筆者宅の下駄箱収納の一段には、靴墨などのシューケア用品と一緒にスプレー剤が幾つもしまわれている。いずれも短期間で悪くなるではなし、一度に多量を消費するものでもないので、5年10年というスパンで代わり映えなくしまわれているままのものもある。
しかしそこに暮らす家族、特に子供たちは変化著しく、10年前は乳幼児がひしめいていたものが今では半分大人のようになってしまい、靴やら何やらの状況も激変してしまっていたりする。そう、する、するのだが、どうも親である筆者自身は、いろいろ無自覚であった。
少し前、部活用の運動靴を新調した高校生の子供が「明日から下ろすから靴にスプレーしといてくんない?」と言うので、いいよと安請け合いして件の下駄箱収納を覗いてみると、今あるスプレー缶のうち「布靴」に使えて残量のあるのは1本しかないのである。後は「スエード靴専用」のみ……。アレ? スエード靴など今、我が家の下駄箱内ではごく1~2足しかない。
布靴にも革靴にも使えていたあれらの缶はどれも大缶のはずだったが、子供たちの通学靴、上履き、運動靴、なんにせよサイズ「15」とか「16」だった時代と「24」から「27(27?!)」の今とでは靴そのものの表面積が大違いなのである! 成長とともに、自然スプレーの使用量もどんどん増えていく、道理である。でもそんな当たり前なことに、無くなってみるまで気づかなかった体たらく!
というわけで買い求めたのが「ロックタイト 超強力防水スプレー 多用途」である。選択ポイントは「超強力」と「多用途」だ。
そもそも「防水スプレー」とは何なのだろう。また似たような商品に「撥水スプレー」というものがあるが、何がどう違うのだろう。
改めてざっくり調べたところ「防水」は雨水などの水を通さない、「撥水」は水を弾く、という意味で使われている。商品として「防水」のほうはシリコン樹脂、「撥水」のほうはフッ素樹脂が多く主成分に挙げられているようだが、存外あまり厳密な意味での差異はなさそうだ。
「ロックタイト 超強力防水スプレー 多用途」において商品名では「防水」となっているが、効果としては「撥水」のほか「撥油」も謳われているあたりが「超強力」の所以であるようす。
「撥油」というのは耳慣れない言葉だが、作業靴などにスプレーしておくことで、機械油などによる汚れを防いでくれるようだ。例えば子供の上履きなどにスプレーしておけば、給食のカレーをこぼした時にすんなり染み込まず「弾いて」くれるのではないだろうか。
筆者はこれまで防水スプレーの類は、各種外履きの靴のほか、子供の上履き程度のものにのみ活用してきたのだが、テントなどのアウトドア用品の防水ニーズというのが近年高まっているらしい。また、もともと商品に備わっていた防水・撥水機能が弱まってきたレインウェアや傘の機能を後から補完したり、既存の衣類に新たに防水・防汚機能を持たせることにも使える。心強い。
例えば色の薄い生地でできた、丈の長いスラックスやスカートなどの裾や膝下などに処理しておくと、雨の跳ね上がりによる汚れや、花粉時期の舞い上がりの付着防止に役立つ。基本的にドライクリーニングが可能なものにはあまねく使用できる、「多用途」の懐の深さである。
ただ一点、くれぐれも注意しなければならないのは、防水・撥水のスプレー微粒子は呼吸し肺に入れてしまうと肺炎の原因などになりかねない危険があること。玄関内などではなく必ず屋外で、かつ自分が風上になるようにものを置いてスプレーしなければならない。また絶対に「靴を履いたまま」とか「スキーウェアを着たまま」スプレーしてはいけない。吸入のリスクが高まりすぎる。
知らず識らずのうちに筆者宅で大缶が消費されていった理由に、やはり防水スプレーは吹き付けておくとそれなりの効果を実感できる点が大きく、要は子供のスニーカーや上履きなど、新品時に処理しておくと後で洗う際にも汚れ落としが非常にラクになる。ポイントは、外周のみならず靴の中、中敷にもしっかりスプレーしておくことだ。フッ素樹脂が主成分なら通気を妨げず汚れだけがつきにくくなる。
今度の新しい缶がどれくらいのペースで消費されるかまだ読みきれないが、あのスエード靴専用缶が消費されるより前に無くなるのは火を見るより明らかなのである。
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