850棟の建物が壊れ、およそ1万6000人が避難した平成12年の北海道・有珠山の噴火から31日で20年です。ふもとの壮瞥町では噴火時刻に合わせてサイレンが鳴らされ、防災意識を高めるよう呼びかけました。
有珠山は、20年前の平成12年3月31日に西側の山麓でマグマ水蒸気噴火が起きて噴煙が火口から3500メートルに達し、噴石や地盤の隆起などにより850棟の建物のほか道路や水道に被害が出ました。
一方、およそ1万6000人の住民は噴火の前に避難し、犠牲者はいませんでした。
ふもとの壮瞥町では、20年前の噴火時刻に合わせて31日午後1時すぎ、防災無線でサイレンが鳴らされ、改めて防災への意識を高めるよう呼びかけました。
壮瞥町の84歳の女性は「ここで暮らす以上、山と付き合わなければいけません。これからも平穏を祈るのみです」と話していました。
また、洞爺湖町にある洞爺湖温泉はふだんなら観光客でにぎわっていますが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で31日はほとんど人通りもなく、静かにこの日を迎えました。
洞爺湖温泉で旅館を経営する依田信之さん(68)は「この20年は早かったが、次の噴火に備えないといけない。当時の避難生活は決して苦しいことではなく、近所の絆が深まったと思う。これからも地域と協力して頑張りたい」と話していました。
有珠山は明治以降、20年から30年の間隔で噴火を繰り返していますが、札幌管区気象台によりますと現在は、火山活動に特段の変化はなく、噴火警戒レベルは「活火山であることに留意」を示す1となっています。
【有珠山とは】
有珠山は伊達市、洞爺湖町、壮瞥町の3つの市と町にまたがる活火山です。
ふもとには温泉街などが広がっているほか、有珠山と周辺の地域は噴火の痕跡など貴重な地形が残っているとしてユネスコの世界ジオパークに認定され、全国から多くの人が訪れます。
有珠山は、数千年の活動停止期間を経て17世紀以降に活動が活発化し、特に明治時代以降は20年から30年ほどの間隔で噴火を繰り返しています。
有珠山は山頂だけでなく山麓でも噴火が起きているため、どこで噴火するか事前に特定することは難しく防災上の課題になっています。
平成12年3月31日には西側の山麓から噴火して、噴煙が高さ3500メートルまで達し、75キロ離れた千歳市でも降灰が確認されたほか、道路や上下水道が寸断され、850棟の建物に被害が出ました。
ただ、噴火の前兆現象などの山の異変の情報を研究者や気象台、自治体が共有して対応にあたり、ふもとの住民およそ1万6000人は事前に避難し、犠牲者は1人も出ませんでした。
一方、過去の噴火では人の被害も出ていて、昭和52年から53年の噴火では山に降り積もった火山灰などが雨で流されて泥流が発生し2人が死亡、1人が行方不明となったほか、200棟近い住宅に被害が出ました。
昭和19年から20年にかけての噴火活動では、多くの噴石や火山灰が飛散して1人が死亡したほか、農作物などに大きな被害が出ました。
また、噴火に伴って流れ出した溶岩で、溶岩ドームの「昭和新山」が形成されました。
【自治会で備え進む】
洞爺湖町の泉区自治会では、有珠山の噴火のほか地震や津波などの災害に備えて平成28年4月に自主防災組織を設立しました。
自治会を28の班に分けて、世帯の家族構成や連絡先、それに1人暮らしの高齢者など避難する際に支援が必要な人を把握しています。
また、防災訓練を開いたり、「防災だより」を発行したりして、日頃から防災の意識を高める取り組みを続けています。
一方で、地域の高齢化が進み、この地区で暮らす660人あまりのうち、70歳以上の1人暮らしの高齢者が40人あまりいるということです。
洞爺湖町の泉区自治会で会長を務める山浦和好さんは「有珠山が噴火した場合は行政もパンクすると思うので、地域で協力し合わないと立ちゆかない。高齢者が高齢者を助けなければならない状況だ。これから行政と協力し、避難の体制をつくらなければならない」と話しています。
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March 31, 2020 at 04:11PM
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