とっぷりと日が暮れ、自転車をこぐ学校からの帰り道。道端で座り込んでいる人のそばを通り過ぎた。「やばいよねえ」「うん」。女子高校生2人は自転車を止めて駆け寄った。
10月19日午後7時40分ごろ、愛媛県立今治北高校1年の日和佐芽衣さん(16)と神野心優(みゆ)さん(16)は、染色工場やアパートが立ち並ぶ今治市南日吉町1丁目の道路を自転車で下校していた。すると、道端で点滅する光に気づいた。通り過ぎる際、それは懐中電灯の光で、持った人がひざを抱えて座り込んでいるとわかった。
2人はすぐさま自転車を降りてその人の元へ。リュックを背負いバッグを持った高齢の女性が寒さで震えていた。「けがはありますか」と尋ねると、女性は「痛いところない。ちょっと立てんくなっただけ」。
2人で抱きかかえるようにして女性を立たせた。女性は靴を履いていなかった。「履いてない方が歩きやすい」と話した。
心配する2人に「暗くなったけん景色がわからんくなっただけ。もう家もわかるけん大丈夫よー」と女性。受け答えはしっかりしているが、支えがないと立っていられないようだった。自宅の場所を尋ねると「本当に近く」と答えたが、詳しく聞くと思ったより遠かった。
2人は女性の家までついていくことにした。女性の両側に立ち、腕を取り背中をさすりながら、女性に合わせた速さで歩き出した。
50メートル以上歩いたところで、女性の荷物の中身を確かめてみると、バッグの中のメガネケースに、女性の氏名、自宅の住所と電話番号が記された紙きれが入っていた。
電話すると女性の息子が出た。その数時間前に女性の姿が見えなくなり、今治署に行方不明者届を出し、自宅で警察官に説明していたところだったという。
日和佐さんは「たまたま私たちがすれ違えただけ。おばあちゃんに会えて、助けてあげられて本当によかった」と話した。
神野さんは「勇気を出して声をかけてよかったなと思う。その時は『行かないかん』と、何も考えてなかった」と振り返った。
今治署は10日、「思いやりのある行動」で女性の保護に寄与したとして、日和佐さんと神野さんに感謝状を贈った。(中川壮)
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