働く人が自ら出資、運営に携わる「協同労働」を実現する労働者協同組合法が4日の参院本会議で可決、成立した。これに先立ち、協同労働の働き方を実践する現場が東京都内にある。公設民営で2005年に開設した東京都の板橋区立こぶし保育園は、保育士や看護師ら職員の9割が1口5万円を出資し、「職員一人一票」の対等な運営と支え合いを重視している。協同労働の働き方は、保育の現場をどう変えているのか。(石川智規)
◆園長に「それは違う」と意見…驚きの職員会議
「初めて職員会議に出た時、驚きました。みんなが園長に『それは違う』と意見していて」。こう振り返るのは、別の幼稚園からこの春に転職した保育士の関根理紗さん(27)だ。
保育園や幼稚園では一般的に、園長がトップダウンで運営方針を決めることが多いとされる。関根さんは「この保育園では私が一番年下なのに、子どもたちの保育の仕方とかで私の意見も聞いてもらえる」と強調。「出資って何?とちょっと疑問に思ったけど、自分の意見が言えてこれだけ働きやすければ、断る理由がない」と笑顔をみせた。
◆子どもに障害…育児優先「3年だけ非正規に」
去年まで正規で働いたある女性保育士は、子どもに障害があるため「3年間だけ育児を優先したい」と申し出た。三井貴子園長(58)は「みんなが事情を抱えている。気持ち良く受け入れれば、ほかの人が何かあった時にお互いに支え合える」と応じた。
女性は今年から非正規枠となり、働ける時間に働いている。園長は3年後、事情が整えば正規職員に戻す考え。多くの会社や職場では、いったん非正規に転じた場合、正規職員に戻ることは極めてまれだ。三井園長は「みんなに生き生きと長く働いてもらいたい。一人一人のやりたい気持ちを優先している」と語る。
◆「お互いさま」でシフトを補い合う
職員数は看護師や栄養士らを含む計37人。子育てをしながら働く職員も多く、その日の朝に急きょ休む保育士らもいる。だが、三井園長は「そこはお互いさま。職場のみんなで補い合い、シフトを支えている」と話す。
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