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接触確認アプリから「通知」が届いて分かったこと 実効性には課題も - ITmedia

 「COVID-19にさらされた可能性があります」――自身で使うスマートフォンから、こんな通知を受けるユーザーがじわりと増えている。これは、厚生労働省が提供する接触確認アプリ「COCOA」から送られてくる通知だ。新型コロナウイルスの陽性者が陽性であった情報を入力した場合、その陽性者と過去に“接触”していたキーを持つユーザーに対し、通知が送られる。1m以内で15分の接触が、その基準だ。

 実は筆者の持つ「Xperia 1 II」にも、8月28日にこの通知が届いた。より正確に言うと、自分の場合、Androidのシステムとしての通知はなぜか届いていなかったが、たまたま接触確認アプリを開いたときに、「陽性者との接触確認」の画面が表示された。その後、自宅を所管する東京都港区の保健所に相談の上、9月1日にPCR検査を受け、翌日には「陰性」であることが確認されている。ここでは、その実録とともに、接触確認アプリの意義や課題を考察していきたい。

COCOA 筆者のスマートフォンにも、接触確認アプリからの通知が届いた

ある日突然COCOAからの通知が! その流れをチェック

 時系列に整理すると、筆者が陽性登録をした人との接触から、PRC検査を受けるまでの流れは、以下の通り。

 接触確認アプリからの情報によると、どうやら筆者は、8月19日のどこかで新型コロナウイルスの陽性者と接していたようだ。後述するが、システムが正確に動いていたのであれば、場所はランチを食べていたお店ということになる。筆者と接触していた陽性者も、19日時点では発症していなかったのだろう。恐らく、その約1週間後あたりで陽性者であることを登録し、接触日から9日目にあたる8月28日に筆者の端末に通知された流れになる。

COCOACOCOA 通知を受けたのは8月28日。陽性者登録をした人とは、8月19日に接触していたようだ

 ただし実際には通知が来たのではなく、アプリを開いたところ、陽性者との接触情報が表示された。何らかのバグかもしれないが、うっかり通知をまとめて消してしまった可能性もある。いずれにしても、アプリ本体の情報まで、定期的にチェックするようにした方がいいだろう。通知を受けた筆者は、すぐにアプリの指示に従っていった。当時の筆者は健康そのもの。悲しいことに40を過ぎているため、倦怠(けんたい)感は日々感じているものの、特にひどいわけではなく、平熱でせきやのどの痛みもない。

 取りあえず、アプリ上に表示されていた「電話で症状を伝えて相談」をタップし、電話しようとしてみたが、なかなか電話がつながらない。そのため、接触確認アプリに戻って、「症状を入力して相談」をタップした。

 次の画面では症状の有無を聞かれる。上記のように、一切症状がなかったため、ここでは「症状なし」をタップした。次の画面では、心当たりを尋ねられる。この画面の答えも「いいえ」だ。家族や友人には症状がある人はいない上に、筆者は1人で仕事をしているため、取材に行かない限り、職場での接触も考えられない。

COCOACOCOA 症状の有無は、「症状なし」を選択した(写真=左)。周囲に感染した人もいなかったため、いったんは「いいえ」をタップした(写真=右)

 このように入力をしていったところ、「14日間は体調の変化に気を付けてください(原文ママ)」と表示される。つまり、検査を受けたり、隔離生活を送ったりする必要はないというわけだ。あくまで普段より注意していればよく、体調の変化があれば、そのときにあらためて連絡できる仕組みだ。接触確認アプリから通知が来るのは少々心臓に悪いが、無症状でも即隔離されて仕事や生活に支障を来すということはないので、その点は安心できる。また筆者の場合、通知されたのは9日目だったため、細心の注意を払うのは残り5日間。一般的な濃厚接触者には該当しないため、スルーしても問題はなさそうだ。

COCOA アプリの指示では、あと数日だけ、体調に気を付けていればいいとのこと

 ただし懸念もあった。新型コロナウイルス感染症には、無症状の感染者から他人に移してしまうおそれがある。筆者は共働きで、夫婦のどちらかが面倒を見られない時に、子どもを祖母に預けている。子どもの通う幼稚園が、新型コロナウイルスの対策として預かり時間や頻度を大幅に減らしているためだ(低年齢の子どもは、無症状か軽症がほとんどで、重症例や死亡例もないため、ここまで親に過剰な負荷をかける対策に意味があるのかははなはだ疑問だが、本題ではないため割愛する)。ご存じの通り、高齢者になればなるほどリスクは高く、重症化率や死亡率も高くなる。

