軍事施設の相互査察を保障したオープンスカイ(領空開放)条約からの離脱を米国が表明したことを巡り、旧ソ連カフカス地方のジョージア(グルジア)に注目が集まっている。米国が離脱理由で「ジョージア近辺でロシアの違反行為がある」と主張したためだ。米ロの角逐の舞台となったジョージア情勢が好転する見通しはなく、米国の条約離脱の可能性は高い。 (モスクワ・小柳悠志、写真も)
南オセチア地域。ジョージア中部の山裾に位置し、少数民族オセット人が住む。ソ連崩壊直後から同じ民族が住むロシアへの編入を求め、分離独立運動を繰り広げてきた。ジョージア領にもかかわらず政府の統治が及ばない。
二〇〇八年、ロシア軍と南オセチア民兵はジョージア軍と戦って勝利。ロシアはすぐに南オセチアと同じく少数民族が住むジョージア西部アブハジア地域を独立国家として認めた。ロシアは現地に軍を駐留させ、経済も支える。
「ジョージア人にとってロシアは占領者。両国の人の行き来は多いが、外交は断絶中」と、ジョージア在住で地域事情に詳しい児島康宏さん(44)は説明する。
この二地域を独立国家とみるか、否か。これが領空開放条約の大きな火種だ。
米国によると、ロシアはこの二地域に近接するロシア領内で偵察飛行を拒否しているという。
ロシアとジョージアは領空開放条約の加盟国なので上空の偵察飛行は可能。だがロシアの理屈では、南オセチアとアブハジアは独立国で、条約にも未加盟だからその周辺は飛べない。世界のほとんどの国は、南オセチアとアブハジアの独立を認めておらず、ロシアの言い分は通らない状況だ。
「ロシアが違反を正せば条約復帰もあり得る」とのスタンスの米国。だが広瀬陽子・慶応大教授(国際関係)は「ロシアが今さら二地域の国家承認を撤回するのはあり得ない。米国もその事情を知っていて条約離脱の口実にしている」と説明する。
ロシアは「米国が指摘する違反行為はない」として反論。一方、米国の離脱は世界の安全保障を揺るがしかねないと、独仏伊など欧州各国は米国の翻意を促す声明を出したが、ジョージア外務省は「米国を支持する」とコメントしている。
米国が領空開放条約離脱を掲げたのは、新戦略兵器削減条約(新START)が来年二月に期限が切れるのを前に、交渉相手となるロシアを揺さぶるためとの見方もある。
◆NATOの東方拡大に反発
ロシアが他の旧ソ連構成国に干渉するのは理由がある。米国や西欧諸国でつくる北大西洋条約機構(NATO)が旧ソ連圏にまで拡大したことで、自国の安全保障が脅かされると考えているためだ。
ジョージアとロシアは二〇〇八年に交戦。ウクライナでは一四年から親ロ武装勢力が東部で「独立国」を名乗り、ウクライナ軍と戦いを繰り広げている。同年、ロシアもロシア系住民が多く住むクリミア半島を強制併合した。
フランスの地政学研究者パスカル・マルシャン氏は自著で、米国が東欧や旧ソ連圏を取り込もうとする過程で、ロシアが反発したことが紛争につながったと説明している。
マルシャン氏によれば米国は「ウクライナなきロシアは大国たり得ない」(政治学者の故ブレジンスキー氏)と分析、〇〇年代からウクライナやジョージアをロシア勢力下から引き離し、NATOに加盟させようと動いた。ただ両国はロシアの干渉によって紛争や独立問題を抱え、現状ではNATO加盟は困難だ。
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<領空開放条約> 条約加盟国が相互に領空の偵察飛行を認めて軍事的緊張を和らげる仕組み。構想は東西冷戦時にさかのぼり、現在は欧米や旧ソ連諸国など34カ国が加盟。ロシア紙によると、米国は宇宙衛星による偵察態勢が充実しており、条約を離脱しても他国の軍備把握に支障はない。ポンペオ米国務長官は5月21日、ジョージア近辺、クリミア半島、カリーニングラードでロシアの違反行為があったとして条約からの離脱を表明した。
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