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食費を抑え、食を豊かに。塩、酢、油――、「漬ける」という工夫【#コロナとどう暮らす】(松浦達也) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース

新型コロナウイルスを経験したことによって、私たちの暮らしは今後どのように変化するのでしょうか。Yahoo!ニュースの「みんなの意見」を参考に、「外出自粛期間中は、家計消費に占める食費の割合(エンゲル係数)が増加した」という声について、私なりの見解を述べたいと思います。

さて新型コロナ禍の一連の報道のなかで、象徴的な風景として取り上げられた場所のひとつがスーパーマーケットでした。食品売場では、インスタントラーメンやパスタが蒸発するかのごとく棚から消え去りました。店内の行列は、距離を空けることに慣れていないせいか、ちょっとしたギクシャク感がそこかしこにありました。

そんな外出自粛期間中の食費について、Yahoo!ニュースで「外出自粛期間中、あなたの食費は増えましたか? 減りましたか?」という意見を募った結果は、過半数となる53.6%が「増えた」、25.3%が「変わらなかった」、21%が「減った」という回答に。この結果を聞いて、僕は「えっ?」と声を上げてしまいました。

本来、外食と内食にかかる費用を単純に比較すれば外食のほうが高くつくはず。なのに、外出自粛期間に「食費が増えた」と回答した人が5割超。一方で「減った」と答えた人は2割程度にとどまっています。この結果について、不思議な印象がぬぐえませんでした。

しかし考えてみると、今回の新型コロナ禍において、時限的に食費が膨らむ要因はいくつかありました。

1.2月、3月の買いだめ 

2.同時期の学校給食や社食の休止

3.近隣の飲食店や生産者支援買い

いずれも家計におけるエンゲル係数上昇に一役買う要素です。

1.については、非常時には備蓄を手厚くしたくなる心理がどうしても働きます。一時期は乾麺やコメなど保存のきくものだけでなく、生鮮食品までも棚から消えたのには、東日本大震災並か、当時以上に社会の動揺を感じました。

2.は、給食なら公費負担、社食は企業の福利厚生というサポートがあります。加えて、大量仕入れ、大量調理、絞り込まれたメニューというスケールメリットも働きます。同じ内容のメニューを同じ予算で作るのは難しいので、この分の食費が増えるのは仕方がありません。

3.の視点は実は重要です。実は2月以降、肉、魚、野菜などあらゆる食材がダブつき、普段はホテルなどの大口も含めた飲食店に流れる生産物が行き先を失いました。

当たり前の話ですが、生産者がいなければ、食べ物はわれわれの口に食べ物は入りません。支援買いのおかげで、廃業に追い込まれずに済んだ生産者もいるはずです。

もし廃業に追い込まれる生産者が一定数以上いれば、日常の食品の価格は上がってしまいます。われわれ一般消費者が(サイフの事情が許す限り)、生産物を買い支えることは自分たちの食卓の安心・安全の確保にもつながっているのです。

さて、いったんは落ち着きを取り戻したかのように見える日常ですが、いつ第二波が本格的に襲い来るかは誰にもわかりません。だからこそ、スーパーがいまのように平静を保っているうちに、1.食費を抑えながら、2.備蓄を確保し、3.日常の食事を楽しむ。そのための工夫に慣れておくことを熱烈におすすめします。

STEP 1 ローリングストック(数か月単位での備蓄)

まず現在、食品を保存している場所を冷蔵・冷凍庫や、食品の保管庫の状況はいかがでしょうか。買いだめしていた人も冷蔵庫や野菜室は日常で使用するので平時に近くなってきているかもしれませんが、冷凍庫はパンパン。常温の保存庫もパンパンという人も多いでしょう。

冷凍庫保存でも消費と補充は欠かせない

なので、まずは冷凍庫の凍った肉や、食糧庫に保存されている缶詰、パスタなどから先に使ってしまいましょう。鮮度のいい食品と、冷凍された食品があるとつい「冷凍のものはいつでも食べられるから、鮮度のいいもの優先で」となりがちですが、現代の家庭用冷凍庫は「霜取り」機能がついており、定期的に常温近くにまで温度を上げられています。

そうした温度変化を繰り返すうちに食品に含まれる水分が気化し、カサカサに乾燥するなど激しく劣化してしまうことも……。家庭用の冷凍庫は「月単位の食品の保存には向かない」と心得て、食材はこまめに使いながら補充していくようにしましょう。

また、常温の食糧保管庫の食品は、乾麺を中心に古い順からローテーションしていきましょう。特に封を切った乾麺は虫がつきやすく、密閉できる保存容器に入れてなるべく早く使い切りたいところ。缶詰は少し賞味期限を過ぎたくらいでは心配することもありません。

まずは保存期間の長い、食糧保管庫(常温)と冷凍庫の食品から始めれば、「週末のみ自炊」という方でも食材の使い回しのコツがなんとなくつかめてくるはずです。

STEP 2 保存食(塩蔵、酢漬け、オイル漬け)

