
安倍晋三首相
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
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新型コロナウイルスの感染拡大に伴う政府の緊急経済対策で実施予定の国民への現金給付について、安倍晋三首相は減収による生活困窮世帯への30万円支給から、全国民に一律10万円を支給する方向に急転換した。エコノミストからは、給付による効果よりもインパクトを重視したとの見方が出ている。
安倍首相は16日夜の対策本部会合で、緊急事態宣言の対象地域を全都道府県に拡大すると表明し、行動が制限される全国民に一律10万円を給付する方向での再検討を与党に要請したことを明らかにした。公明党の山口那津男代表が、所得条件のある30万円給付は地方自治体に事務負担を強いる可能性もあるなどとし、2020年度補正予算案を組み替えて一律10万円給付に変更するよう首相に強く 求めていた。
緊急事態宣言の全都道府県への拡大と10万円給付に関する記事はこちらをご覧ください
野村証券の桑原真樹シニアエコノミストは、首相の方向転換について「さらなる需要悪化を防ぐ効果は全体の金額が増える分、大きくなる」とみる一方、「効率的なお金の使い方とインパクトをてんびんにかけて、もともとは効率性を重視したけど、今はインパクトを重視する傾向が強くなっている」と指摘。外出自粛中の現金給付は消費の盛り上げ効果には乏しく、「インパクト狙いだ」と述べた。
政府は全世帯の4分の1程度の生活困窮世帯を対象とした現金給付の経費として、約4兆円を補正予算案に計上。対象については、2-6月の世帯主の月間収入の減少で住民税非課税水準となる世帯や、月間収入が半減して同水準の2倍以下となる世帯に絞っていた。
米国は低中所得層に給付
米国では既に低中所得層への現金給付が始まっている。納税者番号と銀行口座をひも付けているため、所得条件に合致する人には自動的に1200ドルが振り込まれる。一方、日本では社会保障と税番号制度に用いられるマイナンバーカード(個人番号カード)の普及率は 8.4%と低い上に、銀行口座とも連携しておらず、30万円給付の条件に合致するかどうかを確認する事務負担が申請窓口の自治体に生じるとして懸念する声が出ていた。
大和総研の神田慶司シニアエコノミストは、行政サービスのデータ化を進めてこなかったツケが危機時に出たとみる。一律10万円に変更すると当初案の3倍となる12兆-13兆円の財源が必要で、「終息が見えなければもう一回配れとなる」と指摘。仮に感染収束まで2年かかり、四半期に1回の給付となった場合の総額は100兆円に上るとの試算を示した。
米ハーバード大学の研究チームは14日、世界的流行を抑制するため人との接触を減らす外出規制などの措置を22年まで断続的に続ける必要があるとする論文を科学誌サイエンスに 発表した。一斉に解除すると流行のピークを遅らせ、さらに深刻化させる可能性があると予測。治療薬やワクチンの開発により、この期間は短縮できるとしている。
神田氏は「生活保障を第一に考え、支えるべき人に手厚く給付しましょうという話だったのが、今や関係なく配り、唯一のメリットであるスピードも大して改善されない。何のためにやっているのか理解しにくい」と語った。
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April 17, 2020 at 07:50AM
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