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社説 大震災から9年 暮らし取り戻すまでは - 信濃毎日新聞

 東日本大震災から、きょうで9年になる。

 岩手、宮城、福島各県の被災者、原発事故で故郷を追われた避難者の生活再建は進んでいるのだろうか。インフラが復旧しつつある半面、当たり前の暮らしが戻ったとの声は伝わってこない。

 共同通信が、3県の災害公営住宅の入居者を対象にした調査結果をまとめている。経済的な困窮から家賃を滞納し、希薄な人間関係の中で孤立しがちな被災者の厳しい現状が浮かぶ。

 政府は2011〜15年度を「集中復興期間」、16〜20年度を「復興・創生期間」と位置付け、道路や鉄道、防潮堤、公共施設の整備、集落の高台移転などに30兆円超を投資してきた。

 災害公営住宅もその一つで、自宅を失った人向けに自治体が建てる。家賃は入居者の収入、部屋の広さ、立地条件で決まる。

 自宅の再建を断念した高齢者や災害で障害を負ったり、病気になったりした人が多く暮らす。月収4万円以下で1万円近い家賃の例も。長く住むと家賃が引き上げられるため、入居者は再び住まいを追われる不安を抱えている。

 建設の遅れもあって、空き室が目立つ。被災者以外の住民に入居を呼びかける自治体があり、若中年層も少ないため、自治組織が十分に機能していない。孤独死する人たちが後を絶たない。

 運用の改善が求められているのに、家賃補助の削減を視野に入れる政府は「他の災害の被災者との公平性も必要」と言う。

 公平性は大切だけれど、東北3県の生活再建を中途半端で終わらせていいことにはならない。納税者が復興財源として所得税増税を受け入れたのは、被災者が早く日常を取り戻せるよう願ってのことだ。忘れないでほしい。

 復興がハード面に偏り、被災者の生活に寄り添う視点を欠いていないか。「復興は着実に進んでいる」との安倍晋三首相の言には、表層だけを捉え、政治的成果を誇示したい思惑が透ける。

 政府は21年度以降も復興事業を続ける。時間の経過に伴い、被災者個々が抱える問題も、自治体が置かれている状況も多様化し、複雑化している。それぞれの自治体が住民の意見を聴き、10年後、20年後へとつながる施策を打たなくてはならない。

 この9年間の国、自治体、住民の取り組みと課題を丁寧に検証しておくことは、災害に見舞われる各地が復興の方向付けをする際の助けにもなるはずだ。

(3月11日)

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