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尹錫悦大統領の革靴、呉世勲ソウル市長の運動靴…大統領室の水準 - 中央日報

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2022.08.14 10:49

11日、床に就く前に色々なニュースをチェックしながら1枚の写真が目に飛び込んだ。この日午後にソウル・冠岳区(クァナクク)の水害現場を訪れた行政安全部の李祥敏(イ・サンミン)長官が黒い革靴を履いている姿だった。そばで現場を案内する公務員が運動靴を履いているのとは非常に対照的だった。

そこでふと気になった。9日に冠岳区新林洞(シンリムドン)の半地下惨事現場を訪れた尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は何を履いていたのだろうか。やはりだった。しゃがんで半地下部屋の窓を通じて惨事現場を視察する尹大統領の靴は正装の黒い靴だった。本当にいぶかしかった。過去の大統領と違うからだった。みんな少なくとも運動靴は履いて現場を訪れた。盧武鉉(ノ・ムヒョン)・李明博(イ・ミョンバク)元大統領は長靴まで履き、唯一の女性だった朴槿恵(パク・クネ)元大統領もパンプス姿だった。

あえて過去の大統領まで出して比較する必要もなかった。尹大統領とともに現場を訪れた呉世勲(オ・セフン)ソウル市長の靴は登山靴だった。蛍光色の靴ひもが目についた。尹大統領より1日後の10日にソウル・上道洞(サンドドン)の半地下住宅を訪れた元熙竜(ウォン・ヒリョン)国土交通部長官もグレーの運動靴を履いていた。

単純になぜ運動靴を履かなかったかと問い詰めたいのではない。靴ひとつだけ見てもいま大統領室がどのように動いているのかあまりに明らかに見えるからだ。明け方3時まで瑞草洞(ソチョドン)の自宅で水害対応を指揮し、光化門(クァンファムン)政府ソウル庁舎の中央災害安全対策本部で集中豪雨状況点検会議を主宰した後に新林洞の現場へ向かった尹大統領の気持ちは他の大統領と変わらなかっただろう。

小学生の娘を育てながら発達障害の姉まで扶養した40代の女性が半地下の部屋に流れ込んだ水に飲まれ苦痛の中で死んでいく姿を思い起こすならば、だれが軽い気持ちで現場を訪れられるだろうか。

凄惨な心情で現場に駆けつけた尹大統領の代わりに大統領室のだれかが「運動靴を履きましょう」と大統領に言うべきだった。いまの大統領室にはそのような役割をする人がいないのか、そうでなければそんな話をする勇気のある人がいないのか、結果はすでに説明した通りだ。尹大統領に会った人たちには「本当に気さくだ」とする評価が多い。だれかがただ一言さえ言えば尹大統領は靴下のまま、あるいははだしででも被害住民たちとともにしたはずなのに、現実は違った。

一生を検察で働いた尹大統領は政治家出身者に比べ現場に対する感覚が鈍くなるほかない。いくら形式より気持ちを重視する大統領だとしても、政治新人大統領を補佐する参謀の心がけは違わなければならないが、彼らの姿が靴ひとつにそのまま表れた。自宅指揮とカードニュース議論を育てた大統領室の実力がこうした場面でも改めて確認された。尹大統領の最側近であり災害コントロールタワーである中央災害安全対策本部本部長の李祥敏長官もやはり革靴を履いていたので内閣の感覚も大統領室と別段変わらない形だ。

与党はさらに一段上を行く。11日に舎堂洞(サダンドン)の水害現場を訪れた「国民の力」議員の行動は本当に奇異だった。奉仕の舞台をどたばた劇にした「正直いうと、雨が少し降ってくれたらいいのにと思う。写真映りが良くなるように」(金成願議員)という発言はあまりにも凄惨でこれ以上言うこともない。与党のツートップ朱豪英(チュ・ホヨン)非常対策委員長と権性東(クォン・ソンドン)院内代表がかぶった緑色のセマウル帽子は金議員の発言で完全に色あせた。

セマウル運動はどのように始まったのか。1969年夏に水害現場へ向かった朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領は慶尚南道清道郡(キョンサンナムド・チョンドグン)の新道里(シンドリ)を通り過ぎながら堤防復旧作業をする住民たちを見て特別列車を止めさせた。すぐに現場に走って行った彼は、泥と汗にまみれながらも互いに力を合わせて村を復旧する住民たちを励ました。翌年4月、朴元大統領は「全国の村が新道里の村のようにしなさい」と指示し、後に新道里はセマウル運動の発源地となった。セマウル運動をめぐり「官製か否か」という議論があるが、その年の夏に汽車を止め新道里住民に駆け寄った朴元大統領の気持ちだけは真心だっただろう。「国民の力」ツートップのセマウル帽子を見て真正性を感じたという人が何人いるだろうか。セマウル帽子の歴史的いきさつとそこに込められた真心の重さ、そして金成願(キム・ソンウォン)議員の的外れな発言が極端な対比効果を生むだけだ。

だれかはこのように話すだろう。「気持ちが重要だろう、革靴か運動靴か、また言葉の何が重要なのか」と。だが政治の基本は共感で、共感は行動として表出される。葬儀と結婚式の身なりを別にするのは共感に向けた基本だ。そのような最小限の共感能力なくして政治は不可能だ。当面の問題解決が難しいならばまず最小限の共感能力と真正性から育てる必要がある。大統領室と内閣、与党のいずれも。

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