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装備をそろえよう(上) 登山靴、ザック、雨具選びのコツ教えます - 朝日新聞デジタル

近藤幸夫の山歩き部

 安全に、山登りやハイキングを始めるには、装備が必要となります。今回は、高尾山などの低山から北アルプスでも乗鞍岳などの初心者コースを目指す方を対象に、雪がない季節の装備を紹介します。長野県松本市の登山用品店「石井スポーツ松本店」に勤務する佐藤祐樹さんに聞きました。

=近藤幸夫のReライフ山歩き部の記事はこちら

 信州大山岳会OBの佐藤さんは、ヒマラヤなど海外登山の経験もある登山家です。日本山岳ガイド協会認定の山岳ガイドとして登山者を安全に導いています。このほか、国立登山研修所の講師として若手登山家らの育成にも努めています。

 こうした経験や知識から、佐藤さんは「装備として重要な『3点セット』を最初にそろえてほしい。登山靴とザック、雨具です」と話してくれました。

 この三つは、北アルプスなどの本格的な登山から日帰りのハイキングまで、重要な役割があります。自分にフィットしたものを選ぶためにも、「ネット通販でなく、登山用品店で店員のアドバイスを受けて購入してほしい」と勧めています。

登山靴はふだんの靴より1センチ大きめを 余裕が大事

登山靴選び①

 登山靴は二つのタイプがあります。靴底の硬さの違いです。

 靴底が柔らかいタイプは、地面の凹凸を足裏に感じることができます。軽いため、ハイキングや1泊2日程度の山行に適しています。

 一方、北アルプスや八ケ岳などの岩場を登る場合は、硬いタイプがお薦めです。重い荷物を背負っても、硬い靴底が体重を支えてくれるため、疲れにくいという長所があります。

 靴のサイズは、日常履いている靴より1センチ大きいものを選ぶのが基本です。普段が25センチなら26センチ、25.5センチなら26.5センチです。

 登山靴は、足を保護するために厚手の靴下をはくうえ、足首を靴ひもできつく固定します。足にぴったりのサイズだと靴擦れやマメができて歩行が困難になります。そのために、ゆったりしたサイズの靴を選ぶことになります。

 足の幅は個人差があるので、いろんなメーカーから足に合った靴を選んでください。

登山靴選び②

 多くの登山用品店には、登山靴を履いて上り下りできる設備があります。靴下を履いて試したうえで、店員に相談して靴を選べば、履き心地も満足できると思います。

ザック選びは用途に応じて 2泊3泊まで30リットル

ザック

 次にザックです。

 ザックの大きさは、中に入れられる量によって「リットル」で表示されています。2泊3泊までの山小屋に泊まる登山だと、大きさは30リットルがお薦めです。ザックの中には、雨具や防寒着、食料、飲料水、携帯電話などが入ります。夏場、北アルプスの稜線(りょうせん)など水場の少ないような山を登る場合、飲料水2リットルは必要です。また、タオルや手袋など細々したものが意外とかさばります。自然を楽しむ登山やハイキングでは、生活必需品が必要なのです。

 選ぶポイントは、自分の背中のサイズに合ったものです。最近は、男性用と女性用に分かれています。女性用は腰に固定するウエストベルトが、骨盤に合わせて「ハの字」になっているほか、胸から上を固定するベルトのショルダーハーネスが胸に当たらないよう工夫されています。

ザック②

 また、背中の汗を発散させるため、背に当たる部分が編み目になっているタイプが増えています。

 ハイキングや長期の縦走登山に合わせ、サイズの違うザックを3種類購入する登山者も多いそうです。特にテント泊だと、テントや炊事用具、寝袋、テントマットなど重量だけでなく、かさばります。装備を詰めると、ザックの雨蓋(あまぶた)が自分の頭を超えるような60リットルの大きなタイプでないと、対応できません。山小屋泊でも1週間近い縦走などでは、行動食などの食料が増えるため、大きめのザックが便利です。一方、ハイキング程度で山小屋などの施設がルート上に多くある場合は、食料も水も購入できるので、小さなザックでも事足ります。

 装備は、工夫次第では、かなり減らせますが、安全登山を考えると日常生活で使うかばんやザックの中身とは変わってきます。条例で登山計画書の提出が必要な長野県のホームページでは、提出用の登山計画書に最低必要な「装備品」のチェックリストがあり、□にレ点を入れるようになっています。これを参考にするといいと思います。

雨具選びは防水性、透湿性、防風性を見極めて

雨具

 三つ目は雨具です。

 上昇気流、下降気流が発生しやすい山の天気は急変することが珍しくありません。北アルプスのような3000メートル級の高い山でも、高尾山や丹沢などの都会に近い山でも同じです。また、近年はゲリラ豪雨など局地的な天候の急変も数多く報告されています。

 長時間、雨風にさらされると低体温症の危険が出てきます。低体温症を予防する意味でも、雨具は重要です。

 素材は、雨水を通さず、汗による内部の湿気を放出し、むれにくい素材を使った「ゴアテックス」が主流です。北アルプスなどの稜線(りょうせん)は夏でも冷たい強風が吹くことがあり、ゴアテックスは風を通さない防風性の面でも優れています。

 ゴアテックスで上下をそろえると、一般的には3万円を超えます。ただ、高価な雨具を買っても、着た後の手入れを怠ると、機能を生かすことができません。機能が低下する大きな要因は、体から出た脂が内側の布地に付着することによって起こります。専用の洗剤を一緒に購入し、下山後、布地を傷めないよう手洗いをしてください。

 高尾山や丹沢などでは、北アルプスほどの強風が吹くことはあまりなく、行程も日帰りや1泊2日など短期間です。こうした山を登る場合、防水性、透湿性がある素材を使った雨具であれば十分です。価格も上下で1万円台から購入できます。

 佐藤さんは「ハイキングや低山の登山では、性能がよく、値段も手頃な雨具があります。レベルアップして北アルプスに挑戦しようと考えたとき、ゴアテックスの雨具購入を考えていいと思います」とアドバイスしています。

(山岳ジャーナリスト 近藤幸夫)

  • 近藤幸夫
  • 近藤 幸夫(こんどう・ゆきお)

    山岳ジャーナリスト

    1959年生まれ。信州大学農学部を卒業後、86年に朝日新聞社に入社。初任地の富山支局(現富山総局)で山岳取材をスタートする。大阪本社編集局運動部(現スポーツ部)に異動後、南極や北極、ヒマラヤなど海外取材を多数経験。2013年、東京本社編集局スポーツ部から長野総局に異動し、山岳専門記者として活動。山岳遭難や山小屋、ライチョウなど山を巡る話題をテーマに記事を執筆。2022年1月、フリーランスになる。日本山岳会、日本ヒマラヤ協会、日本山岳文化学会に所属。長野市在住。

  • この連載について / Reライフ山歩き部

    大自然を満喫できる山歩きは、心と体の健康に最適です。しかし、準備不足や判断を間違えると、遭難の危険性もはらんでいます。初心者が楽しく、安全に山歩きができる極意を、山岳ジャーナリストの近藤幸夫さんが紹介します。

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