 検査ができるようであれば、念のためしておいた方が安心かもしれない。そう思った筆者は、画面を1つ前に戻し、「以下の心当たりはありますか」の質問に、「はい」と回答した。この画面には、「上記に心当たりがない場合でも、帰国者・接触者外来等への受診を希望しますか」という質問が添えられているからだ。つまり、身近に新型コロナウイルスの陽性者や、その症状があると思われる人がいなくても、取りあえず受診は可能ということ。ここで「はい」をタップし、次の画面で都道府県を選ぶと、各地域の保健所一覧が表示される。筆者は、所管の「みなと保健所」に電話をかけてみた。

COCOA 心当たりがない場合でも、受診を希望することができる。その場合、各自治体の保健所一覧が表示されるため、スマートフォンから電話すればいい

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PCR検査はスムーズに受けられる? 保健所に確認

 保健所への電話は、3コールぐらいですぐにつながった。その上で、これまでの流れを相談してみた。説明については、アプリに表示された内容を、より詳しくした印象だ。まずは症状がないことや、接触日などを回答していった。iOSでは、通知があってもアプリ上で接触情報が表示されないバグがあるとのことだが、今回通知を受けたのがAndroidだったため、ここはスムーズだった。

 こちらの状況を把握した保健所からの回答は、次の通り。

 まず、今回のケースは「いわゆる濃厚接触に該当しない」と言われた。筆者には症状がなく、接触記録から既に9日たっているため、そのまま過ごしても問題はないそうだ。保健所いわく、接触確認アプリはBluetoothの電波で接触を記録しているため、電波の状況によっては最大で5mほど離れていても通知が来てしまうケースがあるという。あくまで距離と時間しか取っていないため、アプリの記録だけでは、厳密な意味での濃厚接触かどうかを判断できないというわけだ。

 当日の行動で心当たりがあるかどうかもたずねられたが、その日は外出しての取材もなく、自宅と事務所を往復しただけ。帰宅前に買い物はしたが、家族以外で他人と15分以上接触した可能性があるのは、そのときかランチだけということになる。厳密に1mを測距できていない以上、電車の中も確率は高そうだが、筆者の場合、ランチのお店に場所は絞り込めていた。

 実は接触確認アプリを、Xperia 1 IIだけでなく、iPhone 11にもインストールしていたからだ。ランチに出るときは身軽な方がよく、持ち運ぶのはどちらか1台になる。当日も、iPhone 11は事務所に置いたままにしておいた。iPhone側への通知はApple Watch Series 4で確認できるからだ。それ以外の場面では、トイレなどを除くと、2台同時に持ち歩いていた。

COCOA iPhoneにも接触確認アプリをインストールしていた

 試しにiPhone 11側の接触確認アプリをチェックしたところ、記録は残っていなかった。上記のバグがあるため、通知を消してしまった可能性も考え、念のため、OS側に残った接触記録を書き出し、キーの一致がないかどうかをPCのテキストエディタで検索してみたが、アプリと結果は同じ。これらを踏まえると、陽性者との接触記録がついた場所は、ランチを取ったお店の確率が高いといえる。

 ただし、その店が客でぎゅうぎゅう詰めだったかというとそうでもなく、筆者は左右が空いたカウンターに座っており、かつ店員以外との会話もしていない。いわゆる「三密」ではなく、新型コロナウイルスに感染した可能性は低そうだ。保健所への電話でも、そのことは(かなり端折って)伝えておいた。

COCOA iPhoneには、陽性者との接触は記録されていなかった。これで、場所を絞り込むことができた

 その上で、アプリから通知があったため、行政検査として、無料でPCR検査を受けることができる旨も伝えられた。同時に、陽性と判明した場合、無症状でもホテルなどに隔離されることや、その際に仕事に影響が出ないかどうかもたずねられたが、しばし思案した後に、家庭環境を説明。念のため、PCR検査を受けることを決意した。その後は、保健所が検査日の空きを確認。8月28日が金曜日だったため、土日を挟んでしまい、少し時間がかかってしまったが、営業日では翌々日となる9月1日にPCR検査を受けることにした。

 なお、PCR検査は綿棒を鼻に突っ込んで検体を取る検査ではなく、唾液検査とのこと。過去にインフルエンザの検査で痛い思いをして、文字通り涙目になっていた筆者は、綿棒だったら検査をするかどうか、かなり迷ってしまった可能性がある。唾液検査が広がっていて本当によかった……。

