南牧の牧場 戻った笑顔 新型コロナ感染確認から２週間 営業再開 - 信濃毎日新聞

　社員の新型コロナウイルス感染で休業していた南佐久郡南牧村の滝沢牧場が２１日、約２週間ぶりに営業を再開した。八ケ岳を望むのどかな景色の中で動物と触れ合える、村にとっても大切な観光拠点。窮地に立たされた関係者らを励ましたいと朝から訪れた家族連れやファンらの姿に、「応援してくれる人や地域のためにも頑張りたい」と、社長の滝沢恒夫さん（６８）は思いを新たにしている。

　同牧場は５０代女性社員の感染が分かった６日から休業。濃厚接触者とされた客やスタッフら１１人の経過観察に並行して村などが牧場内の徹底消毒を進めた。そして女性社員は無事退院。１９日までに他の全員も無症状のまま経過観察を終え、この日を迎えた。

　午前９時の開場からしばらくすると、東京や神奈川など首都圏ナンバーの車が次々やって来た。乗馬の受け付けや喫茶店での接客などスタッフらと共に忙しく立ち働いた滝沢さんによると、一日で数百人が訪れたという。「想像以上。本当にありがたい」と、この間を振り返った。

　社員の感染確認後、感染の可能性がある客に名乗り出てもらうため県から牧場名の公表を打診された時。経営はどうなるのかと強い不安に襲われた。他に感染させていたら取り返しが付かない―と祈るような日々。「自分も牧場に行った。問題ないか」「予定をキャンセルする」…。電話が鳴り続けた。その一方で、「頑張れ」「騒ぎが収まったら遊びに行く」などと励ましの声も１００件近く寄せられた。

　この日、ウサギと触れ合う広場で長女（７）、長男（５）と餌を与えていた会社員張本均芝（じゅんじ）さん（３７）＝東京＝も休業に気をもんできた。年に５、６回は家族で通っていたといい、営業再開を知ってやって来た。「動物好きな子どもの遊び場としてすごくいい所。風評被害に負けず頑張ってほしい」とエールを送る。

　近くに住む農業佐々木香さん（４０）も、わが子や近所の子ら６人を連れて早速訪れた。小さい頃の自分も自分の子どもも、庭のような遊び場にしてきた牧場。愛着ある施設に何かできることはないか―と考え「いつも通りに通うことが応援」と話した。

　感染拡大の終息は見通せない。小学校の野外教室など団体キャンセルもしばらくは続くと滝沢さんは覚悟している。それでも、いろいろな人の支えがあっての牧場だと再確認できた。感染防止に一層気を引き締めながら、「名誉挽回のためにも、一生懸命頑張りたい」と語った。（山本純哉）

（3月22日）

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