーを研究してきたマギー・スタントン氏も同意する。タンザニアのあるチンパンジーの家族は、アリを引っ張り出すための道具の使い方を、群れに加わったメスから学んだ可能性があるという。(参考記事:「【動画】チンパンジーがカメを叩き割る、初の観察」)
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