今年四月、広島地検に出向いた自民党の広島県議は任意聴取の終わり際、東京地検特捜部の検事から笑顔でこう言われたという。
「あなたの説明は正しかった。行動履歴と一致していましたよ」
県議はこの一カ月前、自身のスマートフォンを検察に任意提出。数回にわたった聴取では、前法相の河井克行容疑者(57)=衆院広島3区=から現金を受け取った場所や日時を聴かれ、覚えているままに答えた。
検事が県議の説明を「正しい」と言い切ったのは、スマホの解析で得た衛星利用測位システム(GPS)情報と一致していたから。そのことを検事から明かされた県議は「丸裸にされている」と驚いたという。
克行前法相と妻で参院議員の案里容疑者(46)の自宅から押収したパソコン内の「現金配布リスト」を基に、百人以上の地元議員らから事情聴取を重ねてきた検察当局。ある幹部は当時、「夫妻が容疑を認めるとは考えにくい。仮に現金配布は認めたとしても、買収の趣旨は否定するだろう。受け取った側の証言をいかに積み上げられるかが、捜査のカギだ」と語っていた。
大規模な一斉聴取も終盤となった四月下旬、複数回事情を聴かれていた地元議員らの間では、こんな話題で持ち切りだった。
「『きょうで聴取は終わりです』って言われたら最後に動画を撮られるけん」
検察が任意聴取の仕上げに使った取り調べの録音・録画のことだった。
ある議員は四回目の聴取の途中で、検事に「これから動画を撮ります」と告げられた。「こう聴きますので、こう答えてくださいね」とリハーサルをした後で撮影が始まり、「票の取りまとめの依頼と認識した上で現金を受け取りましたね」「検察官に圧力をかけられていませんね」と聞かれた。いずれも「はい、そうです」と答えた。
議員の胸は疑問や怒りであふれている。「現金を受け取ったという弱みを握られているので、『逮捕されるのでは』と不安にかられ応じた。ありのままの言葉を撮ってほしかった」
二〇一〇年の大阪地検特捜部の証拠改ざん事件で、国民の信頼を失った検察。克行前法相の逮捕は「法相経験者で初」「閣僚経験者では十八年ぶり」と大きく報じられたが、ある若手検事は「定年延長や賭けマージャン問題は、いまだ尾を引いている。信頼を取り戻すには、浮かれずに目の前の仕事をしっかりやるしかない」と気を引き締める。
買収事件は自民党本部から河井夫妻の陣営に一億五千万円の資金提供があった時期と重なる。だれが破格の支援を決めたのか。資金と事件との関連性にも国民の関心が高まる。
前法相という身内の大がかりな選挙買収事件に挑んだ検察。河井夫妻の内偵捜査の途中、政権に自前の人事案を一蹴され、黒川弘務・前東京高検検事長の定年延長を提案したのは、ほかならぬ法務省だった。
「検察人事への脱法的な政治介入」は一時的にかき消されたにすぎない。くしくも同時並行で進められた今回の政界捜査は、国民にとって政治と検察の緊張関係がいかに重要であるかを物語っている。
(この連載は、池田悌一、山田雄之、山下葉月、小野沢健太が担当しました)
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