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女子小学生が水色を好きな理由は?「夏でも黒服」はいつから?色と心理の関係|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社 - ニュースイッチ Newswitch

1927年に設立した日本色彩研究所(色研、さいたま市岩槻区)は、色彩を中心とした複合的な研究機関だ。企業からさまざまな委託研究を受けてきた。  色彩心理を専門にする同研究所研究第1部 シニアリサーチャー名取和幸氏に、商品にとって色彩がどのような価値を持つか聞いた(取材・昆梓紗)。 ―色彩研究所ではどのような取り組みをされているのでしょうか。  ある商品の商品力を色の力を使ってどうやってサポートしていくか、というコンサルティングと、そのためのカラーリサーチをしています。例え色を変えても生産コスト自体が変わらないとすると、どういう色使いにすることによって商品の価値を上げることができるか、商品力を高められるかを調べることが主な仕事です。  また、色彩の設計を自分たちですることもあります。例えば隅田川にかかる橋の色を、東京都からの依頼で設計しました。 ―カラーバリエーションが増えたことによって商品価値が変わったものにランドセルがあると思われます。ランドセルは年代によって好みがビビットに変わっていますね。  私どもでも、当時の小学2年生、5年生、中学2年生を対象に、2009年、11年、14年にそれぞれ全国規模で「好きな色」の調査を行いました。  例えば、女子を見てみると、14年のデータでは、小学2年生は水色が好きと答えた割合が多かったんです。幼稚園児にはピンクが人気なのですが。この時の調査では、女の子には水色とピンクと薄紫の三色を見せたとき、水色と薄紫がほぼ同率でした。小学生ながら、可愛いピンクが好きだった幼稚園時代から卒業して、さわやかで落ち着いた印象のある水色に好みが変化していくようです。  そうした色の好みがランドセルにも反映しています。昔だと、水色のランドセルは祖父母や両親から敬遠された場合も多いでしょうが、現在ではそういった抵抗がなくなってきている。子どもたちの「こんな色が欲しい」という気持ちがあって、それが社会的にも受け入れられるようになってきています。商品が社会の常識を変えていっているのです。 一方男子は、金色が好きな割合がかなり多い。小学2年生の男子に20数色の中から好きな色を選んでもらうと、6割以上が金色という結果が出ています。銀、青も人気があります。  ただ、そういった好きな色を全面的に取り入れられる商品と、そうでない商品があります。社会においてその商品がどういう風に見られているかによって変わってくるのです。例えば現在ではランドセルで金、銀というのは難しいですよね。  ところがスニーカー売り場に行けばだいたいこれらの色を見ることができます。子どもの好きな色がわかると言ってもいい。スニーカーでは幅広い色が許容されているからなんです。  つまりどんな商品であるかによって、好みの色をどこまで取り入れられるかは変わってきます。そうなると、「気持ちの上でこういう色がいい」というイメージと、モノの特性や社会での許容のバランス次第で、商品において色がどの程度力を持つかということが変わってくると言っていいと思います。 ―ところで子どもたちの好きな色には、どのような心理状態が表れているのでしょうか。  小学生の男子と女子にとっての色というのは、かなり意味が違うんです。  例えば女子がピンクや水色が好きだという理由を聞いてみると、「自分を演出する色」の側面が強い。例えば「コーディネートしやすい色」や、「自分をこう見せたいときの色」という意味で色を見ている。高度ですし、大人っぽいと言ってもいい。実際、小学2年生の女子になぜ薄紫が好きなのかを聞くと、「だってセクシーだし」と返ってくることもありました。  男子は端的に言うと単純です。金色にどういうイメージがあるかを聞くと、「キラキラしている」、「金貨、お金」といった現金的なイメージや、金メダルといったような「1等賞、トップ」というようなイメージが出てきます。自分本位と言ってもいい、願望にかなり即したものです。  色というのは、コミュニケーションにおいて効果的な役割を果たします。女子は「自分が相手からどう見られるか」をさらに自分が考える、という非常に複雑なことをしているんです。それを小学2年生の時点で既に考えているということが、色のリサーチによってわかってくるんです。 ―リサーチにはどのような種類があるのでしょうか。  色のリサーチには大きく分けて2種類あります。1つは心のリサーチ。例えば「どんな色だったら好きか、欲しいか」「どんな色には、どんな印象、イメージがあるか」といったような、色から受ける気持ちに関して調査します。  もう1つはモノのリサーチ。例えば「どんな色が売れているか」あるいは「どんな色の服の人が増えたか」といったような、色に着目する。色自体を調査します。  