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「時間に正確な日本人」は変わる? 世の中の時間表現じわり変化 - 読売新聞オンライン

 [New門]は、旬のニュースを記者が解き明かすコーナーです。今回のテーマは「相対時間」。

 時計の時刻を見て行動スケジュールを決める人は多いだろう。ところが最近、私たちの身の回りでは、時間の表し方を「○時○分」ではなく、「あと○分」「○分前」とする動きがじわじわ広がっている。なぜだろうか。

 「注文した材木が約束の日時に届かない」「正月のあいさつ回りに丸2日間費やす」――。江戸末期、長崎に滞在した外国人技術者が残した日記「長崎海軍伝習所の日々」には、日本人のルーズさを嘆く言葉が並ぶ。

 理由は当時の時間感覚にあった。時間の最小単位は今の2時間分で、時間帯や季節で伸び縮みした。それも鶏の鳴き声や寺の鐘で漠然と測るしかなかった。

 「時間に正確」という日本のイメージ形成のきっかけになったのが、1872年に開業した鉄道だ。定時運行を守るため、24時間制を導入。時刻表を定め、発車5分前に駅にいない客は乗せない徹底ぶりだった。鉄道史に詳しい中村尚史・東京大教授は「鉄道は自然の時間軸で生きてきた日本人に初めて分刻みの時間を認識させた」と指摘する。

 ところが、時間の規律を日本人に植え付けた鉄道の時刻表示に変化が生まれている。JR東日本は2年前、山手線で駅ホームにある列車の発車案内表示を「○時○分」から「(列車到着は)約○分後」に変更。東京メトロ・銀座線も2018年に改め、大阪メトロは御堂筋線で今年度以降の導入を検討中だ。

 誰から見ても同じ「○時○分」を「絶対時刻」と呼ぶのに対し、「○分前」など、見る人次第で変わる時間表示は「相対時間」と呼ばれる。JR東によると、変更は乗客の要望に応えたものだ。あと何分で列車が来るのかを知りたい人が多いという。

 相対時間は日常に溶け込んでいる。テーマパークの人気アトラクションや行列のできる飲食店で見かける「ただいまの待ち時間○分」「ご案内まで○分」がそうだ。SNSやニュースサイトへの投稿も「○分前」「○時間前」「昨日」と表示される。一川誠・千葉大教授(時間学)は「利用者目線に変換された時間なので直感的でわかりやすい。時間の見通しを把握できれば、その間に他のことができる。忙しい現代人の時間管理に役立つ」と、相対時間が広がる背景を説明する。

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