カンサイのカイシャ ここがオモロイ!
「お前は3代目だ」。亡きおじいちゃんの言葉を守った、後継ぎの男性のお話です。家業は「女性用」専門の靴の製造。男性の入社直後、会社は経営危機に陥ります。窮地の中で始めたのは、自分が履きたいけど、職人たちは作った経験がない「男性用」の靴作りへの挑戦でした。
両手に携えたスーツケースには、自社で作った婦人靴がパンパンに詰まっていた。
取引先を開拓しようと、東京のアパレルを回っていた。2016年のことだ。
「値段はいくらですか? じゃあダメです」。20社以上当たったが、すべて断られた。
専務の上田誠一郎(35)は、焦っていた。
家業は半世紀以上続く、婦人靴専門の工場。取引先のブランド名で靴をつくる「OEM」という形で経営を続けてきた。
ところが自分が入社して半年後の15年、取引先2社のうち、ロングブーツを卸していた1社の売り上げが半減した。
家業を継ぐと決めた途端に訪れた経営危機。上田さんは、靴業界の常識を覆す逆転の発想で新たな一手を打ちます。記事後半では、初代の祖父がかかげた夢の結末も明らかになります。
当時は、アディダスやニューバランスのスニーカーが大流行。ロングブーツを履く女性が激減したのだ。
さらに翌年、取引先のもう1社が「倒産」した。家業の会社は数千万円の損失を抱え、存続の危機に陥った。
会社は1954年、祖父が創…
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