そして安売りなどでつい大量に買い込んでしまう方や、比較的家で料理をされる方は冷蔵庫のなかでの使い回しの基本を覚えておきましょう。いわゆる「常備菜」というものですが、「レシピを覚えるのが面倒……」などと気に病む必要はありません。「塩」「酢」「油」で漬ければたいていのものはなんとかなります。

塩、酢、油を使った食材保存の組み合わせ例(画像制作:Yahoo! JAPAN)
塩、酢、油を使った食材保存の組み合わせ例(画像制作:Yahoo! JAPAN)

基本の塩蔵

塩を使った保存食の代表例・ハム(※料理画像は全て筆者撮影によるもの)
塩を使った保存食の代表例・ハム(※料理画像は全て筆者撮影によるもの)

洋の東西を問わず、塩は万能の保存料です。目安は素材重量の1%。小さじ1杯(5ml)=6gと覚えておけば万全です。すぐ食べるなら塩は少し少なめ、数日後まで保存したければ少し多め、など加減をしていきましょう。

◎野菜(きゅうり、キャベツ、にんじん、大根、カブなど)

薄切りや千切りなどにしてビニール袋に入れ、1%の塩を振ってもみ込む。

※ポイント おぼろ昆布や、唐辛子など辛味のある和スパイスを加えるか、山椒、レモンや柚子の皮など柑橘の香りをプラスしてもいい。

◎肉(鶏むね、鶏もも、豚ブロック(脂身の多すぎないもの。肩ロースやもも肉がおすすめ))

塩を刷り込んだ鶏をゆでた塩鶏(筆者撮影)
塩を刷り込んだ鶏をゆでた塩鶏(筆者撮影)

肉はブロックのまま、表面の水分を拭き取り、重量の1%の塩をすり込む。ラップでぴっちり包み、約1日冷蔵庫で寝かせる(豚は3日くらい寝かせてもいい)。小さめの鍋に肉が全部浸かる程度の湯を沸かしたら、火を最弱火にして肉を投入。10分後にフタをして火を止め、常温になるまで冷ます。保管は茹で汁ごと冷蔵庫で。

※ポイント 肉を入れたら、湯は沸騰させないこと。

基本の酢漬け

思い切って酢に漬けて保存し、調味は卓上で塩や醤油などで調整する手も(筆者撮影)
思い切って酢に漬けて保存し、調味は卓上で塩や醤油などで調整する手も(筆者撮影)

酢は基本的な調味料のなかで、唯一過剰摂取を心配せずに済む(むしろ推奨)調味料で日持ちもします。そしてちょっといい醸造酢を使うと、料理の味が劇的に変わります。サイズは一升となりますが、「白菊」(ミツカン)などはプロの鮨店でも使うほどおいしい上に、リーズナブルでおすすめ。1.8リットルでだいたい600円弱なので、じゃぶじゃぶ使えます。

◎野菜(きゅうり、キャベツ、にんじん、大根、カブなど)

きゅうり、キャベツは乱切りでもOK。にんじん、だいこん、カブは薄切りか細切りにしてすし酢と醸造酢を1:1で合わせたものと一緒にビニール袋か保存容器へ。半日から楽しめます。

※ポイント 好みでクミンやマスタードシードなどのスパイスと一緒に漬けるのもいい。塩蔵の野菜を作っておけば、醸造酢だけでOK。洋風のおかずと合わせるなら、仕上げにオリーブオイルを回しかけるのもおいしい。

基本のオイル漬け

魚のほか、足の早い鶏肉などにも向いている(筆者撮影)
魚のほか、足の早い鶏肉などにも向いている(筆者撮影)

◎魚(生ダラ、生鮭など)

魚は食べやすい大きさにカットして重量の1%の塩をすり込み、オリーブオイルか太白ごま油に漬ける。調理はフライパンでソテーがラクちん。漬け込み直後に調理してもいいし、3日くらいは日持ちします。

※ポイント 漬け込むときにタイムなど好みのハーブや、スパイス(黒胡椒や実山椒など)、にんにくなどを加えてもOK。上記で作った塩鶏や塩豚のほか、魚の干物などを加熱後に漬け込んでもいい。

「常備菜」「作り置き」といっても細かいレシピを覚える必要はありません。基本は「1%の塩」にバリエーションとして「油」か「酢」を合わせて、好みのスパイス&ハーブとともに漬けるだけ。このほか、ぬか漬けも肉、魚、野菜などをおいしく保存してくれます。

「漬け」て数日程度の短期保存や「冷凍」で数週間が目安の中期保存だけでも十分です。生きることと食べることが不可分である以上、あるものをいかしきる、無駄なく使うことこそが、冒頭の質問にもあったような食費の押さえ込み、そして豊かな暮らしにつながっていくのではないでしょうか。

※記事をお読みになって、さらに知りたいことや専門家に聞いてみたいことなどがあれば、ぜひ下のFacebookコメント欄にお寄せください。次の記事作成のヒントにさせていただきます。

また、Yahoo!ニュースでは「私たちはコロナとどう暮らす」をテーマに、皆さんの声をヒントに記事を作成した特集ページを公開しています。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

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