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「武漢市民を助けたい」 市外から飛び込んだボランティアの奔走の日々 - 東京新聞

 新型コロナウイルスの感染が最初に報告され、5万人以上が感染し、4000人近くが犠牲になった中国湖北省武漢市。1月23日に都市封鎖となり外部と遮断されて以降、市民は恐怖と苦難の日々を過ごす中、自ら志願して、外部から武漢に飛び込んだ市民ボランティアがいた。 (中国総局・坪井千隼)

◆「娘にかっこいい姿見せたい」患者の心理ケア

武漢市の仮設病院で2月20日、入院患者の心理ケアをする毛平さん(右)=毛平さん提供

武漢市の仮設病院で2月20日、入院患者の心理ケアをする毛平さん(右)=毛平さん提供

 北京市で法律事務業をしていた毛平もうへいさん(40)は2月1日から5月初めまで、武漢で、心理カウンセラーとしてボランティア活動をした。感染の危険を冒しても志願した理由は、武漢の深刻な様子を見て「助けたい」と考えたから。そしてもう1つ。8歳の娘に、「父親として、かっこいい姿を見せたかった」からだ。

 毛さんは心理学を学んだ経験があり、武漢の仮設病院で入院患者の心理ケアに当たることになった。病院では医師らと同様、防護服を着て、患者の相談にのった。電話で遠方の患者をケアすることもあった。

◆家族を亡くした患者に寄り添い

 心理ケアで重要だったのが、家族や友人を失った患者のケアだった。入院患者の中には、家族や友人を新型コロナで亡くしたケースが少なくなかった。

 「新型コロナで大切な人を失った人の心の衝撃は特に大きい」と毛さん。新型コロナは、あっという間に命を奪い去ってしまうケースが少なくない。

 最初に受け持った女性(68)は、夫を新型コロナで亡くしていた。女性は連日大声で泣いていた。仮設病院は展示場を改装し、広いフロアにベッドを並べただけの施設で、女性の泣き声は病院中に響いた。

 「泣き声が響き渡るのは、他の患者を不安にさせ、治療にもよくない」。毛さんは、繰り返し丁寧に女性の話に耳を傾けた。女性は徐々に落ち着きを取り戻し、やがて回復していった。

◆「耳を傾け、共感することが大切」

 最も印象に残っているのは、ある30代女性患者のケース。この女性は実母と夫も感染しており、実母が自宅で自殺してしまった。女性はショックで自分も自殺しようとし、精神的に不安定になり、夜眠れない状態が続いていた。

 「大切な人を失い、嘆き悲しむ人をケアするには、相手の話に耳を傾け、共感することが大切。問題点を自ら見つけて、自ら解決してもらうようにした」

◆「俺も一緒に行く」夫婦で武漢へ

河北省の自宅で5月12日、ボランティア当時のことを振り返り、「武漢の人たちに幸せになってほしい」と語る夏雪利さん(右)と、妻の王樹亜さん=坪井千隼撮影

河北省の自宅で5月12日、ボランティア当時のことを振り返り、「武漢の人たちに幸せになってほしい」と語る夏雪利さん(右)と、妻の王樹亜さん=坪井千隼撮影

 河北省邢台けいたい市の自営業雪利せつりさんと(37)と妻の看護師おう樹亜じゅあさん(37)は、3月7日に武漢に入った。

 王さんは、病気の両親の世話のために休職中だったが、両親が回復したため復職を考えていたところだった。

 「医療に携わる人間として、新型コロナとの闘いの現場に立ちたい」と看護師ボランティアに志願した。

 夏さんは妻の意思を聞き、「おまえだけを行かせるわけにはいかない。俺も一緒に行く」と即答。夫妻が武漢に行っている約1カ月の間、娘(14)と息子(12)は、夫妻の親が世話をした。

◆「1人1人がコロナと闘った英雄」

 王さんは看護師として、ホテルなどで隔離中の感染者を担当。防護服を着て連日、各部屋を回り、医薬品の配布や体温測定、PCR検査などに従事した。

 夏さんは、主に消毒ボランティアを担当。二十キロの消毒液タンクを背負い、消毒液を散布した。「エレベーターのないマンションの上り下りが特にきつかった」。作業が終わると、汗だくになったシャツが絞れるほどだった。

 「最もつらい思いをしたのは武漢の人たち。幸せになってほしいと心から思う」と王さん。「ボランティアは私たちだけじゃない。武漢で、全国で、多くの人が参加した。1人1人が、コロナと闘った英雄だと思う」と夏さんは語った。

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