e-Sportsという言葉をよく耳にするようになりました。こちらの記事でご紹介しているように、最近はシニア層にまでe-Sportsが広がりを見せているようです。e-Sportsと聞くと、若い選手が目にも止まらぬ操作や驚くべき反射神経でバリバリ活躍してるイメージがありますが、実際のところシニア層はe-Sportsをどのように見ているのでしょうか。筆者の身近にいる来月で80歳を迎える男性(以下、Aさん)に訊いてみました。
Aさんは昔からのゲーマーですが、e-Sportsについてはほとんど知らないとのこと。そこで今回のインタビューに先立ち、e-Sports大会の動画を3種類観てもらいました(カッコ内は使用されたゲーム名)。
- ぷよぷよチャンピオンシップ(『ぷよぷよテトリス』)
- ストリートファイターリーグ(『ストリートファイターV』)
- スプラトゥーン甲子園(『スプラトゥーン2』)
観てもらうゲームは、ルールの覚えやすさと見た目のわかりやすさを優先し、筆者の独断と偏見で選びました。Aさんには事前に各ゲームの基本的なルールを説明し、動画を観ながら簡単な解説をしています。
e-Sportsを観る前の印象
――いつ頃からゲームをプレイしていますか?
Aさんもう30年以上前になります。PC-8801というパソコン向けに光栄(現コーエーテクモゲームス)から発売されていた初代『三國志』が最初ですね。それ以前にも本に載っていたゲームのプログラムを打ち込んでプレイしたことがあります。そちらは作る方が面白く、遊ぶのは二の次でした。
――普段はどんなゲームをプレイしていますか?
Aさんコーエーテクモゲームスの『三國志』『信長の野望』『蒼き狼と白き牝鹿』シリーズや、Paradoxの『Europa Universalis IV』といった歴史シミュレーションゲームをプレイしています。基本無料のブラウザゲームも遊んでいます。
――以前からe-Sportsという言葉は知っていましたか?
Aさん実際に観たことはありませんでしたが、e-Sportsという言葉は知っていました。オリンピックの種目にしようとする運動があることも聞いていました。
――これまでe-Sportsにどのような印象を持っていましたか?
Aさん良くないことだと思っていました。ゲームで大金が稼げるようになると、親が幼い子供にゲームの英才教育を施すようになります。楽しんでゲームをするのが悪いことだとは思いませんが、英才教育としてゲームを詰め込むのは問題があります。
――どんな問題があると思いますか?
Aさんゲームは育ち盛りの脳の発達に悪影響を与えるという説を聞きました。普通の親はゲームのしすぎを注意しますが、英才教育をする親はそれをしません。子供のゲームに歯止めがかからなくなります。
e-Sportsを観た後の印象
――実際にe-Sportsの試合を観てどう思いましたか?
Aさんゲームの種類によっては観て楽しめることがわかりました。ゲームをする過程を観て楽しめるかどうかが重要で、中には結果にしか関心が持てないものもありました。
――今回観た中ではどのゲームが楽しめましたか?
Aさん『ストリートファイターV』の試合は観ていてわかりやすかったですね。技までは把握できませんでしたが、あらかじめ予習していればもっと楽しめたでしょう。逆に、『スプラトゥーン2』の試合はわかりにくかったです。理解できたのは色が広がっていくところだけで、どのように技を使ったのかがわからず、プレイヤーの姿が見えてきませんでした。
――プレイヤーの姿とはどういう意味ですか?
Aさん8人いるプレイヤーがそれぞれ今なにをしているのかが見えてこないのです。サッカーの試合なら1チーム11人でフィールドには合計22人の選手がいますが、それでも観ていれば試合のおおよその動きはわかります。『スプラトゥーン2』の試合ではそれが見えませんでした。
――それはなぜだと思いますか?
Aさんサッカーのボールは一つしかないので、ボールの動きを見ていれば選手全員の動きがつかめます。『スプラトゥーン2』の試合は、色の塗り具合で全体の流れはつかめましたが、誰がなにをしているのかがまったくわかりませんでした。ゲーム自体は面白そうですが、自分でプレイするときの面白さと観ているときの面白さは違います。
――『ぷよぷよテトリス』の試合はどうでしたか?
Aさんゲームが理解できれば観ていて面白いと思います。ただ、技がまだ飲み込めていないので、どうして一瞬で逆転するのかがよくわかりませんでした。また、観る側の反射神経が追いつかず、どんな技が使われたのかを把握しきれませんでした。自分でプレイするにも反射神経が必要ですが、観戦するにも反射神経が必要なゲームですね。結果はわかりますが、その過程が楽しめない。そういう意味ではシニア向けとは言えないでしょう。
シニア向けのe-Sportsとは
――どんなe-Sportsならシニアにもわかりやすいと思いますか?
Aさんシニアは反射神経が落ちているので、それを考慮したものが良いですね。展開のスピードを遅くしても、ゲームとしての面白さが損なわれないもの。普通のスポーツで言えば、野球です。試合のテンポはゆっくりですが、プレイしている選手は機敏に動き回っています。e-Sportsにもそのようなものがあって良いのではないでしょうか。
――ゲームのテンポがゆっくりなものですか?
Aさんプレイヤーが反射神経を駆使していても、画面はゆっくり流れるようなものですね。例えば、『ぷよぷよテトリス』の試合を録画しておき、速度を半分にして再生するだけでも構いません。プレイヤーは高速でプレイしていますが、観客はゆっくり観戦することができます。
――自分でもe-Sportsに挑戦してみたいと思いますか?
Aさん今回観た3種類のゲームを実際にプレイするのは難しいと思います。観て楽しむことはできますが、プレイするには反射神経が追いつきません。
――どんなe-Sportsならプレイできますか?
Aさんゲームの勝敗の重点を反射神経やスピードに置くのではなく、駆け引きやテクニックに置いたものですね。
――今回選んだゲームにはいずれも駆け引きやテクニックの要素がありますが?
Aさんそれでも反射神経で劣っていれば絶対に勝てないでしょう。リアルタイムのゲームでも時間がゆっくり流れていれば、それ以外の要素で勝つことができます。重要なのは重点の置き方です。反射神経よりもそれ以外の要素を重視したゲームならば、シニアでも若者と対等に勝負できます。
――本日は貴重なお時間を割いていただきありがとうございました。
あくまでAさん一個人の感想ですが、シニアの視点からe-Sportsがどのように見えているのかを垣間見ることができたのではないでしょうか。どうやらシニア層にe-Sportsを普及させるためには、ゲームを作る側と見せる側に工夫が必要なようです。
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June 28, 2020 at 10:00AM
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シニア層が考えるe-Sports―サッカーのように選手全体の動きがつかめ、野球のようにテンポのゆっくりした試合が観たい - インサイド
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