こんにちは。日本いか連合の佐野まいけるです。
「イカが好きだ」と公言していると、様々なイカ料理の情報を友人たちが教えてくれます。その中の一つで特に気になっていたのが、台湾のイカ団子。
聞くところによるとそれはもう美味しくって、そのために台湾にわざわざ行きたくなるほどだとか。イカ好きとしてこれを食べないわけにはいかないでしょう!
しかし私はイカ団子を食べるどころか台湾に行ったことすらありません。そこで、同じイカ好きである友人のよしかさんに話を聞くことに。
実はよしかさんのご両親は台湾人。よしかさん自身は日本生まれ日本育ちですが、定期的に台湾に帰省しており台湾文化に詳しいのです。
イカ団子のレシピだけでなく、台湾での食べ方やアレンジレシピのアイデア、イカのこぼれ話まで聞いてみました。
▲「日本いか連合」代表でもあるよしかさん。台湾のイカ事情にも通じている
台湾のイカ団子「花枝丸」とは
まいける:台湾にめちゃめちゃ美味しいイカ団子があるって聞いたんだけど……。
よしか:それは「花枝丸(ホァズーワン)」だね。イカのすり身で作った団子で、おかずとして食べたり、おつまみにしたり、麺の具にして食べたりもするよ。
まいける::ホァズーワンっていうんだ! 「はなえだまる」って読んじゃった。台湾ではメジャーな食べ物なの?
よしか:スーパーに冷凍の花枝丸が売っているくらい一般的だね。コンビニではレンジでチンして食べられる揚げた花枝丸も見かけるよ。台湾の家庭ではおかずを大皿に盛って出すことが多いんだけど、私のお母さんは大皿に盛られた花枝丸が食卓に出るのが子供のころ楽しみだったんだって。日本でいう鳥の唐揚げみたいな感じかな。人気のおかずだと思う。私も売ってたら絶対買うくらい好き。
▲台湾のお店に並ぶ花枝丸
花枝丸は「コウイカ」でしか作れない!?
まいける:さっそく作ってみたくなってきた! イカの団子か。スルメイカなら簡単に手に入るから、それで作ってみたらいいかな?
よしか:それはアウト!!
まいける:えー、なぜ!?
よしか:花枝丸の「花枝」ってコウイカのことなの。「丸」は団子という意味。コウイカで作らないと花枝丸にならないよ。スルメイカで作ったら魷魚丸(ヨーユィーワン)になっちゃう。
まいける:そうだったのか……。台湾にはイカを種類別に表す単語があるんだね。
よしか:他にもいろいろあるよ。こんな感じ。
花枝=コウイカ目
魷魚、柔魚、鎖管、小管=ツツイカ目
小巻、中巻=食材としてのツツイカ目
透抽、創尖槍魷=ケンサキイカ
軟絲仔、莱氏擬烏賊=アオリイカ
ここで説明しておくと、イカの分類でコウイカ目、ツツイカ目という分け方があるのです。
コウイカ目は背中にサーフボードのような石灰質の甲が入っている仲間で、コウイカやコブシメなどがこれにあたります。
▲コウイカ。コウイカ目はぽってりした形が多く、泳ぐ姿は宇宙船のよう
一方、ツツイカ目は甲の代わりに軟甲というプラスチックの板のようなものが入っている仲間で、スルメイカ、ケンサキイカ、アオリイカなどがソレ。一般の方がイメージするイカと言えばこちらの方かもしれません。
ちなみに、この甲や軟甲はイカが貝から進化したときの貝殻の名残なんですよ。
▲ツツイカ目の一種であるケンサキイカの子供。コウイカ目と比べてしゅっとしています
▲左がコウイカ目の甲、右がツツイカ目の軟甲。どちらも貝殻の名残です
台湾でもイカは身近な食べ物だった
まいける:それだけイカを表す単語があるってことは、台湾でもイカはポピュラーな食べ物なのかな?
よしか:日本と同じくらい身近な海産物だと思うよ。スーパーでもイカが売っているし、イカのスナック菓子やのしいかもあるね。切って茹でたイカを生姜醤油で食べるのも一般的。日本と違って生で食べることはないけどね。 乾いたスルメを水でもどして炒め物や煮物に使ったりもするよ。夜市の屋台でイカの唐揚げを串に刺したものを売ったりしてる。あとイカの口(龍珠)も揚げたりしてよく食べるよ。
▲台湾で売られているイカの口(龍珠、中国語でロンジュー)。揚げて食べるのが一般的だそう
日本は世界でも屈指のイカ消費大国ですが、台湾でもイカは日本と同じように食材として愛されているんですね。
どのイカがベストな代役なのか
まいける:花枝丸に話を戻すけど、花枝=コウイカってことはコウイカが手に入らないと本物は作れないってことだよね。でも日本だとコウイカって少し手に入りづらい。何とか他のイカで代用できないかな?
