新型コロナウイルスによる感染拡大。予断を許さないとはいえ、日々発表されるデータが少しずつ落ち着いてくるなか、行動自粛やお店への休業要請などの対策を今後、どうしていくかが話題になっています。
感染者が多いアメリカやEU諸国では、これまで日本より厳しい措置(罰則付きの行動制限など)がとられていましたが、いま各国で行動制限の緩和が図られています。
再び感染が拡大するのを防ぎながら、いかに経済活動を取り戻していくのか?日本と同じように、バランスを探る模索が続けられています。
そのひとつドイツでは、どのような段階を踏んで進めていこうとしているのでしょうか?現地に住む日本人医師からのレポートを通じて、日本へのヒントを探ります。
「行動制限」の緩和が進むドイツ・ベルリン 何が変わった?
お話を伺ったのは、ドイツのブランデンブルグ心臓センター(Brandenburg Heart Center)で働く、岡本真希さんです。岡本さんは、日本で循環器内科医として働いたのち、ドイツで医師免許(Berufserlaubnis)を取得し、活動しています。
3月22日に外出禁止措置がとられて以降、ドイツでは罰則をともなう外出の規制が行われていましたが、4月末から段階的に緩和が進められています。
※情報は日本時間5月8日のものです。以下の内容は、岡本さんのブログをもとに最新情報を加えたものです。
外出は段階的な緩和 小規模な集会は条件付きで開催可
外出は緩和されたものの、やはり「人と会うのは最低限にする」根本は変わっていません。対人距離は1.5ー2mを保つことは原則です。さらに4月27日から交通公共機関利用時やお店に入る時のマスク着用が"義務"となりました。
一方でロックダウン中は、公共の場を歩く際、家族以外の1名しか同伴が認められていませんでしたが、今後は他の1家族(同一世帯)の複数人と交流しても良いことになりました。街を出歩く人たちや公園などで日向ぼっこする人たちはとても増えた印象です。
祭り、スポーツ、コンサート、フェスティバルなどの大規模イベントは少なくとも8月31日までは禁止ですが、20名までの必要不可欠な集会(冠婚葬祭など)は条件付きで開催できるようになっています。
レストランや小売業などの現状は
これまで開いているのは、生活に不可欠な食料品や生活雑貨・薬局などだけだったのが、加えて、本屋・ホームセンター・眼鏡/補聴器店・ペット用品店・園芸用品店・コインランドリー・クリーニングなど、生活を便利にするお店も再開されました。
お店は下記のように段階的に開始となっています。
4月末まで
・売り場面積が800m2以下のお店
※入場制限が条件(20m2あたり最大1名)
5月から
・美容理容店など
・一部ショッピングモールなど(店舗ごとに入場制限あり)
お店ごとに、入店人数制限を守る取り組みをしています。例えば、入り口にて制限人数分用意したカゴを配り、カゴが全部なくなった時点で誰か出てくるまで入店できないようにしたり、入り口と出口を分けて両方で人数をカウントし、内部にいる人数を把握するなどの工夫が行われています。
学校や一部の文化施設を再開
4月27日からは、学校や一部の文化施設 (博物館、美術館、ギャラリー、動植物園) などが、感染対策の徹底を前提に再開されました。例えばベルリンでは動物園や植物園の屋外部分がオープンしています。
学校は4月後半から、順次再開しています。州の感染状況により異なりますが、まずは最終学年(受験などを控えた学年)の授業から再開し、その後、段階的に他の学年を再開するという対応をとっているところが多いようです。
ベルリンでは5月中には全学年の授業を再開することを目指しています。ただ、試験は感染対策を行うことで実施可能ですが、修学旅行などの集団行事はまだ禁止と、元通りになるまでは時間がかかりそうです。
屋外スポーツ施設も段階的に再開
スポーツ施設も段階的に再開しています。テニスコートなどの屋外のスポーツ施設は、家族と利用するか、家族以外の1名までとであれば同時に利用できることになりました。ドイツではプロサッカーの試合が無観客で再開するというので、みな盛り上がっています。
ただし、更衣室やシャワーなどの設備やフィットネス・トレーニング器具などの使用や、1.5m以上の距離が保てないコンタクトスポーツは禁止されています。また屋内のスポーツ施設(ジム、プール、フィットネス、サウナ)などは引き続き禁止になっています。
行動制限の緩和を受けて医療現場は?
感染者数の増加が落ち着き始めたので、医療現場はこれまで完全に中止されていた待機手術が徐々に再開され始めました。患者さんの家族のお見舞いも1人まで認められるようになりました。
ただ、市内での陽性確認者が減ったと言っても、重症になって入院してくる新型コロナウイルスの患者さんの数はあまり減っているという印象はありません。むしろ、今まで減っていた通常業務が再開し始めたので、新型コロナの患者さんの対応と重なり、私の職場ではみな忙しくなってきた実感があります。
また、ロックダウン開始以降、街なかで感染する患者さんの数は減りましたが、代わりに高齢者施設や医療機関での感染拡大が問題となっています。
もちろん、新型コロナの患者の受け入れ体制には余裕を保てるよう、空きベッドが確保されるように調整されていますが、規制緩和により市内で感染する患者がまた増加することを現場の医師たちは危惧しています。
医療機関では引き続き、他の病気で受診した患者でも、発熱や呼吸器症状があるなど疑わしい人はすぐに隔離する、医療従事者は自身の検査を受けられやすくする、施設間の転院前には必ずPCR検査を行うなど、できる限りの対策を講じて対応しています。
今後の生活はどうなるか 「基本のキ」を守る大切さ
ドイツだけでなく、イタリアやフランス、イギリスなども含めヨーロッパの国々で、厳しい外出制限の効果があってか少しずつ感染患者数は落ち着き始めました。今後は、生活を「段階的に」元に戻していくフェーズに入っていくのだと思います。
ベルリンでは今後、15日からはレストランが6-22時で再開、25日からはホテルや観光業、屋外プールや屋外での100名以下の集会が、1.5mの距離を確保、厳しい衛生面での条件をクリアする前提で認められる見込みとなっています。
ただ、一気に元に戻してはまた感染が広がる危険が高いので、様子を見ながら徐々に行っていくのが大事だと考えられています。メルケル首相からは今後、「過去7日間で人口10万人あたり50人以上の新規感染者が出た場合」は、各州・地域ごとにまた制限措置を導入するという基準が設けられました。
そしてドイツでも強調されているのが、感染対策の「基本のキ」を頭の中にしっかり留めておくこと。自粛疲れを感じることもありますが、わたし自身、下記の3点はしっかり頭に入れて行動しようと思っています。
・丁寧かつこまめな手洗いうがい
・人との物理的距離を保つ
・3密は絶対に避ける
ベルリンでは、外出制限が緩和されて、公園で距離を保ちながら日向ぼっこしたり、親に手を引かれて外を散歩する子供達のはしゃぎ声などほのぼのとした光景が増えました。少しずつ、前向きな変化が見え始めたことで、皆の気持ちが少しでも明るくなっていくといいなと思っています。
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May 10, 2020 at 11:21AM
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