夏は、なぜかよく霊をみます。
怖いです。
怖いんですが、
しげしげと観察してしまいます。
髪が濡れてらっしゃるなあとか、
大きなぬいぐるみを持ってらっしゃるなあとか。
震えるぐらい怖いんですが、
それでも観察してしまうのは
コピーライターの性ともいえます。
そう、コピーライターは、
「観察魔」なんです。
コピーを書くときに
商品や企業をつぶさに観察します。
それはもう、完膚なきまでに観察します。
前回お伝えしましたが、
「惚れレンズ」を装着していると、
粒度の細かい観察ができるんですね。
徹底した観察があるからこそ、
魅力を抽出でき、
商品や企業を褒める(コピーを書く)ことができます。
では、コピーライターはどのように観察しているか?
ぼくのやり方をシェアします。
例えば、今ぼくの目の前に、
ヒノキの木材があります(入手経路不明)。
このヒノキを観察してみます。
そのときに、むやみやたらとではなく、
「観察軸」をいくつか設けておくと、
なめらかに観察ができます。
まずは「基本軸」からです。
これは、客観性が命の、フィールドワーク的観察です。
(1) 外見と(2) 中身(機能)の二方向で、
観察や調査をしていくベーシックなやり方です。
例えばマイヒノキの場合だと、こんな感じ。
(1) 「ヒノキ」(名前)、角材、長方形、年輪、亀裂
(2) ヒノキの香り、甘苦い味(今舐めた)、硬いけれど柔らかさがある触覚、意外と軽い、湿気や匂いを吸う、調湿・除湿効果、カビ予防、消臭
で、ここからがある意味本番です。
新しい横軸を刺していきます。
主役は、「主観」です。
主観的観察から、ユニークな魅力が発見されていくのです。
ぼくの場合は、
「アングル」「ポジション」「関係性」「擬音」「唯一無二」
などの観察軸を横軸にザクザク刺していきます。
例えば「アングル軸」。
文字通り、カメラアングルを変えながら対象物を観察します。
クローズアップショット、ロングショット、真俯瞰ショット。
カメラマンになった気持ちで、
「いいよ!」「可愛い!」なんて心で叫びながら
対象物をあらゆる角度から切り取るのです。
まずはぐっと寄ってみます。
ヒノキの場合、年輪がまるで炎のように見えてきます。
「木のキャンプファイアー」のようです。
こんな風に、観察記録に名前をつけていきます。
すごく引いて遠くからみると、
縁起のいい「柱」のようです。
(もともと木だったので当然ですが)。
家の柱よりは小さいけれど、茶柱よりは大きい。
仮に「中柱」と名づけておきます。
大胆に、ヒノキに新しい解釈を加えていきます。
このように、鳥の目や虫の目で対象を見るのが
「アングル軸」なのです。
ハイスピード(スロー)で見てもいいし、
コマ送りでもいい。
あらゆる目線から観察します。
つづいて「関係性軸」です。
ヒノキを色々な人やものの隣に(心の中で)置いてみて、
相対的な価値を炙り出します。
例えば専用車で移動する
政治家の隣にヒノキがあったとしたら(絶対ないけど)。
それは、激務の中での
「持ち運ぶパワースポット」かもしれません。
国会の後、車に乗り込んで、
眉間にシワを寄せながら、
「ふぅ〜」とヒノキを撫でるのでしょう。
例えば、代ゼミの教室、
それも教壇の上にヒノキがあったとしたら(絶対ないけど)。
それは東大に合格した先輩が、
勉強していた部屋からいつも見えていた
ヒノキの木を削り出して、
後輩たちに持ってきてくれた
「受験の御神木」かもしれません。
え、思っていた観察と違うって?