よしか:コウイカじゃないとダメ! ……と言いたいところだけど難しいよね。花枝丸はイカの粘りが重要だから、身が厚くて、ねっちりした食感のイカが向いていると思うよ。熟成させてねっとりした状態のアオリイカとか、身が厚いソデイカなんかはどうかな。
アオリイカはイカの王様と呼ばれる高級なイカ。身が厚くて大変美味しいのですが、こちらもコウイカと同じく手に入りづらいのです。
▲優雅に泳ぐアオリイカ。ミズイカ、シロイカなどとも呼ばれ、見た目も美しい
一方、ソデイカは体長1メートルほどになる大きなイカ。沖縄ではセーイカと呼ばれて親しまれています。
あまり馴染みがないイカと思いきや、スーパーに売っているイカステーキや刺身、回転寿司のイカは意外にこのソデイカだったりすることも多いんですよ。
▲ソデイカ。体長1m体重20kgほどになる大型種で、世界を探しても似た種がいない、いわゆる一属一種です
まいける:なるほど。ソデイカがよさそう。でもわざわざ品名に「ソデイカ」と表記しない場合も多いから、狙って買うのは難しそうだな。冷凍のカットイカは何イカかわからないことが多いけど、結構身も厚いし、これを使ってみようかな。
花枝丸風イカ団子の材料をそろえる
というわけで、よしかさんから教わった台湾の花枝丸のレシピを、日本で手に入る材料で置き換えて作ってみたいと思います。
【材料】※一皿分、10〜13個程度
- 冷凍イカ 300g
- 豚の脂身(精製ラードでも良い) 大さじ2
- 片栗粉 大さじ4
- 卵白 卵1/2個分
- 塩 小さじ1/2
- 砂糖 大さじ1
- ホワイトペッパー 小さじ1/2
よしか:豚の脂身を入れると香りがよくなるよ。チューブ入りのラードでも大丈夫。イカは本当はゲソもあると歯ごたえが増して美味しいんだけどね。
▲冷凍イカはこのようにあらかじめ一口大に切られているものが便利
冷凍イカは原材料名に「いか」としか書かれず、使われている種名がわからないことが多いです。その正体は、赤い悪魔の異名を持つ大型イカ、アメリカオオアカイカだったり、輸入物の大型のコウイカ類(ひっくるめてモンゴウイカと呼ばれる)、ムラサキイカの呼び名もあるアカイカ、先に説明したソデイカなど様々。
普段何気なく食べているイカがどの種類でどんな生態のイカなのか、想像してみるだけでも面白いですね。
▲原材料名「いか」としか書かれていないことが多く、イカ好きとしては少し悲しい
いざクッキング開始
では調理スタート。
まず、冷凍イカは半解凍くらいにしておき、その間に豚の脂身をある程度刻んでおきます。(今回は豚皮からとった脂身を使っていますが、普通はバラ肉などから切り離した脂身を使うとよいでしょう)
▲ロールイカなどを使う場合は、解凍した後ひと口大に切っておきましょう
すべての材料をフードプロセッサーに入れます。
フードプロセッサーを数秒ずつ何度も回し、ペーストの中に少しイカの粒が残る程度まで細かくします。
▲ゲソを加える場合は、この時点でみじん切りにしたものを加えて数回、回しましょう
イカ団子を茹でるための湯を用意します。この時、沸騰させないのがポイント。80度くらいになるように火加減を調整してください。
イカペーストを団子状に丸く成型していきます。これは水で濡らしたスプーン2本を使うと便利。濡らした手で成型してもOKです。
▲ゴルフボール大のまんまるな団子を作りましょう
団子をお湯に投入し、2~3分茹でます。
▲浮いてきたらOK
湯から取り出して冷ましたら、花枝丸風イカ団子が完成!
▲アルミ製のバットなどに広げておくと早く冷めます
よしか:これはまだ「素材の状態の花枝丸」に過ぎないんだ。たくさん作って、この状態で冷凍しておくと便利。これを揚げたり炒めたりして料理にして食べるのが台湾では一般的だよ。
揚げイカ団子「炸花枝丸」を作ってみる
それでは、この花枝丸風イカ団子の食べ方をご紹介していきましょう。
よしか:まずは炸花枝丸(ズァーホァズーワン)。花枝丸を素揚げしたもので、台湾で花枝丸といえば、この食べ方が人気だよ。揚げたてが最高においしい!
