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箱根駅伝スポンサーなのに着用者「ゼロ?」 どうなる厚底シューズ - 毎日新聞

箱根駅伝で選手たちが着用するシューズ=東京都千代田区で2024年1月2日、前田梨里子撮影 拡大
箱根駅伝で選手たちが着用するシューズ=東京都千代田区で2024年1月2日、前田梨里子撮影

 今回で100回目の東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)。レースに協賛するのが、ミズノだ。国内屈指の名門スポーツメーカーだが、近年すっかり定着した厚底シューズ開発では立ち遅れ、記念すべき大会で着用者「ゼロ」を危惧する声も上がる。

 反発力を高めるカーボンファイバー(炭素繊維)プレートを採用した厚底シューズが国内長距離界を席巻したのは、2020年正月のこと。シューズ競争の盟主になったのは、アメリカのナイキ社だった。関係者によると20年の箱根駅伝では80%超、翌21年には95%もの選手がナイキ社製を着用していた。国内外の他のメーカーも開発に参戦した22年以降はシェアが低下しているものの、ナイキは依然60~70%を占めている。

 「想像以上のスピードでみんな厚底を使うようになりました。それでも『やっぱり薄底じゃなきゃダメだ』という選手は少なからず残ると思っていたんです」。ミズノ陸上・ランニング課の斉藤太一課長は苦々しい表情で振り返る。

ミズノの厚底シューズを手掛ける斉藤太一さん。協賛メーカーということもあり、社内には箱根駅伝のディスプレーが特設されていた=東京都千代田区で2023年12月21日、岩壁峻撮影 拡大
ミズノの厚底シューズを手掛ける斉藤太一さん。協賛メーカーということもあり、社内には箱根駅伝のディスプレーが特設されていた=東京都千代田区で2023年12月21日、岩壁峻撮影

 ミズノの調査では、10年前の14年の箱根駅伝でミズノ社製シューズの着用率は48・3%と首位を誇った。それが「厚底元年」といわれる20年には4・3%に急減。23年の着用率は0・5%で、選手は1人にまで落ち込んだ。

 厚底シューズを履いたチーム、選手は大会記録、区間記録を塗り替えていく。「シューズによる差が生まれ、選手が厚底を『履かなくてはならない』状況になった。他社と差別化できる厚底シューズを作らないといけない」。その効果をまざまざと見せつけられ、斉藤さんは商品開発に乗り出した。約2年の歳月を経て、22年度から「ウエーブリベリオンプロ」シリーズを発表し、厚底シューズ販売に本格参入した。

 特徴はシューズ中央部分に厚みを持たせ、かかとがない構造になっていることだ。ソール(底)部分に独自の高反発材を配することで接地した際のかかとの沈み込みを抑え、ふくらはぎ周辺の筋肉への負荷を軽減することができるという。

ミズノの厚底シューズ「ウエーブリベリオンプロ2」=同社提供 拡大
ミズノの厚底シューズ「ウエーブリベリオンプロ2」=同社提供

 厚底シューズを巡っては反発力の高さに伴って接地時間が短くなり、脚全体に負担がかかるとの指摘がある。ケガ防止に取り組む指導者もいる中で、ミズノは商品開発の段階から選手側の懸念に向き合った。

 他社と差別化を図ったものの、最大の課題は選手側の信頼だ。斉藤さんは「選手に試してもらうと、反発性はすごく評価してくれる。ただ、まだ十分な実績を積んでいないため、不安を抱く選手がいるのも事実です」と打ち明ける。

 現状で、ミズノ社製の厚底シューズを履く選手は少ない。苦難を経て生み出した製品に自信をのぞかせる斉藤さんは「100回目の箱根だから着用者を増やしたいという安易な発想はまったくありません。選手に満足してもらうことが我々の使命」と話している。【岩壁峻】

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