1日の睡眠時間が6時間以下の中高年者は、後年の認知症発症リスクが高まる可能性があることが新たな研究で明らかになった。
英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に20日掲載された研究によると、50歳と60歳の人々を調査したところ、通常の睡眠時間が6時間以下の人は、睡眠時間7時間の人よりも認知症と診断される可能性が高いことがわかった。
心疾患、代謝疾患、精神疾患などの影響を除外した後でも、1日の睡眠時間が6時間以下の人が後に認知症を発症するリスクは、50歳の人で22%、60歳の人は37%高いことが示された(いずれも睡眠時間7時間の人との比較)。
欧州のある研究者グループは、英国の成人約8000人を対象とした25年間の調査データを調べ、電子カルテに記録された認知症診断との関係を割り出した。このデータの出所は、1985年に英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)で始まった英国の公務員を対象とした調査で、1985年以降4~5年おきに対象者の調査が行われている。
睡眠時間は参加者が報告するが、自己申告が正確であることを確認するため、一部の対象者は一晩中睡眠追跡装置を装着した。今回の調査結果について著者らは、睡眠不足が認知症の原因となるかどうかを確定するものではないと注意を促しつつも、より短期を対象とした他の研究同様、今回の調査結果でもやはり睡眠不足が認知症の発症に関係していることが示されていると述べた。
他の研究の中には、睡眠時間が短すぎても、また長すぎてもリスクが高まることが示されているものもあるが、今回の研究では8時間以上の睡眠と認知症の関連性は示されなかった。また、良好な睡眠の妨げになるものがあると、後年の認知症リスクが高くなるという研究結果もある。
また過去の調査研究では、肥満、収縮期血圧の高さ、うつ病など精神的疾患が、睡眠障害や認知症のリスクを高めることも示唆されている。
本研究の筆頭著者であるフランス国立保健衛生研究機構(Inserm)の疫学者、セベリーヌ・サビア氏は、「睡眠時間に認知症との因果関係があるとは言えないにしても、良好な睡眠衛生を促進することはよいことだ」との見解を示している。寝る30分前にモバイル機器の電源を切り、運動習慣を身につけることで、より眠りにつきやすくなるという。
今回の研究に参加していない、ボストンのブリガム・アンド・ウィメンズ病院の睡眠科学者レベッカ・ロビンズ氏によれば、今回の研究と他の研究との違いは、被験者を長期間にわたって観察していることだ。睡眠と認知症に関して発表された研究の多くは、20年以下の期間を対象としたものだという。
また、うつ病などの交絡因子を調整したこともこの研究の重要な特徴であり、「これにより、この研究が純粋に認知症と睡眠だけの関連性を調査したものだという信頼性が高まる」のだという。
ただし、ロビンズ博士は1つの限界も指摘している。本研究は自己申告のデータに依拠していたが、自己申告では睡眠時間を過大評価する傾向があるという点だ。だが、睡眠追跡装置を使って自己申告のデータの一部を確認することで、この影響を軽減できたという。
今回の研究調査結果を踏まえ、ロビンズ博士は、日中に自然光を浴びるようにすることを推奨している。これは概日リズム(体内時計)を環境に合わせるのに役立つからだ。また、消化活動が行われていると寝つきが悪くなるため、夕食は少なくとも就寝の1時間前までに済ませることを勧めている。
また、就寝30分~1時間前には心を静めるようなことをして、眠りのための精神状態に入ることを提案しており、「明るいブルーライトを浴びない、温かいシャワーを浴びたり風呂に入ったりする、キャンドルを灯す、瞑想をする、といったちょっとした儀式も効果がある」と述べている。
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認知症の発症リスク上昇か、6時間以下の睡眠で 調査研究 - Wall Street Journal
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