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食品ロス削減から考える「食費軽減」 給食や飲食店再開の今こそ考えたい工夫とは【#コロナとどう暮らす】(井出留美) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース

コロナ禍を経て暮らしは今後どのように変化するのでしょうか。Yahoo!ニュース「みんなの意見」の「外出自粛期間中は家計消費に占める食費の割合が増加した」という声について、見解を述べたいと思います。

保存食購入増加が「食費増」の一因?

外出自粛期間以降、日本の各家庭においては、日持ちする食品が購入される傾向が強まりました。グランドデザイン株式会社が5月上旬にインターネット上で行った調査によると、全回答者5345人のうち53.6%が、保存食などを意識的に買うようになったと答えています。

こうした傾向がみられるのは日本だけではありません。アメリカでも備蓄できる食材の売り上げが好調です。大麦ミルクは前年度の3倍売れ、缶詰や瓶詰、冷凍食品などの売り上げが上昇(2020年6月5日、公益社団法人日本マーケティング協会・株式会社ネクストアイ共同開催セミナー「”Pandemic”を超えて 人類がかつて経験した事の無い、未曾有の事態を乗り越えた時“世界は変わる”」より)。アメリカ冷凍食品研究所(AFFI)の調査によると、2020年3月以降、アメリカの消費者の86%が冷凍食品を購入しています。

これまでたいして備蓄をしていなかった家庭でも、外出自粛中に買い物に行ける頻度や人数を減らすよう呼びかけられたことで、保存性のよいもの、賞味期限の長いものを買いだめするという傾向が強まった結果でしょう。となれば、食費の割合も必然的に増えてしまいます。

冷蔵庫は奥が見えるくらい、入れる量は全体の7割ぐらいにおさめると管理しやすい(写真:PantherMedia/アフロイメージマート)
冷蔵庫は奥が見えるくらい、入れる量は全体の7割ぐらいにおさめると管理しやすい(写真:PantherMedia/アフロイメージマート)

子どもの在宅増やテイクアウト・持ち帰り増で食費が増えた家庭も

休校措置を受けた学校に通うお子さんのいる家庭では、普段は学校給食にまかせておけばよかった昼食を家で作ることになり、その分だけ食費が増えたという声もありました。

家庭内調理以外の食費として、外食に関しては個人差が大きく、冒頭の「みんなの意見」のアンケートでは「昼や夜に外食しなくなったので食費が減った」と答えている人もいれば、「デリバリーが美味しくて、ついつい頼む回数が増え(食費が増えた)」と答えている人もいます。

学校が再開し、休業要請が緩和されていく中で、今後は給食や外食の機会も増えていくと考えられます。他方で、自宅での食事が減れば、保存食への注意も薄れがちです。外出自粛期間以降に買った保存食も、購入量が多すぎたなどの理由から賞味期限が来てしまえば、それは食品ロスになってしまいます。

保存食を捨てることなく消費していけば、食費軽減にもつながります。では、保存食の管理のためにどんな工夫ができるのでしょうか。

保存食を循環させる「ローリングストック法」

保存食は、すぐに必要とされない時も管理に気を配ることが大切です。

2011年の東日本大震災以降、「ローリングストック法」という備蓄方法が注目されてきました。これは、「普段から使っている食料品を、ちょっとずつ使っては買い足していく」という備蓄方法です。備蓄された食料品は、災害時用の非常袋に入れっぱなしになっていると、普段それを開けることが少ないせいもあり、いつのまにか消費期限が切れて食べられなくなってしまいがちです。それを防ぐためにも活用したいのが、ローリングストック法です。

たとえばレトルトご飯とレトルトカレーを常備しておいて、大雨などで買い物にいけないとき、夕飯をカレーライスにし、使った分だけ次の買い物の時に買い足すというやり方です。こうすることで、備蓄食品を捨てることなく、定期的に「買っては使い切り」、循環させていくことができます。