揚げ物用の鍋に油を180~200度くらいの温度まで温めておきます。
油にそのまま花枝丸を投入。きつね色になるまで揚げます。
茹でた段階で火は通っているので、揚げ加減は神経質にならず、色が綺麗につけばOK。
▲しゅわしゅわと揚がる音でお腹が減ります
皿に盛って完成。まん丸の形状が可愛いらしく、香ばしい香りで食欲がガンガン刺激されます。
早く熱々を食べたい!
胡椒鹽につけるとビールがじゃんじゃん進む
よしか:台湾で炸花枝丸につける調味料と言えば、胡椒鹽(フージャオイェン)一択。これだけで十分美味しいの。胡椒鹽は胡椒と塩とうまみ調味料を混ぜたものだよ。とにかくこれで食べてみて!
▲細挽きの白胡椒に、塩とうま味調味料を混ぜて作った胡椒鹽(フージャオイェン)。作り方は塩、胡椒、うま味調味料の順に7:2:1の割合で加えていく
熱々の炸花枝丸をまずは何も付けずに、ひとかじり。
こりゃうまい!!
ブリンブリンのイカの弾力が楽しく、身の甘みが感じられます。2口目は胡椒鹽の上にバウンドさせて食べると、胡椒とうま味調味料によってジャンクさが出てやみつきの味に。ビールがじゃんじゃん進みそうです。
あまりの美味しさに、この量しか作らなかったことを後悔しました。もっとたくさん作っておけばよかった……。
まいける:これは本当に美味しい! いくつでも食べられそう。噛んだ時のブリンッとした食感が最高だね。
よしか:それは成功だ! 花枝丸はそのブリンッとした食感が大事なの。ふわふわになっちゃうとダメ。冷凍イカを使って正解だったね。
本場の味を知っているよしかさんからも、お墨付きをもらうことができました。
冷凍イカの種類によっては同じような食感にならない可能性もありますが、試す価値はありますね。
▲もう少しイカの粒が残っていても良かったけれど、これでも十分に美味しいです
花枝丸はかなりアレンジが効く!
ここからは、よしかさんから教わった台湾の花枝丸の食べ方をもとに、私なりにアレンジしてみたレシピをご紹介します。
タイ風炸花枝丸
揚げた花枝丸・炸花枝丸に一工夫。調味料を変えてタイ風にしてみました。
【材料】※一皿分
- 炸花枝丸
- スイートチリソース 適量(好みで)
- パクチー 適量(好みで)
炸花枝丸にスイートチリソースをかけて、パクチーを添えるだけです。
▲色味も鮮やかな一品になりました
胡椒鹽で食べるのとは全く違った味わいです。スイートチリの甘辛味はイカに合いますね。
こういうタイ料理があると言って出されたら信じてしまうかも。パクチーの刺激的な香りで口内がリセットされて、次から次へと箸がのびます。
シンプルな炸花枝丸に飽きたら、試してみてください!
花枝丸入り春雨スープ
よしか:揚げる以外だと、台湾だと花枝丸は麺の具としても楽しまれているよ。花枝丸羹麵(ホァズーワンゲンメェン)と言って、そうめんみたいな太さの麺が入ったスープに花枝丸が入っている感じ。
まいける:スープはどんなスープなの?
よしか:スープはなんでもありだよ。鶏でもいいし鰹出汁とかもあるし、好きなのに入れたらいいんじゃないかな。
花枝丸はいわばイカの練り物ですから、汁物には合うことは間違いないでしょう。花枝丸からも出汁が出そう。
花枝丸羹麵(ホァズーワンゲンメェン)をイメージして、もっと手軽に作れる汁麺を考えてみました。 麺を別茹でするのは面倒だということで春雨で代用、スープは手軽なスープの素を使用して、セロリとごま油でアクセントをつけます。
【材料】 ※1人分
- 水 300ml
- 花枝丸 4個
- 鶏がらスープの素 大さじ1/2
- 醤油 少々
- 乾燥春雨 15g
- セロリ 適量
- 片栗粉 小さじ2
- ごま油 適量
では作り方です。
まずセロリは小口切りにしておきます。
▲台湾では料理にセロリを使うことも多いそう
鍋に水、鶏がらスープの素、花枝丸を入れて煮立たせます。味を見て醤油を足します。
▲水から花枝丸を入れることで、花枝丸の出汁を抽出します
沸騰したら春雨を入れ、春雨が柔らかくなるまで5~6分中火で煮ます。
セロリを入れ、水(レシピ外)で溶いた片栗粉を加えて1分ほど煮てとろみをつけます。
仕上げにごま油を少量回し入れて、完成。
手軽な鶏がらスープの素を使いましたが、花枝丸を入れることで味に複雑さが生まれました。薬味として入れたセロリも爽やかで、ごま油の香りが食欲をそそります。
とろみのあるスープをたっぷり吸った春雨をすすり合間にブリッと花枝丸を齧ると、遠くに台湾がぼんやり見えるような気がする……行ったことないけど。
花枝丸とアスパラの炒め物
よしか:ウチのお母さんに聞いてみたら、花枝丸を炒め物に使うのもアリかもって。台湾では家庭料理として作っている人も結構いるみたい。
まいける:中華料理でイカと野菜の炒め物ってあるよね。ああいう感じかな。
よしか:そうそう、そんな感じ。ちなみね、炒魷魚(炒めイカ)っていう単語があるんだけど、これは炒めたイカっていう意味だけじゃなくて、「クビにする」っていう意味もあるんだよ。
まいける:え! それはなんで?
