イタリア映画界の実力派オールスターキャストが集結した名匠ダニエーレ・ルケッティの映画『靴ひものロンド』。今回は、本作の80年代のイタリアファッションを手掛けたアカデミー賞ノミネートの世界的衣装デザイナー、マッシモ・カンティーニ・パリーニのコメントを独占入手した。
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1980年代初頭、ナポリとローマで暮らす4人家族の物語となる本作。ルケッティ監督は、前作『ワン・モア・ライフ!』に続けて衣装デザイナーにマッシモ・カンティーニ・パリーニを起用した。
マッシモは、ジョー・ライト監督『シラノ』(21)で『スペンサー ダイアナの決意』『ストーリー・マイ・ライフ/わたしの若草物語』のジャクリーヌ・デュランと共に2度目の米アカデミー賞衣装デザイン賞ノミネートを果たし、アダム・ドライバー主演×マイケル・マン監督の最新注目作『Ferrari/フェラーリ』(原題)も待機中。いま、映画業界で最注目の衣装デザイナーの1人といっても過言ではないだろう。
1971年生まれの彼は、イタリア国内外でキャリアを積み、アメリカ映画『ヴァン・ヘルシング』(04)、『ブラザーズ・グリム』(05)などの衣装部門に助手を務め、2008年以降数多くの話題作を担当。母国イタリアでは、幾度となくタッグを組む鬼才マッテオ・ガローネ監督『五日物語 -3つの王国と3人の女-』(15)でイタリアのアカデミー賞とされるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞衣装デザイン賞を初受賞。
その後『切り離せないふたり』(16・未)『Riccardo va all’inferno』(17・未)『ほんとうのピノッキオ』(19)『ミス・マルクス』(20)なで同部門を受賞、『ドッグマン』(18)でもノミネートされ、イタリア映画界では名実ともに不動のトップランナー的存在とされている。
ルケッティは、衣装のコンセプトについて特に2つの要素について、「マッシモには『身体が何を物語るかを強調するような衣装にしたい』とリクエストしました。時代は80年代ですから、現代の嗜好とは相容れないようなファッションであること。尚且つ、登場人物たちの身体の特徴的な部分を際立たせるようにしたかった。彼には時にかなり極端な選択もしてもらいました」明かす。
劇中では、袖にボリュームがあるトップスやクラシカルな花柄、ベイクドカラーのボーダーなどレトロな雰囲気が漂う80年代を象徴するようなこだわりが、さりげなくもヴァンダや子どもたちの着こなしの随所で感じることができる。
「2つ目は髪型についてです。例えば、(ヴァンダを演じた)アルバ・ロルヴァケルとラウラ・モランテは同じ人物を演じていますが、二人の髪型には大きな関係性があります。若い時には緑が生い茂る庭のようで、それがいわば美しさの一つにもなっていることが感じられる。時代が変わっても同じ髪型であることで老いを視覚的に伝えたかった。身に付ける衣装の色彩だけでなく身体全体をどういう風に変えていくか議論を重ねました」。
2人は、本当に同じ人物なのか。観客は一瞬、戸惑うかもしれない。しかし、2つの時代が交互に差し込まれる物語を追っていくうちに、80年代と現代、2人の女優がひとりを演じるダブルキャストで描かれることが自然と繋がり、この家族が過ごした空白の30年間に一体何が起こったのか想像せずにはいられない。この余白こそが、どこか軽やかで、むしろ明るさまでをも感じさせる不思議な余韻が残る映画体験をもたらしている。
『靴ひものロンド』は9月9日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国にて順次公開。
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