ローリングストック法のイメージ。ちょっとずつ使っては買い足していく備蓄方法(画像制作:Yahoo!ニュース)
ローリングストック法のイメージ。ちょっとずつ使っては買い足していく備蓄方法(画像制作:Yahoo!ニュース)

食品ロス削減の工夫が食費軽減にもつながる

保存食を継続的にローリングストック法で管理する上で、おすすめの保存食を紹介します。管理を工夫すれば家庭における食品ロスの削減になり、そして食費軽減にもつながります。

保存食のオススメその1 缶詰

缶詰は、賞味期限が3年間あります。しかも、これは缶自体の品質保持期限が3年だからであり、真空調理のおかげで理論的には半永久的に大丈夫なのです。実際、10年、20年経った缶詰を開けても菌が検出されなかったというデータは複数あります。魚や豆類の缶詰は、災害時に不足しやすいタンパク質が補給できますし、果物の缶詰は食料が限られた時に不足するビタミン類を摂ることができます。

パンの缶詰は3年ほど日持ちするだけでなく、いつ開けてもふわふわなので、乾パンに比べ、咀嚼力がない高齢者や幼児でも食べやすいという利点もあります。

缶詰はどれも3年間の賞味期限だが、真空調理してあるので理論的には半永久的に持つ食材だ(写真:アフロ)
缶詰はどれも3年間の賞味期限だが、真空調理してあるので理論的には半永久的に持つ食材だ(写真:アフロ)

保存食のオススメその2 乾麺

乾麺、中でもパスタは賞味期限が2~3年単位と長いです。パスタソースとしてレトルトのものを買っておけば、それだけで一食分になります。乾麺のうどんや蕎麦、そうめんの賞味期限はパスタよりは短いですが、それでもいざというときの主食になるでしょう。

保存食のオススメその3 米やパックご飯

キロ単位で売っている米には、精米年月日のみが表示されています。1ヶ月以上経つとスーパーの棚から撤去されてしまうこともありますが、1合単位でパックされている米などは賞味期限が6ヶ月から1年と設定されています。筆者は、精米した米を、2リットルのペットボトルの空容器に移し、冷蔵庫の野菜室で保管しています。夏場でも虫がたからず、計量にも便利です。

また、一人暮らしでご飯を炊くのが面倒という人を中心に、最近人気なのがパックご飯。災害時に備えたアルファ(化)米は、水やお湯を注ぐだけでできるので、万一停電になった場合も調理できます。

上記で紹介した食料品はどれも保存性が高く、すぐに品質が劣化することはありません。これらを世帯人数にあわせて適量購入し、ローリングストック法で在庫をまわしていけば、食品ロスになることはありません。ぜひ、少しずつでも試していってほしいと思います。

家庭の食品ロスで多い野菜類  買いすぎに注意

では、保存食以外の食料品はどうでしょうか。

ハウス食品グループが2019年7月に自社会員サイト登録者6357人を対象に行った調査によれば、最も捨てられている食材として68.1%の回答者が挙げたのは野菜類でした。「最近捨ててしまった食材ランキング」では、きゅうりやキャベツ、レタスなどが上位に入りました。

野菜類が捨てられる傾向は農水省が2014年度に行った調査結果とも一致しており、コロナ禍でもこうした野菜類が食品ロスになっている可能性があります。食費軽減にも役立つ、家庭の食品ロス削減のヒントを考えてみましょう。

野菜類ロス削減のヒントその1 買う量を減らす

そもそも買い過ぎてしまっているという人が多いようです。キャベツやレタス丸ごと使い切れないなら1/2、1/4売りや、じゃがいも1個、にんじん1本売りも活用しましょう。

日本では袋入りでまとめて売られることも多いが、使う量や回数が少なければ1個売り・ばら売りも活用したい(写真:アフロ)
日本では袋入りでまとめて売られることも多いが、使う量や回数が少なければ1個売り・ばら売りも活用したい(写真:アフロ)