いいんです。
だって、スタバで窓越しにする人間観察も、
勝手気ままに相手の生活とか習慣を
妄想するじゃないですか。
観察はクリエーティブな作業なんです。
だって、観察が退屈だったら、
いい魅力は引き出せないですよね。
観察魔とは、観察で遊ぶ人のことです。
いかにワクワクしながら、
客観と主観、ファクトと妄想を混ぜていくか。
観察は爆発なんです。
ここで、「関係性軸」をもとに
書かれたであろうコピーを紹介します。
ケーキを買って帰る人の歩き方は、
やさしい。
(函館洋菓子 スナッフルス)
こちらはケーキ屋さんのコピーです。
ケーキと、家族にケーキを買って帰るお父さん、
という関係性を観察する中で
生まれたのでしょう。隠れた名コピーです。
はたまたこちら。
その玉露にふさわしい茶器は、
ワイングラスです。
(西武)
こちらは、お茶と茶器の関係性を
観察しなおしたのでしょう。
観察する中で、茶器の種類を、
ぐるぐると変えていった。
その中で、ワイングラスというモチーフが浮かんだ瞬間、
「これだ!」と思ったのかもしれない。
二つとも、観察が効いたいいコピーです。
観察という名の実験が、
結果を大きく左右することがわかりますよね。
こんな要領で、
次々と横軸を刺しながら観察をします。
すると、あっという間に、
観察表が成長していきます。
ここまで大体30個ほどの、
「褒めの種」を見つけ出せました。
よくコピーライターは、
「コピー100本書いてきて」
と依頼(無茶振り)されるわけですが、
それは微妙に語尾だけ違うコピーを
大量に書くことではなく、
観察を通じて「100個の切り口」をさがしだし、
それぞれに1本ずつコピーを書いていくことだと
ぼくは思っています。
あと、この観察作業は、
褒めるにあたっての「言葉の採取」をしているんですね。
だからこの表は、
「褒め言葉の標本」でもあるわけです。
これだけ言葉のコレクションがあると、
コピーを書くときのアシストになります。
で、ぼくは、この観察作業が大好きなんです。
何故なら、ぼくの観察は、
誰からも咎められないからです。
とやかく言われる筋合いはありません。
あなたの観察において、裁量権は100%あなたにあります。
そして、あなたらしい観察こそが、
新しい発見を呼び込むのです。
うっかり、コピーライターにおける観察の作法について
紙幅を割きすぎてしまいましたが、
もうお分かりでしょうか。
そう、相手を褒めるときにも、
この「観察魔」になることが大事なのです。
基本軸や関係性軸、
自分が観察しやすい軸をどんどん刺して、
相手を研究するつもりで観察します。
すると、褒めるための材料が
ザクザク見つかります。
ちょっとやってみましょう。
最近仕事で出会った、
Oさんという方がいます。
20代半ばの男性です。
まずは「基本軸」で観察してみます。
外見は、短髪、爽やか、メガネが似合う。
中身は、情報通、何かと機敏、柔軟、でも譲れない点はちゃんと譲らない。
つづいて「擬音軸」で観察。
Oさんは、「シャキーン」とかがいいな。
「サッ」「シュー」「そそそっ」
みたいな擬音も似合うな。
そうか全部、さ行なんだな。
さ行系擬音タイプ(今勝手に考えた言葉)なんだ、
なるほどなあ、
と勝手に納得して進めていきます。
さらに、「関係性軸」です。
例えば渋谷でおばあちゃんが道に迷っていたら、
Oさんは、「サッとノールックで助けそう」
という印象です。
ここでさっき抽出した「サッ」を使いました。
観察軸同士を、掛け合わせていくのもいいですね。
このように、どんどん、
観察と妄想をマリアージュさせて
「自分なりの相手像」をつくります。
観察すればするほど、
立体的な対象物が脳内に立ち上がってきます。
ここまでくれば、もう勝ちです。
ちなみに、横串に刺す観察軸は、
なんでもいいのです。
自分が考えやすい軸(問い)を考えて、
手元に置いておくことをおすすめします。
「もしも軸」(もしも目の相手が○○だったら)とか
「メタファ軸」(相手を何かに例える)とか
「動詞軸」(目の前の相手を動きで追ってみる)とか。
なんだっていいのです。
繰り返しになりますが、
文化人類学者のような正確さが求められているのではなく、
あなたの「マイ解釈」が尊いのです。
自分で自分の観察魔になるのも、面白いです。
こういう時に頭に血がのぼるんだとか、
こういう気候のときは元気になるんだとか、
こういう言葉をかけられたら無条件に熱くなるんだとか、
自分で自分の観察魔になっておく。
そうすると、
適切に自分と距離を保ちながら、
フェアに自分のことを認めてあげられます。
褒めレンズを装着して、
観察魔になったなら、
もうホメ出しの準備は9割整ったといっていいでしょう。
次回は褒めるにあたっての
「発見」の仕方についてお話しします。
また来週!
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