
人生100年時代のキャリアとワークスタイル
コロナ禍を契機に、国内で一気に広がったテレワーク。新型コロナウイルス感染防止の観点から、在宅勤務を続けている方は今も少なくないでしょう。自宅で仕事ができるのは便利である半面、私生活との境界が曖昧でオンとオフの切り替えが難しいという側面もあります。さらに長時間労働になりがちな傾向が指摘されており、就業時間外の「つながらない権利」が世界的に注目されています。
■コロナ禍によってエスカレートする時間外メール
ある女性は、以前から上司による就業時間外のメールや電話に悩まされていました。それがコロナ禍以降、出社が減って在宅勤務が増えたことによって、さらにエスカレートしたと言います。 顔が見えないことで、業務を怠けているのではないかと疑われ、一時は常時パソコンのビデオカメラをオンにしておく話が持ち上がりました。しかし、他の社員からの反対もあって話は流れ、ホッとしたのもつかの間のこと。すぐメールの返信をしないと上司の機嫌が悪くなり、さらに就業時間外のメールも頻繁に届くため、気が休まらないと言います。 終業時刻を過ぎれば、本来はプライベートな時間です。在宅勤務だからといって、頻繁に業務連絡のメールを送信されると、大変なストレスになります。緊急な要件ならばやむを得ない場合もあるかもしれませんが、常に連絡があることを許していたら、年中無休のオフィスにいるのと同じようなもの。結果として長時間労働になってしまいます。
■「つながらない権利」とは?
「つながらない権利」(right to disconnect)とは、労働者が就業時間外に仕事のメールや電話などへの対応を拒否できる権利のことを言います。新型コロナの影響で在宅勤務が増えたことに伴い、その副作用として就業時間外のメールが問題視されるようになりました。 主要国では既に「つながらない権利」が広がっています(時間外の業務連絡切る「つながらない権利」、世界で普及 2021年9月27日配信の日経電子版)。コロナ禍以前に動き出していたのはフランスで、17年に労働法の中で、「つながらない権利」を行使するための条件を労使交渉で取り決めることなどが規定されました。イタリアでも同年に「スマートワーキング」に関する法律に関連して法整備、20年にはカナダで法制化の議論が開始されました。21年1月にはメキシコで、「つながらない権利」の尊重をテレワーク法で使用者に義務化しました。英国では21年7月、ポスト・コロナの働き方に関心が高まる中、野党・労働党が新政策「ニューディール・フォー・ワーキング・ピープル」を発表。この中で、私生活とのバランスをとれる在宅勤務を実現するために、テレワークを標準のワークスタイルとすることをうたい、つながらない権利の確立を盛り込みました。 一方、法的アプローチではなく、ドイツのように企業と労働者間での交渉を選ぶ国もあります。フォルクスワーゲンやシーメンスといった多国籍企業では、つながらない権利を保障する企業協約があります。 日本でも「つながらない権利」を求める声は、各所で出てきているものの、法制化の動きにはつながっていません。 21年3月に改訂された厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」において、以下のような注意喚起がなされていますが、強制力があるわけではありません。
テレワーク浸透、深刻化する時間外メールにNO 「つながらない権利」に注目(NIKKEI STYLE) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース
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