 アプリからの通知があったにもかかわらず、検査が受けられないと不安になる。こうした声の広がりを受け、厚生労働省は8月21日に、通知を受けた希望者全員が無料で検査を受けられるよう、各自治体に要請を出している。筆者のケースは、保健所がこの要請に従ったものとみられる。検査予約までがあまりにスムーズだったため、拍子抜けしてしまったが、ネットには真逆の声も上っている。自治体や保健所によって、対応には温度差があるのかもしれないことは付け加えておきたい。

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結果は無事に「陰性」、接触確認アプリの意義と今後の課題

 検査日当日までは、念のため自宅にこもり、外出も食料の買い出しなどの最小限に控えた。いわゆる濃厚接触に該当しないとはいえ、陽性の可能性もゼロではない。自分から広めてしまう確率をなるべく抑えるよう、検査結果が出るまでは仕事も自宅でしていた。保健所に来るときに、公共交通機関は使わないように言われていたため、それに準拠した格好だ。

 保健所までは徒歩で片道約30分。筆者は自家用車を持っていないため、ギリギリ歩ける範囲に保健所があったのはラッキーだった(かなり疲れたが)。指示通り、徒歩で保健所に向かうと、入り口に職員がいた。名前を告げると、駐輪場のような場所に仮設で作られた検査場に案内され、唾液を採取する容器を渡された。容器には短いストローが刺さっていて、くわえていると、自然に唾液が落ちる仕組み。検体の採取自体は、ものの5分で終わった。

COCOA 感染拡大を防止するため、駐輪場のような場所に検査スペースが設けられていた
COCOA PCR検査は唾液方式。ストローを加えているだけで、自然に唾液が落ちる仕組みに感心した

 翌日結果が出るまでの間は、引き続き自宅作業を継続。夕方の電話で、無事に陰性が確認できた。濃厚接触はしていない……と頭では分かっていたものの、結果が出るまでの1日半は、やはりどこかソワソワしてしまった。仕事に手がつかないというほどではないが、万が一の可能性があることは頭を離れなかった。陰性を告げられたときには、心の底からホッとしたことを覚えている。

 スムーズに検査を受けられ、このプロセスをスピーディーに回していければ、感染を抑止できるのではと感じた。検査を受けられることは、インセンティブにもなるため、筆者のような事例が広がれば、アプリのインストール数は増えていくだろう。7月末に、接触確認アプリの導入を主導した平将明内閣府副大臣を取材した際には、「ITツールの中で最も有効なものの1つ」と語っていたが、徐々にそれが機能し始めていることを実感できた。

COCOA 接触確認アプリの導入をリードした、内閣府副大臣の平将明氏

 一方で、アプリ自体にはまだまだ課題もあると感じた。上記のようにバグが解消されていないため、修正は急務といえそうだ。接触日と通知のタイムラグも、気になった。再三になるが、筆者に通知が届いたのは、接触から9日目。ウイルスにさらされてから発症まで、平均で5日前後の潜伏期間があるというが、仮に感染していたとしたら、9日目では手遅れになってしまう。

 筆者のケースで言えば、陽性登録をした陽性者が8月19日にウイルスに感染し、5日目に発症して翌日に検査を受けたとすると、その時点で既に8月24日になっている。結果が8月25日に出て、陽性登録までにさらに1日かかったとすると8月26日になる。1日、2日のズレは簡単に出てしまいそうな仕組みのため、筆者の端末に通知が届いたのが8月28日なのは納得できる。ただ、あまりにタイムラグが大きいと、本来、検査の必要がない人に、無用の心配を与えてしまうことにもなりかねない。

 接触確認アプリは、AppleとGoogleのAPIに基づき、過去14日以内の接触をチェックしているが、この期間が長すぎるのも一因ではないか。14日という日数は、潜伏期間を考慮しているとみられるが、その最長を想定している。安全側に倒した考え方ともいえるが、アプリに登録する陽性者がさらに増えたときに、本当に希望者全員にPCR検査を受けられる体制があるのか。接触日から何日目以内ならといった形で、ある程度制限をつけた方がいいような気もした。

 現時点での登録者数は600人に届いていないため、杞憂(きゆう)ではあるものの、膨大な人数になったときの体制には不安も残る。こうした点も踏まえ、総合的な方針をきちんと伝えていくのが、政府にとっての課題といえそうだ。

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