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キンタロー。も被害、“ぶつかり男”はどのような罪に問われるのか - マイナビニュース

お笑い芸人のキンタロー。が先月17日、オフィシャルブログを通じ、駅の改札口で見知らぬ男性から故意に体をぶつけられる被害に遭ったことを報告した。当時のキンタロー。は臨月を迎えていたことから(同月28日に無事に出産)、「今大切な命を身体に預かってる身の上」「一昨日ぶつかってきた男はもし私が転倒でもしたらどう責任をとってくれたのでしょうか?」と不安な思いを記していた。

キンタロー。のブログには同様の被害に遭った女性からの声が相次いでおり、ブロガーで作家・はあちゅう氏も今月4日のブログで「実は、妊娠中に、『ぶつかり男』に2回出くわしてしまい…(1回目はデパートの中、2回目は人通りの少ない道端)」と報告していた。

この“ぶつかり男”は、どのような罪に問われるのか。被害に遭った場合の適切な対処法を含め、弁護士法人グラディアトル法律事務所の磯田直也弁護士に話を聞いた。

キンタロー。

キンタロー。

――キンタロー。さんが、“ぶつかり男”の被害を訴えました。当時妊娠中で、改札で見知らぬ男から体をぶつけられたそうです。このような場合、体をぶつけた男は罪に問われないのでしょうか?

キンタロー。さんが被害に遭われたようなぶつかりのケースでは、母親と胎児の両方に対する罪に問われる可能性があります。

まず、母親についてですが、“ぶつかり男”は暴行罪(刑法208条:2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料)の構成要件に該当する可能性があります。暴行罪の「暴行」とは、人の身体に向けた有形力の行使を言いますが、他人の体にぶつかっていく行為が「暴行」に当たることは争いがないと考えられます。

また、ぶつかり行為によって被害者の方が転倒するなどして怪我を負った場合、傷害罪(刑法204条:15年以下の懲役又は50万円以下の罰金)となるでしょう。もっとも、暴行罪や傷害罪の成立には、「暴行の故意」というものが認められなければなりません。「暴行の故意」とは、簡単に言えば、他人の身体に暴行を加えることを認識している、ということです。これは、積極的に暴行をしようとは思っていないが、自分のやっていることは暴行にあたるかもしれないがそれでも構わない、と思っている場合にも認められます。

もっとも、「暴行の故意」のような主観的な要件については“ぶつかり男”の心の中の問題ですから、客観的にこれを立証することは容易ではありません。一例として、他の改札や通路が空いているにも関わらず、あえて被害者のいる場所に向かっていく姿が駅の防犯カメラなどに記録されていれば罪に問える可能性は出てくるでしょう。仮に、「暴行の故意」が認められなかったとしても、被害者が怪我をしてしまった場合には、過失傷害罪(刑法209条1項:法定刑は30万円以下の罰金又は科料)が成立することになります。

他方で、胎児に対しても犯罪が成立する可能性があります。キンタロー。さんのケースのように、お腹の中に胎児がいた場合、胎児に対する傷害をどう構成するのかについては色々な考え方がありますが、傷害罪や過失傷害罪を成立させる見解が主流であると思われます。この点、母親が妊娠中に摂取した有機水銀が胎盤を経由して胎児に移行、母胎内で有機水銀に侵されたことで胎児性水俣病を発症し、出生後に死亡したケースでは、現行法上、胎児は母体の一部として取り扱われているとして、過失致死傷罪の成立を認めた事例があります(最高裁昭和63年2月29日第3小法廷決定)。本件のようなぶつかりのケースでも、胎児に障害が残った場合には、傷害罪や過失傷害罪が成立することになるでしょう。

その他にも、“ぶつかり男”の故意又は過失が認められるようなケースでは、民事上の責任として、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求が可能となる余地があります。

――本件の対策や仮にこのような被害に遭った場合の対処法をお教えください。

このようなケースでは、“ぶつかり男”を追いかけて直接文句を言う、といった対処はおすすめできません。わざとぶつかってくるような危険な人物ですから、更に被害が拡大することに繋がりかねません。また、“ぶつかり男”に対して反撃行為に出たり金銭の要求を行うと、被害者の側が逆に罪に問われかねない事態になってしまう可能性があります。

結局、ぶつかられないようにするには、キンタロー。さんのように常に周囲に気を配り、一人にならないように先行集団について歩く、といった自衛措置を講じるしかないと思われます。そして、もしも被害にあったときには、次の被害者が出ないように駅員に届け出て対策を講じてもらうのが良いでしょう。ぶつかられたことによって重大な怪我をしてしまった、というような場合でもないかぎり、警察も解決を得意としているケースではなくなってしまいます。最終的には、“ぶつかり男”に対する社会の目を厳しくすることによって被害を減らしていくことになるのではないでしょうか。

“ぶつかり男”は自らの行為の危険性を十分に認識せずにぶつかっていると思われますが、階段やエスカレーターでぶつかった場合や、被害者が転倒してしまった場合には、被害者の死亡も含めた重大な結果が発生する可能性があります。そのような場合には、警察の捜査や民事上の責任追及は当然に苛烈なものとなります。ぶつかり行為の危険性をよく理解し、万が一の場合の責任を取れるのか、リスクに見合った行為なのかをよく考えてもらいたいと思います。

監修者:磯田直也(いそだ・なおや)

弁護士法人グラディアトル法律事務所所属。広島大学法学部卒業後、大阪大学高等司法研究科修了。「交通事故」「労働」「離婚」「遺言・相続」「インターネットトラブル」などを得意分野とする。

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