よしか:昔の中国での出稼ぎの話なんだけど。出稼ぎ先へ行くときって自分の荷物は布団とかゴザくらいしか持って行かなかったんだって。で、出稼ぎ先をクビにされると宿を去るよね、そのときにゴザに荷物を入れてまとめて丸めて持って帰るんだけど、その動作が、炒めて丸っとなったイカの身に見えたことからそう呼ばれるらしい。
まいける:へぇ。そんな動作からイカを連想するくらい、昔からイカは身近な食べ物だったんだね。
ちなみに加熱したイカが丸くなるのは、イカの表皮は熱すると縮むため。縮んだ表皮が筋肉(白いところ)を引っ張るので、くるっと外側に丸まるのです。
……と、うんちくを詰め込んだところでレシピです。シンプルにアスパラガスと合わせてみました。
【材料】 ※1人分
- アスパラガス 3本
- 花枝丸 3個
- 生姜 薄切り3枚
- 胡椒 少々
- 油 大さじ1
【合わせ調味料】
- 酒 小さじ1
- 鶏がらスープの素 小さじ1/2
- 砂糖 小さじ1/2
- 醤油 小さじ1/2
- 片栗粉 小さじ 1/4
- 水 大さじ2弱
では、調理してみましょう。
アスパラは、根元部分の皮をむき、5cm程度の斜め切りにします。
生姜はみじん切りにしておきます。
花枝丸は4等分に切ります。
熱したフライパンに油を入れ、最初にアスパラを炒めます。
アスパラに半分ほど火が通ったら、生姜と花枝丸を入れます。
火を弱め、【合わせ調味料】をよく混ぜて加えて炒め合わせます。
皿に盛って、胡椒をふりかけたら完成。
これはうまい!
花枝丸の見た目がホタテみたいなので、噛んだ時の弾力に脳がバグりますが、プリモチっとした花枝丸と、アスパラのシャキッとした歯ごたえが楽しくて食べ飽きない。生姜の風味もイカと合います。
▲見た目はホタテそっくり
アスパラ以外でも、台湾ではイカは花ニラやカリフラワーなどと炒めることが多いそうなので、それらの野菜と花枝丸を合わせれば間違いないでしょう。
……と、いろいろとアレンジしてみましたが、私が一番好きなのはやっぱりシンプルに揚げただけの炸花枝丸。揚げることによって表面がカリっと香ばしくなるのが良いですね。
アッツアツの揚げたてを食べるのが最高。他にも台湾では火鍋の具として花枝丸を入れたりもするそうです。日本の鍋に入れても美味しいでしょうし、おでんの具にしても良さそうですね。
以上、台湾のイカ団子、花枝丸(ホァズーワン)をご紹介しました。フードプロセッサーさえあれば簡単に作れるので、冷凍イカを買って是非試してみてください。手作りが面倒だという方は、冷凍の花枝丸が通販で手に入りますよ。
ただ、市販のものは魚のすり身などが混ざっている場合があるので、ちょっと食感が違うかも。
私は冬になったらコウイカを釣りに行って、本物の花枝丸を自作しようとたくらんでいます。
作った人:佐野まいける
イカ・エバンジェリスト。イカを犬や猫のように愛する会社員。「日本いか連合」の一員で、イカを多方面から楽しむ同人誌「いか生活」の編集長。イカは水族館で眺めるのも、釣るのも食べるのも好きだが、解剖に最も興奮する性質。イカ解剖のライブ配信などをたまに行う。その他、歩道橋を眺めるのが好き。
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August 24, 2020 at 05:00AM
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