これからお盆休みという人も多いだろう。この期間を利用し、スマートフォンやパソコンといったデジタル機器を使う時間を減らす「デジタルデトックス」に挑戦してはどうだろう。普段の生活に欠かせない道具だが、依存状態になると心と体の健康を害するリスクも。専門家は「上手に使えば仕事の能率も上がるが、だらだら見続けるのはやめて」と話す。 (海老名徳馬)
東京の会社員、佐藤祥子さん(45)が、デジタルデトックスに取り組み始めたのは二月。きっかけは、息子(16)が昨春の高校入学を機に、オンラインゲームや動画サイトに夢中になったことだ。コロナ禍で休校が続いたのが大きかった。
「まずは親が手本を」と自身のスマホ使用時間を調べると、平均で一日六〜七時間にも。スマホ依存の危険性を広める一般社団法人日本デジタルデトックス協会の講座やイベントに出て勉強した。食卓に機器を置かない、眠る直前まで使うのはやめる、買い物や散歩の時は置いていく−などを息子と決め、段階的に「デジタル断ち」を進めた。
五カ月が過ぎ、スマホの使用は一日一〜二時間に激減。息子も外に出る機会が増え、依存していたゲームを断つと決めたという。「肩凝りや不眠が解消できた」と佐藤さん。互いにスマホを見ながらだった息子との会話は「目が合うようになり、しゃべる機会が増えた」と喜ぶ。
「デジタル機器の使いすぎは、心身両方に悪影響を与える」と、脳の働きに詳しいおくむらメモリークリニック(岐阜県岐南町)の医師、奥村歩さん(59)は警鐘を鳴らす。「もの忘れ外来」が中心の同クリニックでは、「漢字や人の名前を思い出せない」などと訴える三十〜四十代の患者が増えているという。
近年の研究で、脳を健康に保つには、情報を出し入れしない時間、いわば「ぼんやりする時間」が大切と分かってきた。その間に、脳は入ってきた情報を、大事に取っておくもの、捨ててもいいものなどに分類、整理する。だが、寝る前やトイレなどの時間までデジタル機器を使って情報が入り続けると「脳はごみ屋敷のような状態になる」。
心身の状態を制御する脳が疲れると、うっかりミスや物忘れが増えて仕事や家事の能率が下がるほか、めまいや胃もたれといった体調不良も起こりやすい。情緒が安定しないなど精神的な影響が出ることもある。
デジタル機器を使って簡単に入手できる情報を、奥村さんは飲酒や間食に例える。入ってくる瞬間は、脳内にドーパミンなどの快楽物質が分泌される。だが、酒や菓子と同様、だらだら取り続けると体に悪い。「何を脳に入れるか、吟味することが大事」。その上で「まずは一日五分でいい。デジタル機器から離れてぼんやりする時間を」と呼び掛ける。皿洗いや散歩、靴磨きなど単純でリズムのある動きは「ぼんやりモード」に入りやすい。
同協会理事の森下彰大さん(29)は「デジタル機器は悪くない。道具に使われるのではなく、主体的に使えるようにするのが目標」と強調する。簡単にできる習慣を毎日続けることが、成功の鍵と言う。「寝室やトイレなど、機器を持ち込まない場所を家の中で決めることが第一歩」と提案する。
ツイッターやフェイスブックなど会員制交流サイト(SNS)をよく使う人は「それぞれ一日十分」などと時間を決めたい。スマホからアプリを削除し、ブラウザー(閲覧ソフト)から見るようにするのも手。起動に時間がかかり、気軽に確認できない。メールなどの通知はオフに、可能なら仕事中はスマホなどを目の届かない場所に置くのも効果的だ。
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お盆休み 「デジタル断ち」のすすめ 見る時間決め、脳を元気に 「ぼんやりモード」で情報整理 - 東京新聞
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