東芝がシステムLSI事業の構造改革方針を発表。連結子会社である東芝デバイス&ストレージ(TDSC)が手掛ける先端システムLSIの新規開発を中止し、システムLSI事業から撤退する。これに合わせて、TDSCの半導体事業部の約770人を対象に、人員再配置と早期退職優遇制度を実施する。
東芝は2020年9月29日、システムLSI事業の構造改革方針を発表した。連結子会社である東芝デバイス&ストレージ(TDSC)が手掛ける先端システムLSI(SoC:System on Chip)の新規開発を中止し、システムLSI事業から撤退する。これに合わせて、TDSCの半導体事業部の約770人を対象に人員再配置と早期退職優遇制度を実施する。早期退職優遇制度によって発生する費用は約118億円。これらの構造改革施策により、2021年度には150億円以上の固定費削減効果(連結税引前損益ベース)が見込まれるという。
【訂正】当初記事タイトルを「車載除くシステムLSI事業から撤退」としていましたが、実際には車載向けの「Visicontiファミリ」を含めてシステムLSI事業から撤退するため訂正しました。これと併せて本文も訂正済みです。
東芝のシステムLSI事業は、2019年度に実施したロジックLSI(先端ASIC)からの撤退と固定費削減により、2020年度における事業撤退基準となるROS(売上高利益率)5%をクリアする計画だった。しかし、2020年6月5日発表の「東芝Nextプラン進捗報告」では、さらに激化する米中貿易摩擦や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大による市場環境の変化は一過性の影響にとどまらないとして、「システムLSI事業についてもう一段踏み込んだ検討が必要になる」(同社)としていた。今回の構造改革方針はこれを受けてのものとなる。
今回の方針では、先端システムLSIの新規開発を中止し、既存製品のサポートのみを行うことを決めた。既にロジックLSIから撤退していたことも含めて、東芝はシステムLSI事業から完全に撤退することになる。なお、デンソーの車両前方監視カメラシステムなどに採用されている画像認識プロセッサ「Viscontiファミリ」についても、次世代品の開発を中止し、既存品の拡販とサポートのみを継続する方針だ。
TDSCの半導体事業部は、市場から一定の評価を得ているディスクリート半導体事業と、アナログICとマイコンの内ディスクリート半導体とのシナジー効果が高く今後も市場の拡大が期待されるモーター制御用製品群に注力する。これらの他、CCDリニアイメージセンサー事業とファンドリー事業も継続する。
先端システムLSIからの撤退に伴う人員再配置と早期退職優遇制度は、TDSC 半導体事業部のシステムデバイス事業統括部、スタッフ部門、営業部門の在籍者、TDSCの共通スタッフ、研究開発部門の一部、一部子会社の在籍者が対象となる。早期退職優遇制度については、2021年2月までの退職を前提として、通常の退職金に特別退職金を加算し、再就職支援も実施するという。
なお、早期退職優遇制度の実施に伴う費用の約118億円は、2020年8月の2020年度第1四半期決算発表における通期業績見通しに織り込み済みだとしている。
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