野菜類ロス削減のヒントその2 長持ちする保存方法を使う

古新聞やキッチンペーパーを使ってくるんだり、市販の野菜保存袋を使ったりしておくと、何もしない場合より保存期間が延びます。

野菜類ロス削減のヒントその3 カット野菜や冷凍野菜もうまく活用する

特に一人暮らしの場合、筑前煮などの煮物の材料を全部揃えていると多過ぎる、使い切れないという場合もあるでしょう。その場合、市販のセット野菜を使ってもいいですし、冷凍の筑前煮セットを使ってもいいと思います。仕事やほかのことで疲れて余裕がない時は、カット野菜を活用するのもいいでしょう。

コロナ禍で家庭の食品ロス減少傾向 「withコロナ」でも継続を

食費が増えれば食品ロスも増えそうな印象ですが、各国の調査では、むしろ家庭で捨てられる食品の量が減少したと感じる人も一部にいます。

先述のグランドデザイン株式会社の調査によれば、緊急事態宣言前に比べて過程で食べ物を捨てる量が「とても減った」「やや減った」と答えた人は、全体の2割に上りました。7割以上の人が「変わらない」と答えてはいますが、注目すべき変化です。またイギリス・

WRAPの調査によれば、同国では主要4品目(パン・牛乳・じゃがいも・鶏肉)で食品ロス34%減少。8週間のロックダウンが実施されたフランスでは、33%が「食品の廃棄を減らし」ており、通常の生活に戻ったとしても「食べ物の無駄使いを減らす」と答えています。

「食費増」良い側面も? 改めて「食」考える機会に

コロナ禍で「食」に改めて関心が向けられていることも大切な変化です。

外出自粛やロックダウンで時間に余裕ができ、新たにパン作りや菓子作りをする人が増えました。これに伴い、小麦粉の消費は日本だけでなく米国・欧州でも増えており、世界の小麦粉売り上げは、パンデミック期間中に238%になりました(2020年6月5日、公益社団法人日本マーケティング協会・株式会社ネクストアイ共同開催セミナー「”Pandemic”を超えて 人類がかつて経験した事の無い、未曾有の事態を乗り越えた時“世界は変わる”」より)。

調査会社は「家でパンやお菓子を焼くことがストレス解消になっている」としています。臨床心理学者のマリー・マクノートン・カシル博士によると、菓子作りに使うバニラやスパイスの香りは気持ちを落ち着かせてくれる効果があり、菓子作りやパン作りにあるリズムやパターンに親近感を感じて心地よくなれるそうです。そうだとすれば、仮に食費が増えたとしても、肯定的なこととしてとらえられるのではないでしょうか。

新型コロナウイルス感染症により、世界で41万8,392人もの方が亡くなりました(2020年6月12日現在、ジョン・ホプキンス大学データより)。パンデミックにより大切な命が失われたことは、多くの人の心に痛みを残しました。これが消えることはありません。

しかしその中で、あえて前向きな変化を見出すとすれば、多くの人が食への関心を高めたことではないでしょうか。食べ物に関心を持ち、生産者への敬意を持ち、食事を楽しむ。そのことこそ、食品ロス削減につながる大きな意識改革でもあるのです。今後も、この食への関心を持ち続けることが、継続的な食品ロスの削減、そして各家庭での食費軽減にもつながるはずです。

生活の「食」を取り巻く環境が変化している今だからこそ、これからの私たちの「食」について改めて考える機会にしてはいかがでしょうか。

※記事をお読みになって、さらに知りたいことや専門家に聞いてみたいことなどがあれば、ぜひ下のFacebookコメント欄にお寄せください。次の記事作成のヒントにさせていただきます。

また、Yahoo!ニュースでは「私たちはコロナとどう暮らす」をテーマに、皆さんの声をヒントに記事を作成した特集ページを公開しています。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

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