アリは、主に女王アリを筆頭に群れを成して生きる、人間とは違った社会性を持った昆虫です。アリの中でも、働きアリがどのようにして仕事を割り振っているかについての研究を、プリンストン大学で生態学と進化生物学を専攻する大学院生、クリス・トキタ氏が報告しています。
Social influence and interaction bias can drive emergent behavioural specialization and modular social networks across systems | Journal of The Royal Society Interface
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsif.2019.0564
Divided, we fall: How ant behavior mimics political polarization | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2020/02/divided-we-fall-how-ant-behavior-mimics-political-polarization/
働きアリには大きく分けて、「率先して仕事をするアリ」と、「周囲に影響されて仕事をするアリ」の2種類が存在します。「率先して仕事をするアリ」は自らの欲求に従って仕事を選ぶ傾向にあり、空腹なら餌探しに従事し、幼虫への関心が高いなら子育てに従事します。「周囲に影響されて仕事をするアリ」は、他の働きアリの行動をまねして仕事を行います。
以下の図は、「率先して仕事をするアリ」と「周囲に影響されて仕事をするアリ」が混在するアリのグループの分業の流れを表したものです。例えば餌探しを「Task A(青)」、子育てを「Task B(赤)」として、色が濃いほど長い時間同じ仕事に従事していることを表しています。「率先して仕事をするアリ」が周囲に影響を与えることで、時間の経過とともに自然に分業が行われ、「餌探しアリ」と「子育てアリ」という2つのグループが形成されます。この現象はアリの集団生活の効率化に貢献しています。
以下の図は、周囲に影響を与える存在である「率先して仕事をするアリ」のみのグループ(social influence only)と、「周囲に影響されて仕事をするアリ」のみのグループ(interaction bias only)に分類して、分業がどのように行われるかを観察した結果を表しています。
「率先して仕事をするアリ」のみのグループでは、アリたちが自らの欲求に応じて仕事を度々変更するので分業は生じず、1つの仕事を長い時間行うこともありませんでした。
また、「周囲に影響されて仕事をするアリ」のみのグループでは、そもそもアリたちが率先して仕事をしないことから、分業は生じませんでした。
周囲に影響を与える存在と、周囲に影響される存在の両方がグループにいることで、労働分業が生じるとトキタ氏は結論づけています。
アリの分業は、個体ごとの性格の差によって発生しており、トキタ氏は、「人々の意見が相互に影響し合い、時間の経過とともに意見がどのように収束するか」というオピニオンダイナミクス理論に近い現象が、働きアリの間にも発生していると主張しています。また、アリのように個体差によって分業が行われる仕組みは、クモの集団においても似たような現象が発生することが示唆されています。
社会性のあるクモは性格によって効率的にこなせる仕事が違うことが判明 - GIGAZINE
By photoholic1
トキタ氏は自身の研究について、人間の社会学の概念を、動物の集団行動に適用できる可能性があるとし、「他の分野にも応用できる面白いアイデアがたくさんあると思います」と述べています。
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February 29, 2020 at 09:50PM
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アリはどのようにして効率的に仕事を振り分けているのか? - GIGAZINE
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