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新型コロナ「分子地図」構築で世界の研究者が結集 - 日経ビジネス電子版

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 沖縄科学技術大学院大学教授(OIST)の北野宏明氏らは、世界の研究者と協力し合って新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の分子地図のデータベース構築を開始したと、5月初旬に科学出版大手のシュプリンガー・ネイチャー社のScientific Data誌に発表した。

 ルクセンブルク大学の研究者らの呼び掛けで3月中旬に始まったプロジェクトで、世界29カ国81機関の研究者163人が参加した。科学のコミュニティーはCOVID-19をどのように捉え、どう対応しているのか。特定非営利法人システム・バイオロジー研究機構(SBI)の代表で、ソニーコンピュータサイエンス研究所の代表取締役社長兼所長も務める北野氏に聞いた。

沖縄科学技術大学院大学教授で、ソニーコンピュータサイエンス研究所の代表取締役社長兼所長も務める北野宏明氏(写真:北山宏一)

今までにないスピードでプロジェクトを立ち上げ

ルクセンブルク大学、慶応義塾大学などの研究者と共に、COVID-19の分子地図を構築したと発表しました。どういうもので、どういう目的で作られたものでしょうか。

北野氏:今、COVID-19の発症のメカニズムなどに関する研究が世界中で進められています。ウイルスが体内に入る際、体内で増幅する際、体内から出てくる際に、体内にある生体分子との間でどのような相互作用をしているのかが研究されていますが、症状の理解やさらに創薬に役立てるにはその全貌を解明することが非常に重要です。

 さらに重症化を防ぐには、ウイルスが持っている色々なたんぱく質と、人の細胞内の分子がどのように相互作用をして症状を起こしているのかを理解する必要があります。だからまず、COVID-19に関する分子間の相互作用についての研究成果を網羅的にデータベース化して可視化しようということになったのです。

 技術的な基盤としては、我々が開発した分子間相互作用をコンピューター上でどのように記述するかに関する国際標準言語とそれに準拠したソフトウエアがありました。免疫反応のメカニズムであるとか、ウイルスのRNA(リボ核酸)が複製する仕組みなど、新型コロナが流行する前から分かっていたこともたくさんあります。

 また、10年前から科学技術振興機構(JST)の研究資金で行われた東京大学医科学研究所の河岡義裕教授が総括責任者のプロジェクトに参加させていただき、インフルエンザに感染したときに、体内でどのような分子間の相互作用が起こり、どのような創薬ターゲットがあるのかという研究を10年ほど前からやって、一連の論文も出版されています。

 そうしたデータや、それ以外にも、色々な研究者が様々な感染症で研究してきた分子間相互作用に関する知見があったので、それらに今回の新型コロナに対する知見を加えて一気にデータベースを立ち上げたのです。今後、COVID-19の研究が進み、新しい知見が追加されていくことで、相互作用の全貌が明らかになっていくと考えています。

 ただし、どの分子とどの分子が相互作用しているかが分かったからといって、すぐに薬ができるわけではありません。それでも、体内での複雑な相互作用が記述されシステマティックな創薬につなげる上では、こういうものが必要だと思います。

これぐらいの規模の国際共同研究はよく行われているのですか。

北野氏:この分野では珍しくはありません。もっと大きな規模の共同研究も行われています。ただ、今回特徴的なのは、非常に早くに多くの人が集まって集中的に立ち上げられたという点です。これだけ迅速に動いたのは、世界中の研究者がそれだけCOVID-19に危機感を抱いている現れです。

AIを使って論文DBを解析するサービスも無償で提供

COVID-19関連の論文データベースを分析するサービスを、研究者などに無償で提供されているとも聞きます。

北野氏:これは私が代表を務めているシステム・バイオロジー研究機構が、深層学習や自然言語処理など人工知能(AI)の技術を使って大規模な論文データベースを解析するサービスを製薬企業向けに有償で提供してきたものを、COVID-19に関する論文を対象に無償で提供するようにしたものです。

 論文は日々増えていて、既に数千報に達します。これら全てとそれに関係する生命科学の論文を網羅的にスキャンして知識を抽出し、関係性を可視化したり、傾向を分析したりします。これによって、例えば、分子間の相互作用や、誰と誰が一緒に研究しているとか、さらには誰がどういう分子を研究しているとかが分かるので、それを見て新しい知見を得たり共同研究の提案を行ったりできます。

 製薬企業向けのサービスでは、AIを使った予測や仮説の生成など、もう少し複雑な機能を提供しているので、検証した上でそうした機能も追加していきたいと考えています。現在、100カ所ぐらいの研究機関や製薬企業の研究者に利用されています。ヘビーユーザーからは「こんな機能が欲しい」といったリクエストもあるので、それに応じて機能強化していくつもりです。

このようなデータの共有や、国際共同研究のプロジェクトというのはCOVID-19の流行の前からあったと思いますが、今回大きく変わったと感じることはありますか。

北野氏:前からそういう流れはありましたが、今回は時間との闘いという側面がある中で、オープンデータ化やコラボレーションが一気に加速したように思います。ネットワークの作り方は大きくは変わらないのですが、いろんな国の人たちが入ってきて急速にプロジェクトが立ち上がっていきました。

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June 16, 2020 at 03:09PM
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