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日本の命運と皇室はどのように関係しているのか? - ガジェット通信

日本の命運と皇室はどのように関係しているのか?

明治維新以降の国家と皇室をめぐる百五十年にわたる議論から、日本国憲法体制において初めて皇位を引き継がれた天皇陛下が、自由と民主主義を奉じる日本を根底から支えるために、いかなる戦いを繰り広げてこられたのか、どれほど全身全霊で国家の命運に関わる務めを果たされてこられたのか、知られざる皇室の戦いに、近現代史研究家の江崎道朗氏が焦点を当てる。

皆さんとともに日本国憲法を守る

昭和64年1月7日の昭和天皇の崩御に伴って、上皇陛下は神器とともに皇位を継承された。

大行(たいこう)天皇の崩御は、誠に哀痛の極みでありますが、日本国憲法及び皇室典範の定めるところにより、ここに、皇位を継承しました。

深い悲しみのうちにあって、身に負った大任を思い、心自ら粛然たるを覚えます。

顧みれば、大行天皇には、御在位六十有余年、ひたすら世界の平和と国民の幸福を祈念され、激動の時代にあって、常に国民とともに幾多の苦難を乗り越えられ、今日、我が国は国民生活の安定と繁栄を実現し、平和国家として国際社会に名誉ある地位を占めるに至りました。

ここに、皇位を継承するに当たり、大行天皇の御遺徳に深く思いをいたし、いかなるときも国民とともにあることを念願された御心を心としつつ、皆さんとともに日本国憲法を守り、これに従って責務を果たすことを誓い、国運の一層の進展と世界の平和、人類福祉の増進を切に希望してやみません。

これが1月9日、即位後朝見(ちょうけん)の儀でのお言葉全文である。

この中で「皆さんとともに日本国憲法を守り、これに従って責務を果たすことを誓い」という部分がとりわけ注目を集めた。

「日本国憲法を守る」とおっしゃっていることを以て、上皇陛下(当時の天皇陛下)を「護憲、リベラルの天皇」だと言う人は少なくない。


▲出典:首相官邸「天皇陛下の御即位に伴う式典等の実例について」

朝日新聞などが、このお言葉を引きつつ「改憲派は天皇の御意思に背いて改憲を進めるのか」という論調の記事を書き始める一方で、それに過敏に反応した保守派の一部も「今の天皇は護憲でリベラルだ」と言い、なかには「天皇は改憲の足を引っ張るような政治的発言をされては困る」と言わんばかりの論調もある。

即位後朝見の儀のお言葉の中で「日本国憲法を守り、これに従って責務を果たすことを誓」われた陛下は、その後も折に触れて「日本国憲法を守る」ことを繰り返しおっしゃっている。

平成2年11月12日の即位礼正殿(せいでん)の儀で宣明されたお言葉はこうだ。

さきに、日本国憲法及び皇室典範の定めるところによって皇位を継承しましたが、ここに「即位礼正殿の儀」を行い、即位を内外に宣明いたします。

このときに当たり、改めて、御父昭和天皇の六十余年にわたる御在位の間、いかなるときも、国民と苦楽を共にされた御心を心として、常に国民の幸福を願いつつ、日本国憲法を遵守し、日本国及び日本国民統合の象徴としてのつとめを果たすことを誓い、国民の叡智とたゆみない努力によって、我が国が一層の発展を遂げ、国際社会の友好と平和、人類の福祉と繁栄に寄与することを切に希望いたします。

それからも、お誕生日前の記者会見などで、何度も日本国憲法に触れられている。

天皇陛下は日本国憲法下で即位された天皇である。いかに不備な憲法であれ、また制定過程がいかなるものであれ、帝国憲法がそうであったように、日本国憲法も、時の内閣の全閣僚の副署と、天皇の御名御璽(ぎょめいぎょじ)によって成立した。

立憲君主として、その憲法を「守らない」とおっしゃることができるはずがない。

ここで重要なのは「日本国憲法を守る」ということとともに、何をおっしゃっているかである。

上皇陛下が語ってきた「象徴」の意味

上皇陛下が、日本国憲法に触れた御発言を追っていくと、重要な点があることに気づく。


▲参議院で天皇陛下が座られる御座所の椅子 出典:PIXTA

それは、日本国憲法第一条にある「日本国及び日本国民の象徴」ということをおっしゃっていることだ。

「象徴」についての御言及は、ただ字面だけを見たら日本国憲法の条文の引用で、それ以上のものではないように思えるかもしれない。「天皇陛下は護憲の天皇だ」という主張も、上皇陛下のこうした御発言に着目したものだ。

だが「天皇が国民統合の象徴である」という言葉で、上皇陛下が表現されているのは、日本国憲法制定時に突然新たに出てきた概念ではない。長い皇室の歴史に基づいた本来的な皇室のあり方として「象徴」という言葉を使われているのである。「今後のあるべき皇室の姿についてのお考えを」という記者の質問に対し、こう答えられている。


▲平成17年12月23日、東京都千代田区・皇居での天皇誕生日一般参賀にて 出典:ウィキメディア・コモンズ

憲法で天皇は象徴と決められたあり方は、日本の歴史に照らしても非常にふさわしい行き方と感じています。やはり昔の天皇も国民の悲しみをともに味わうように過ごされてきたわけです。象徴のあり方はそういうものではないかと感じています。
[昭和58年12月20日、50歳のお誕生日前御会見より]

政治から離れた立場で国民の苦しみに心を寄せたという過去の天皇の話は、象徴という言葉で現すのに最もふさわしいあり方ではないかと思っています。私も日本の皇室のあり方としては、そのようなものでありたいと思っています。
[昭和59年4月6日、御結婚25周年を機に]

天皇が直接、権力闘争としての「政治」に関わるのではなく、福沢諭吉の言うように「政治社外」のものとして国民の苦しみや悲しみをともにする――上皇陛下は一貫して「象徴」の意味をこう語られている。

天皇が国民の象徴であるというあり方が、理想的だと思います。天皇は政治を動かす立場にはなく、伝統的に国民と苦楽をともにするという精神的立場に立っています。

このことは、疫病の流行や飢饉に当たって、民生の安定を祈念する嵯峨天皇以来の天皇の写経の精神や、また「朕、民の父母と為りて徳覆うこと能わず。甚だ自ら痛む」という後奈良天皇の写経の奥書などによっても表されていると思います。
[「読売新聞」昭和61年5月26日朝刊、同新聞への文書回答より]

つまり上皇陛下は「国家及び国民統合の象徴」という日本国憲法条文の文言に対して、皇太子時代から繰り返し、日本の歴史と皇室の伝統に基づく解釈を打ち出して来られたのである。

※本記事は、江崎道朗:著『天皇家 百五十年の戦い』(ビジネス社:刊)より一部を抜粋編集したものです。


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