後者では、例えば1954年からやっている、「銀座の街頭で、女性の服が時代とともに、あるいは季節によってどう変化していくか」といった調査があります。  銀座のユニクロの前あたりの歩道で、約2000色弱の色が入ったJISの標準色票のチャートを使い、歩いている女性の服の色を見る。服の上下の色やスタイルを、季節ごとに2日間、16-59歳に日本人と思われる女性を500~800人ほど調査しています。  1954~2018年の黒い服を着ている人の推移を見ていくと、50~60年代のころは夏に黒い服を着ている人はかなり少ない。冬場には増えますが、せいぜい15%ほどです。しかし、80年代半ば過ぎになると秋冬で増加します。これはちょうどその頃、いわゆる「DCブランド」が流行したためです。ブーム初期は若者中心でしたが、その後いろいろな年代の人に黒が波及していきました。ただ、それだけ流行っても、春夏は黒をそれほど着ていなかったんです。  平成になってから、黒は定番の色になりました。合わせやすく、かつ良い印象がある。1年中着られるようになりました。この変化には、冷房の普及率も関係があるのではないかと考えています。 ―企業へのコンサルティングでは、どのような内容があるのでしょうか。  色の力をどう活用するかといったときに、色の力は大きく2種類に分かれると思います。 1つは良い色を使うことでその商品をわかりやすくする。 例えば、遠くからでも目立つ。目を引きつける。あるいは表示がちゃんと読みやすい、区別がつくというような、視覚効果を重視し、視覚的な機能性で商品力を上げるというような使い方。  もう1つが、人が受ける印象。どのような気持ちになるか。魅力を上げていく気持ちを作る、心理効果を重視するものです。 企業からの事例でいうと、前者は、ショウワノート(富山県高岡市)の「ジャポニカ学習帳」です。  ジャポニカ学習帳は罫線が入っていますが、どんな罫線なら学習のサポートになるのかというのを調査しました。  罫線が薄すぎると、見えづらい。濃すぎても鉛筆の字と一緒になってわからない。場合によっては視覚疲労の問題も出てくる。  罫線の色の濃さを変えたものや、薄い水色、ブラウン、薄い緑色などの色違いを使って書き取り調査をしました。  この時、わかりやすさやサポート力を上げるだけでなく、罫線の色が子どもたちの気分にも影響すると考え、罫線の色を変えたものを小学校に持って行き、好きな罫線を調査しました。これは心理的な作用、魅力をつくるといった側面です。  これらの調査結果に基づいて、「このノートならこの罫線が1番子どもたちに好まれるだろうし、視覚的にも疲れないだろう」といったことを提案しました。 ―視覚的効果と魅力的効果のバランスは、商品によって変わってきますね。  逆に言うと、商品にとってどのような側面を検討する必要があるのかを最初に考えます。それを考えたうえで、実際にどういう色が実現できるかというような流れです。  色の設計をするというと、まず「どういう色が良いか」を考えるように思われがちですが、感性効果の方には個人差があり、「自分の好みではない」といったことで、まとまらなくなることがあります。  色を考えていくというよりは、「何を求めるのか」をはっきりさせ、それに合う色を考えていく方向性の方がよいと思います。 ―色の役割が変わってきたものの1つとして、ジェンダーの側面があると思います。  そうですね。私は絵本が好きで、世界の絵本を集めたりするのですが、ここ1、2年ぐらいでジェンダーと色を扱っている絵本が出てきています。  例えば、絵本「Pink Is for Boys」では、「色とはみんなのためのもの、男の子女の子、花々、蝶々、空の虹のためのものである」と、色の多様性について説いています。  例えば日本のトイレは青が男性用で、ピンクや赤が女性用を示しますが、海外ではそうでもなく、色分けになっていなかったり、異なった色分けがあったりします。現在では多様性に配慮し、そもそもトイレが2つだけではなくなってきていますよね。  また、関連して、「あるモノ=何色」という思い込みもあります。例えばリンゴは赤のイメージですが、フランスの絵本を見ると、リンゴは緑が多いです。「モノにはいろいろな色がある」という見せ方をしている絵本も出てきました。多様性と色は今後も重要になっていくでしょう。 名取和幸 一般財団法人日本色彩研究所 理事 研究第1部 シニアリサーチャー 専門分野: 色彩心理学(色彩嗜好、デザイン評価、UD、色と絵本) 所属学会: 日本色彩学会、日本心理学会、日本建築学会他 主な著書:『色彩ワンポイント』 『色彩科学入門』 『色の百科事典』 『色のユニバーサルデザイン』 『中学・高校 「美術」 教科書』 他 【特集】続・色が変えるビジネス  色は人心理に直感的にイメージを与える存在だ。どのような色が、社会でどのように使われているか、そして、その移り変わりを見ていくと、私たちの心理の移り変わりも見えてくるのかもしれない。

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